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ヘンデルの日本初演オペラ「シッラ」(完全舞台版世界初演)@神奈川県立音楽堂 2022.10.29

2020年春に上演される筈でしたが、コロナ禍で上演3日前に中止になったヘンデルの謎のオペラ「シッラ」が2年半経った今日、遂に上演されました。もちろん、日本初演でエウローパ・ガランテにとっても完全舞台版世界初演になります。
完全なバロックオペラですが、演出・衣装は歌舞伎仕立てという実にユニークなもの。この神奈川県立音楽堂版の室内オペラが世界に発信されることになりました。NHKが録画収録していたので、来年1月あたりにBSで放映されるようです。
オペラのあらすじはローマの執政官だったシッラが独裁で悪行を重ねるも、最後には妻の説諭を受け入れて、その罪を悔いて、引退生活にはいるというものです。音楽監督のファビオ・ビオンディの言では、現在の世界でも独裁者が横行していますが、このオペラのように罪を悔いて、引退してくれることを願うとのこと。saraiとて、大賛成ですが、現実はそううまくいきませんね。

このオペラはヘンデルの初期のオペラですが、音楽的内容は後の作品と同じく、旋律美に満ちて、聴き応え十分です。違いと言えば、長さが2時間と短いこと。他の作品は通常3時間超ですから、聴くのも負担がありません。だからといって、物足りないという感じもありません。オペラの構成はヘンデルのオペラ作品に共通するダ・カーポ・アリアとレシタティーボが交互に登場して、ダ・カーポ・アリアで音楽の美しさを楽しみ、レシタティーボでストーリーが進行するというものです。今日の公演で際立ったのは、ファビオ・ビオンディ指揮のエウローパ・ガランテのバロックアンサンブルの質の高い演奏です。ただでさえ美しいヘンデルの音楽が光り輝いていました。今日の主役は彼らの演奏だと言い切っても過言でありません。弦の美しさ、オーボエ・リコーダーの質の高い響き、通奏低音の見事な響き、そして、ファビオ・ビオンディの独奏ヴァイオリンの素晴らしさ。言ってしまえば、彼らの演奏ならば、ヘンデルのどのオペラでも完璧に演奏するだろうということです。こういう演奏が日本で聴けるというのはなんとも贅沢で嬉しいことです。
歌手陣もメゾソプラノ3人、ソプラノ3人、バリトン1人の海外勢が充実の極み。タイトルロールを歌ったソニア・プリナは別格。以前、チューリッヒ歌劇場で同じくヘンデルのオペラ《リナルド》のリナルド役で素晴らしい歌唱を聴きましたが、今日も素晴らしい歌唱です。ただ、今日のシッラ役はとんでもない独裁者という悪役なので、その分、ちょっと損をしていたかもしれません。チェリア役のフランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリの透明で張りのある歌唱がとりわけ、魅力的でした。レピド役のヴィヴィカ・ジュノーの巧みな歌唱、フラヴィア役のロベルタ・インヴェルニッツィの美しい声の響きも印象的で、彼女たちの2重唱の美しさには参りました。メテッラ役のスンヘ・イムは高域の美しさは素晴らしかったのですが、低域の声でもうひとつ出ていない感じ。曲によって、出来が違って聴こえました。CDとは配役が唯一異なったクラウディオ役のヒラリー・サマーズは声が柔らかく、この役にはもうひとつ合っていない感じです。CDで歌っていたマルティナ・ベッリが出てくれればという気持ちになりました。
演出は歌舞伎風で、これは賛否両論あるでしょう。まあ、面白かったことは間違いありません。サプライズの終幕の天井から2人のエアリアルが離れ業を演じたのは素晴らしかったですね。まさにシルク・ドゥ・ソレイユ。見事です。舞台の制約の多い中、ここまでの仕上げは賞賛するしかありません。


今日のプログラムは以下です。

  ヘンデル: 歌劇 《シッラ》 HWV.10

  音楽監督:ファビオ・ビオンディ(指揮・ヴァイオリン)
  演奏:エウローパ・ガランテ

  ソニア・プリナ(コントラルト/ローマの執政官シッラ)
  ヒラリー・サマーズ(コントラルト/ローマの騎士クラウディオ)
  スンヘ・イム(ソプラノ/シッラの妻メテッラ)
  ヴィヴィカ・ジュノー(メゾ・ソプラノ/ローマの護民官レピド)
  ロベルタ・インヴェルニッツィ(ソプラノ/レピドの妻フラヴィア)
  フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ(ソプラノ/シッラの副官の娘チェリア)
  ミヒャエル・ボルス(バリトン/神)
  神谷真士(スカブロ/シッラの臣下 黙役)
  桧山宏子 板津由佳(エアリアル)
  片岡千次郎(兵士/殺陣)
  亀山敬佑(兵士/殺陣)

  台本:ジャコモ・ロッシ
  演出:彌勒忠史
  美術:tamako☆
  衣裳:友好まり子
  照明:稲葉直人(ASG)
  立師:市川新十郎


最後に予習について、まとめておきます。

 ファビオ・ビオンディ(ヴァイオリン&指揮)、エウローパ・ガランテ、
  ソニア・プリナ(コントラルト/シッラ)、
  マルティナ・ベッリ(メゾ・ソプラノ/クラウディオ)、
  スンヘ・イム(ソプラノ/メテッラ)、
  ヴィヴィカ・ジュノー(メゾ・ソプラノ/レピード)、
  ロベルタ・インヴェルニッツィ(ソプラノ/フラヴィア)、
  フランチェスカ・ロンバルディ・マッズーリ(ソプラノ/セリア)、
  ルカ・ティトット(バス/イル・ディオ)
   2017年1月28日-30日、コンツェルトハウス(ウィーン、オーストリア) ライヴ録音
 
素晴らしい演奏です。今回の来日公演とほぼ同じキャストの公演。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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aokazuyaさん

コメントありがとうございます。デジタルコンサートホールは当面、これきりですが、毎週末、聴かれているんですね。ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲ

03/03 23:32 sarai

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03/01 19:22 aokazuya

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大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
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08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
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07/08 18:59 sarai

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クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai
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