《フィデリオ》@ウィーン国立歌劇場 2011.10.27
その《フィデリオ》の公演を56年後に聴くことができ、saraiも感無量です。
今日のキャストは以下です。
指揮:ベルトランド・ド・ビリー
演出:オットー・シェンク
フロレスタン:ロバート・ディーン・スミス
レオノーレ:ヴァルトラウト・マイヤー
ドン・ピツァッロ:アルバート・ドーメン
ドン・フェルナンド:マルクス・マルカルト
ロッコ:ラルス・ヴォルト
マルツェリーネ:アニタ・ハルティッヒ
ヤキーノ:ベンジャミン・ブルンス
オーケストラ・ピットを見るとコンサートマスターはキュッヒルさんです。昔昔お宅にお邪魔したことを思い出し、ご挨拶しました。キュッヒルさんは人のよさそうな笑顔で何やらもごもぐ言われていました。今日は彼の横にシュトイデです。てっきり彼もミニヨーロッパツアーに参加したと思っていたのでびっくり。先日のウィーン・フィル定期と同じ顔触れです。
実はsaraiはこのオペラは少し苦手。アリアらしいアリアがなく、盛り上がりに欠けるからです。そういう意味では、このオペラはオペラというジャンルを離れたベートーヴェン特有のものだと思います。
ただ、この日の演奏は歌手は全員好調で、主役のマイヤーはもとより、フロレスタン役のディーン・スミスは素晴らしいテノールの響き、ロッコ役のヴォルトはバリトンの豊かな響き、マルツェリーネのハルティッヒの澄んで伸びやかなソプラノと粒揃いです。オーケストラはもちろん素晴らしい。
それでも、第1幕は個別にはマイヤーとハルティッヒの重唱の部分とかよいところもありましたが、オペラとしての盛り上がりに欠けたことも事実。
第2幕でフロレスタン役のディーン・スミスが登場し、ベートーヴェンらしい滋味深いアリアを歌うあたりから、ぐっとオペラらしくなり、聴きごたえが出てきました。そして、やはり山場は第2幕第1場が終わったところで演奏される「レオノーレ序曲第3番」。オペラの流れとしては無理があるかも知れませんが、実質ウィーン・フィルの演奏は素晴らしいこと、この上なしです。フィナーレへの美しい弦の響きからの部分はもうオペラを忘れてしまいそうです。これはコンサートです。
この後、第2場からフィナーレへは合唱が素晴らしく、まるで交響曲第9番のフィナーレを聴くが如くです。フィナーレの合唱はまさに人生、人間の讃歌です。ベートーヴェンの主題ですね。人間は自由で平等で正義を貫くっていう感じで思わず感動の嵐に巻き込まれます。これがウィーンの《フィデリオ》なんですね。
ところで、このオペラを聴いていて、ふと、1990年の壁の崩壊劇を思い出しました。まるでこの《フィデリオ》とかぶってみえます。ベートーヴェンが目指したのは単なるオペラではなく、人類の愛と自由と正義のドラマの具現化だったのかもしれません。いつまでも変わらぬ永遠のテーマです。偉大なベートーヴェンは人類の将来を見通していたようにも思えます。
今回はこれでウィーン国立歌劇場もオペラもおしまい。後はオペレッタとコンサート2回と残り少なくなりました。
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