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史上最強の《サロメ》 美女にして強靭な響きの美声を誇るグリゴリアンに深く感動 ノット&東京交響楽団@ミューザ川崎シンフォニーホール 2022.11.18

初めに関係ない話を一つ。今日はマルセル・プルーストの没後100年でした。今年の年頭から読み始めた《失われた時を求めて》全14冊はようやく半分読み終えて、8冊目の《ソドムとゴモラ》を読み進めているところです。没後101年までには読み終えたいものです。それにしても、何とも面白い小説です。読み終えるのが恐いような気さえしています。いつまでも読んでいたいなあ。

で、今日の《サロメ》ですが、これは音楽を超えた芸術です。迫真の愛と死の狭間の饗宴。原作を書いたオスカー・ワイルド。作曲したR.シュトラウス。恐ろしいほど、人間の本質に迫った芸術の中の至高の芸術であるとしか言えません。
加えて、今日、サロメを歌ったアスミク・グリゴリアン。それを支えたジョナサン・ノット指揮の東響。何と素晴らしい音楽を作り出したことでしょう。もう、息ができないほどの緊張感を持続したままで、最後は頭が真っ白になるほどの陶酔感に浸ってしまいました。

少女の面影を感じさせるようなアスミク・グリゴリアンが強烈な歌唱を歌い上げたことがすべてです。この一点に向けて、すべてが集中していたことが今日の圧倒的な音楽の成功につながっていたと思われます。グリゴリアンのようなまるでサロメを歌うために生まれてきたような歌手はいまだかっていなかったように思えます。まずは強靭な高音の叫びの凄まじさ。そして、美しく幻惑するような透明な歌唱。ドラマチックな表現力。これらがモデル体型のスリムな肉体から発していることは奇跡のようです。前半のヨカナーンに唇へのキスをせがみ続けるときの迫力と愛情表現の凄まじさが音楽的頂点を作ります。そして、ヘロデ王に執拗に銀皿にのせたヨカナーンの首をせがむ表現力。最後はその銀皿の上のヨカナーンの首を手をに入れた後の陶酔したような絶叫まじりの圧倒的な歌唱。この最後の10分間がすべてでした。R.シュトラウスが描き出した狂乱の場を完璧に歌い上げました。最後の絶叫で、聴いているsaraiは心臓が止まりそうになり、強烈な感動に至りました。まさに今日はサロメを歌ったグリゴリアンの一人舞台。彼女を盛り立てるためにすべてが機能したかのようです。これが初めて日本で披露されたアスミク・グリゴリアンの歌唱ですから、何と素晴らしい公演を聴けたことでしょう。

本来、ジョナサン・ノットが東響を鼓舞して、如何に素晴らしいサロメのオーケストラ演奏を聴かせてくれるのかが最大の楽しみでしたが、今日に限っては、その迫力ある演奏はグリゴリアンの歌唱を盛り立てるための役割に終始しました。saraiとしては、もっとオーケストラが前面に出たほうがより素晴らしかったと思いますが、今日のグリゴリアンの歌唱を聴けば、サポート役にまわったのも納得ではあります。実演奏を聴いていないので断言できませんが、BDで聴いたザルツブルク音楽祭でのグリゴリアンのサロメでもあのウィーン・フィルもサポート役に聴こえました。ウィーン国立歌劇場で生で聴いたウィーン・フィルは実に輝かしい演奏を聴かせてくれましたが、ザルツブルク音楽祭でのグリゴリアンと共演したウィーン・フィルは別物に聴こえました。それほど、グリゴリアンの歌唱が強烈だということです。

ヨカナーンを歌ったトマス・トマソンも思い切り声を張り上げた歌唱でグリゴリアンに対峙しましたが、最後は力尽きた感じ。グリゴリアンの迫力に押し負けたようです。

ヘロデ王を歌ったミカエル・ヴェイニウスはグリゴリアンに十分、対峙できていました。これはまるでワーグナーを歌っているような圧倒的な歌唱。後半の舞台は彼が盛り立てました。だからこそ、最後のグリゴリアンの狂乱の場の高潮がありました。

