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クルレンツィスを意識せずにはもうモーツァルトのオペラは聴けない・・・ 《ドン・ジョヴァンニ》@新国立劇場 2022.12.11

昨日、予習に聴いた昨年のザルツブルク音楽祭でのクルレンツィスの《ドン・ジョヴァンニ》のイメージが強過ぎて、それを意識せずに聴くことは困難です。saraiはコロナ禍前の2019年にもルツェルン音楽祭でクルレンツィスの《ドン・ジョヴァンニ》(コンサート形式)の凄い演奏を聴いているので、なおさらです。さらに2015年のクルレンツィスのCDの衝撃もあります。少なくとも、saraiの頭の中ではモーツァルトのオペラはクルレンツィスの登場で価値転換が終わっています。今日の演奏はクルレンツィス以前であれば、なかなかの演奏だったと思います。東フィルも澄んだ響きの美しい演奏でしたし、女性陣3人はクルレンツィスの素晴らしい女性陣3人に肉薄する歌唱を聴かせてくれました。何と言っても、【ドンナ・アンナ】役のミルト・パパタナシュはクルレンツィスのCDでも同役を歌っています。いかにもクルレンツィス好みのピュアーで透き通った声で見事な歌唱を聴かせてくれました。ただ、高音の音程が少し不安定ですが、そのあやうさも魅力と言えば魅力に感じました。コロラトゥーラのコロコロがうまくまわっていないのだけは残念なところです。もちろん、今のクルレンツィスの秘蔵っ子のナデジダ・パブロワの圧倒的な歌唱力には比べられません。【ドンナ・エルヴィーラ】役のセレーナ・マルフィはとってもピュアーな歌唱で、これは大満足です。そして、特筆すべきは【ツェルリーナ】役の石橋栄実。スープレットの代表のような美しい声です。クルレンツィスが昨年新たに採用したアンナ・ルチア・リヒターはとてもピュアーで透明な声でスケール感もありますが、スープレットとしては石橋栄実も決して負けてはいません。saraiとしては一度、クルレンツィスに聴いてもらいたい気がします。スープレットということで石橋栄実は有望な若手と誤認しましたが、キャリアを読むと、ベテランの方なんですね。別の役でも聴いてみたいソプラノです。男性陣では、【ドン・オッターヴィオ】役のレオナルド・コルテッラッツィがなかなかの歌唱を聴かせてくれたくらいで、やはり、このオペラはバリトンが難しいことを再認識しました。クルレンツィスもキャスティングでは苦労しているのではないかしら。

いずれにせよ、昨日のクルレンツィスが予習どころか、本番モードになり、今日の公演は失礼ながら、クルレンツィス以前のモーツァルトのオペラ演奏を確認する場になるという異例の状況になってしまいました。これは新国の公演レベルの問題ではなく、きっと、ヨーロッパのオペラハウスで聴いても同じ感想を抱いてしまいそうです。近い将来、クルレンツィスのモーツァルトのオペラが日本でも聴けることを期待したいところですが、ウクライナ戦争という問題が立ちはだかるのかもしれませんね。事実、今年のザルツブルク音楽祭でも、クルレンツィスとムジカエテルナの公演はクルレンツィスとグスタフ・マーラー・ユーゲント管弦楽団の公演に代わったそうです。今後、ムジカエテルナの演奏を聴く機会はなさそうですね。クルレンツィスは何と新しいオーケストラ、ユートピアを組織して演奏活動に入ったとか。クルレンツィスの今後の動向が気になります。彼は音楽最優先の筈ですし、元々ギリシャ人なので、ロシアから出る選択が最良なのかもしれません。

新国のオペラの感想が終始、クルレンツィスの話になってしまいました。ごめんなさい! そうそう、今日から、オペラ、コンサートが6日連続になります。12月にこういう事態は異例です。これも間接的にコロナ禍の影響でしょうか。


今日のキャストは以下です。

  ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
   ドン・ジョヴァンニ

【指 揮】パオロ・オルミ
  【演 出】グリシャ・アサガロフ
  【美術・衣裳】ルイジ・ペーレゴ
  【照 明】マーティン・ゲプハルト
  【再演演出】澤田康子
  【舞台監督】斉藤美穂
  【合唱指揮】三澤洋史
  【合 唱】新国立劇場合唱団
  【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
  【チェンバロ】小埜寺美樹

