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永遠の別離を告げるようなブロムシュテットのマーラー9番 NHK交響楽団@NHKホール 2022.10.16

指揮者は80歳を過ぎてからが本当の真価を聴くことができるというのがsaraiの信念というか、思い込みのようなものです。ましてや、今日のブロムシュテットのように90歳を過ぎてもなお指揮が続けられるというのは驚愕ものだと思っていたら、何と彼は既に95歳。95歳の指揮者のマーラーの交響曲第9番を聴くのはもちろん、初めてです。どんな演奏を聴かせてくれるんでしょう。聴かずにはいられない思いでこのコンサートに足を運びました。

90歳を超えてもかくしゃくとしていたブロムシュテットもさすがに今日はコンサートマスターの篠崎史紀に手を取られての登場です。そして、指揮台上の椅子にどっかと腰を下ろします。思えば、4年前のザルツブルグ音楽祭でウィーン・フィルを振ったときは当時のsaraiよりもしっかりした歩き方をしていました。そして、立ったままの指揮で素晴らしいシベリウス(2番)とブルックナー(4番)を聴かせてくれました。
すぐに演奏が始まります。ほとんど手を動かさないでの指揮です。ブロムシュテットは若い頃から地味で淡々とした指揮でしたから、これでさほど指揮が枯れたというわけではありませんが、手の動きがぎこちないせいか、N響のアンサンブルはもうひとつ揃っていません。マーラーの交響曲第9番は、いつも精密な演奏ばかり聴いてきたので、saraiはなかなか、演奏に入り込めません。時折、手を大きく振るときはアンサンブルが揃うような気がしますが、気のせいかもしれません。まあ、そんなにいうほどアンサンブルが悪いわけではなく、時折、もたつくと言ったほうが正確かもしれません。それでも第3楽章に入ると、アンサンブルが精彩を取り戻します。第4楽章に期待を持たせるような雰囲気です。第4楽章のアダージョが始まります。実はそんなに集中できずに聴いていたのですが、とても美しい弦楽のアンサンブルの演奏が展開されます。saraiは驚いて、ブロムシュテットの指揮を眺めると、それまで小さな動きだった手がゆったりと大きく振られています。見違えるような美しい弦の響きが続きます。これこそ、saraiの最愛のマーラーの第9番です。ますます、振幅の大きい弦楽合奏が続き、saraiの気持ちも一気に飛翔します。弱音の弦楽合奏も美しく、無論、高潮していくと魂を揺さぶられます。音楽の高潮も収まり、木管のソロがリレーするパートに入っていきます。クラリネットが高音で演奏するあたりからはその美しい音色にうっとりと聴き惚れます。そして、弦楽セクションが引き継いで、大きな高まりを作っていきます。その頂点で弦楽器群がユニゾンでゆったりと緊張感を持って、下降するあたりで、聴いているsaraiも手にぐっと力が入り、音楽と一体化していきます。そして、音楽が沈静化し、終結部に向かっていきます。チェロのソロが愛の動機を演奏し、弦楽セクションの極めて繊細で優しい弱音の極致のパートにはいっていきます。緊張感の高いアンサンブルはずっと続いていきます。マーラーの愛の終焉、そして、自然や人生への告別・・・薄明の世界です。これはブロムシュテットの別れの音楽でしょうか。白鳥の歌を聴くようにただただ、最後の告別を待ちます。長い長い、そして、美の極致のような弦楽セクションの弱音が続いていきます。人間の呼吸がだんだん浅くなるように音楽も呼吸しながら、弱まっていきます。やがて、永遠の静寂・・・この先には何もありません。ただ、永遠の時間が待ち受けるのみです。これがブロムシュテットが日本の聴衆に向けて残してくれた最後のメッセージのように思えます。
感謝・・・それだけです。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
  管弦楽:NHK交響楽団 コンサートマスター:篠崎史紀

  マーラー/交響曲 第9番 ニ長調


もはや、この曲は予習していません



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Author:sarai
首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
たまには、旅ブログも書きます。

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aokazuyaさん

コメントありがとうございます。デジタルコンサートホールは当面、これきりですが、毎週末、聴かれているんですね。ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲ

03/03 23:32 sarai

DCHは私も毎週末、楽しみに聞いています。
・スーパースターには、ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲルトの名も挙げたいところです。
・清水直子さん後半のみ登場、D

03/01 19:22 aokazuya

金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai
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