ヘロディアスを歌ったターニャ・アリアーネ・バウムガルトナーもヘロデ王のミカエル・ヴェイニウスとともに素晴らしい歌唱を聴かせてくれました。この役はあまり目立たないことが多いですが、こんなに存在感のある歌唱は初めて聴きました。圧倒的な声量に感銘を受けました。

演出監修のサー・トーマス・アレンがどれほどの仕事をしたのか、うかがい知れませんが、コンサート形式でありながら、この迫力の舞台を作り上げたのですから、見事としか言えません。冒頭でサロメがナラボートを篭絡するシーンなどは素晴らしかったです。また、ヘロデ王の迫真の演技にはどれほど関与したのでしょう。

明後日も同じプログラムをサントリーホールで聴きます。今日聴いたサロメ以上のものは想像できませんが、実に楽しみです。きっと、今年最高の音楽体験になるでしょう。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:ジョナサン・ノット
  演出監修:サー・トーマス・アレン
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:水谷晃

  サロメ:アスミク・グリゴリアン
  ヘロディアス:ターニャ・アリアーネ・バウムガルトナー
  ヘロデ:ミカエル・ヴェイニウス
  ヨカナーン:トマス・トマソン
  ナラボート:岸浪愛学*
  ヘロディアスの小姓:杉山由紀
  兵士1:大川博*
  兵士2:狩野賢一
  ナザレ人1:大川博
  ナザレ人2:岸浪愛学
  カッパドキア人:髙田智士
  ユダヤ人1:升島唯博
  ユダヤ人2:吉田連
  ユダヤ人3:高柳圭
  ユダヤ人4:新津耕平*
  ユダヤ人5:松井永太郎
  奴隷:渡邊仁美


最後に予習について、まとめておきます。

 ザルツブルク音楽祭2018ライヴ、R.シュトラウス『サロメ』

  アスミク・グリゴリアン(サロメ/ソプラノ)
  ジョン・ダスザック(ヘロデ王/テノール)
  アンナ・マリア・キウーリ(ヘロディアス/アルト)
  ガボール・ブレッツ(ヨカナーン/バス)
  ユリアン・プレガルディエン(ナラボート/テノール)
  エイヴリー・アムロー(ヘロディアスの小姓/アルト)
  マテウス・シュミットレヒナー(ユダヤ人1/テノール)
  マティアス・フレイ(ユダヤ人2/テノール)
  パトリック・フォーゲル(ユダヤ人3/テノール)
  イェルク・シュナイダー(ユダヤ人4、奴隷/テノール)
  ダヴィッド・シュテッフェンス(ユダヤ人5/バス)
  ティルマン・レンネベック(ナザレ人1/バス)
  パヴェル・トロヤク(ナザレ人2/バリトン)
  ネヴェン・クルニッチ(カッパドキア人/バス)
  ヘニング・フォン・シュールマン(兵士1/バス)
  ダション・バートン(兵士2/バス・バリトン)

  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
  フランツ・ヴェルザー=メスト(指揮)

  演出・装置・衣裳・照明:ロメオ・カステルッチ
  振付:シンディ・ヴァン・アッカー

  収録時期:2018年7月28日
  収録場所:ザルツブルク、フェルゼンライトシューレ(ライヴ)
  映像監督:ヘニング・カステン

グリゴリアンがザルツブルク音楽祭でサロメを歌ったBDを聴きました。いやはや、凄いですね! ウィーン国立歌劇場で聴いたカミラ・ニュルンドも凄かったですが、まあ、これは異次元の歌唱ですね。ただし、このBDではウィーン・フィルの艶やかな美しい響きが録り切れていません。あくまでもグリゴリアンの絶唱を聴くものです。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       ジョナサン・ノット,

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