【ドン・ジョヴァンニ】シモーネ・アルベルギーニ
  【騎士長】河野鉄平
  【レポレッロ】レナート・ドルチーニ
  【ドンナ・アンナ】ミルト・パパタナシュ
  【ドン・オッターヴィオ】レオナルド・コルテッラッツィ
  【ドンナ・エルヴィーラ】セレーナ・マルフィ
  【マゼット】近藤 圭
  【ツェルリーナ】石橋栄実


最後に予習について、まとめておきます。

以下の放送録画を見ました。

 2021年ザルツブルク音楽祭
  歌劇「ドン・ジョヴァンニ」(全2幕) 

  演出:ロメオ・カステルッチ
  指揮:テオドール・クルレンツィス

  ドン・ジョバンニ:ダヴィデ・ルチアノ(ディミトリス・ティリアコス*)
  レポレッロ:ヴィート・プリアンテ(カイル・ケテルセン*)
  騎士長:ミカ・カレス(CDと同じ、ロバート・ロイド)
  ドンナ・アンナ:ナデジダ・パブロワ(ミルト・パパナタシュ、ナデジダ・パブロワ)
  ドン・オッターヴィオ:マイケル・スパイレス(ケネス・ターヴァー*)
  ドンナ・エルヴィーラ:フェデリカ・ロンバルディ(カリーナ・ガウヴィン、フェデリカ・ロンバルディ)
  マゼット:デイヴィッド・シュテファンス(グイド・ロコンソロ、ルーベン・ドローレ)
  ツェルリーナ:アンナ・ルチア・リヒター(クリスティーナ・ガンシュ*)
  管弦楽:ムジカ・エテルナ

   収録:2021年8月4・7日ザルツブルク祝祭大劇場
   NHK BSプレミアムで2022年1月16日(日)に放映したものの録画

   カッコ内は1番目がCD、2番目が2019年ルツェルン音楽祭のキャスト *どちらも同一キャスト

クルレンツィスの音楽は変わらず最高ですが、キャストの変遷が面白いです。特に女性3人はルツェルン音楽祭で素晴らしかったので、クルレンツィスも満足していた筈です。ツェルリーナだけはアンナ・ルチア・リヒターに変えて、レベルアップし、ツェルリーナのイメージを一新した感じです。問題は男性陣。騎士長以外は完全に一新しました。ドン・ジョヴァンニ役のダヴィデ・ルチアノはソット・ヴォーチェ的な歌唱が見事で、優しくて、女心をとろかすような理想的な声の響き。クルレンツィスが求める理想の形に近づきましたね。ドン・オッターヴィオのマイケル・スパイレスは従来の線の細いテノールの路線を転換して、ブロードな歌唱を聴かせてくれます。あっと驚きました。これもクルレンツィスが求める道だったのですね。全体にピュアーで透明性の高い路線に一層近づきました。女性陣は完全で、男性陣はまだ変遷がありそうです。クルレンツィスはモーツァルトのオペラでどこまでも理想の形を追い求めているようです。フィガロもコジ・ファン・トゥッテもよりピュアーで透明性の高い音楽を目指していきそうです。クルレンツィス以前はモーツァルトのオペラと言えば、ちょっと言い過ぎかもしれませんが、軽妙で気楽に聴く音楽の代表のようなものであったように思います。しかし、クルレンツィスはその価値の転換を図り、精妙で深さのある音楽、ある意味、聴くものにとって、その中身を理解するのがとても難しい音楽に変質させてしまいました。今回の演出は必ずしも成功しているとは言えませんが、価値の転換という路線上にはあります。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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aokazuyaさん

コメントありがとうございます。デジタルコンサートホールは当面、これきりですが、毎週末、聴かれているんですね。ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲ

03/03 23:32 sarai

DCHは私も毎週末、楽しみに聞いています。
・スーパースターには、ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲルトの名も挙げたいところです。
・清水直子さん後半のみ登場、D

03/01 19:22 aokazuya

金婚式、おめでとうございます!!!
大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai
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