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イリーナ・メジューエワ、日本コンサートデビュー25周年記念リサイタルはバッハとブラームス、リストの大曲@トッパンホール 2022.12.12

メジューエワの久々の東京でのリサイタルです。コロナ禍でずっと聴けなかったので、じりじりしていたら、突然決まった日本コンサートデビュー25周年記念リサイタルですから、読響の定期演奏会のチケットを人に譲って、駆けつけることにしました。開催者の方のご好意で(知り合いではありません)、最前列の良い席を確保できました。

前半はまず、突然、場内のアナウンスでバッハの平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第12番 ヘ短調 BWV857 プレリュードが追加されることが告げられ、優しく、静謐な演奏が聴けました。メジューエワのバッハを聴くのは初めてですが、とても素晴らしい演奏。以前、朝日カルチャースクールで今後、バッハに注力していきたいと彼女が言っていたのを思い出します。実は突然、冒頭にバッハを弾いたのは、意味のあることだと後で分かります。

次はバッハのプレリュードにそのまま続けて、ブラームスの最後のピアノ・ソナタである第3番が演奏されます。最後と言っても、ブラームスが20歳という若さのときの作品です。彼はピアノ・ソナタは何故か、これで封印してしまいます。ブラームス特有の一つのジャンルの作品は多くは書かないということで言えば、不思議ではありません。晩年、ブラームスはピアノの作品はもっぱら、間奏曲などの小品を書いています。その晩年の枯れた渋い作品と比べると、同一人物の作品には思えない若さに満ち溢れた作品がこのピアノ・ソナタ第3番です。
ブラームスのピアノ・ソナタ第3番はピアノ・ソナタ第1番/第2番と同じ頃、すなわち、20歳頃のブラームスがデュッセルドルフのシューマン夫妻宅を訪れて、長期滞在した直後に作曲され、シューマンに講評を求めて譜面を送った最後の作品です。若さゆえの情熱とロマンに満ちた大作です。メジューエワの演奏は彼女らしい力強さにあふれたもので、すさまじい演奏でした。長大な第1楽章だけでも聴くsaraiも圧倒されて、疲れ果てます。力強いけれども、ロマンに満ちあふれた情熱のこめられた音楽です。でも、最高に素晴らしかったのは第2楽章のアンダンテです。これまた長大な楽章ですが、静謐でありながらもメジューエワの特質であるしっかりとした明晰なタッチの音楽が熱を込めて弾かれました。そして、終盤の熱い魂の盛り上がり。最後の回想するようなパッセージも見事でした。終楽章までレベルの高い演奏が続きました。最後の壮大な頂点で圧倒されました。若き日のブラームスは晩年の作品とは違う意味でとても素晴らしいですね。それにこれは大作です。メジューエワは記念リサイタルということで前半から大作で勝負です。

後半はリストの大作、《巡礼の年 第3年》。実演で聴くのは初めてです。いやはや、メジューエワ、渾身の演奏。途轍もない演奏です。第1曲だけはシンプルでしたが、第2曲以降はどれも長大で超絶的な曲ですが、メジューエワは無尽蔵な体力で全身をばねのようにして、激しく演奏していきます。無論、繊細な表現もちゃんと織り込んでいきます。とりわけ、有名な第4曲の《エステ荘の噴水》の水のしぶきの跳ね上がるような瑞々しい演奏の素晴らしさには魅了されるだけです。第6曲の葬送行進曲の荘厳さも圧倒的な迫力です。最後の第7曲が力強く高潮して終焉を迎えるときにはさすがのメジューエワも体力の限りを使い果たした態です。聴いているsaraiもヘトヘトですからね。とんでもない大曲でした。全部で50分ほどだったでしょうか。長大で壮大な作品で、こんなものを弾くとピアニストが体を壊すのではないかと心配になります。それでもメジューエワはちゃんとアンコール曲を弾いてくれます。

まずはリストの聖ドロテア。メジューエワの《巡礼の年 第3年》のCDでもアンコール曲風に併録された曲ですが、確かに大曲《巡礼の年 第3年》の後にはおさまりがよい曲です。一服の清涼剤に思えます。
次はブラームスの晩年の作品。20歳のときのピアノ・ソナタ第3番に対局しての演奏です。メジューエワはこういう力の抜けた曲も味わい深く演奏してくれます。
最後はバッハのコラール前奏曲《我ら悩みの極みにありて》 BWV641です。これを弾くためにメジューエワは冒頭でバッハの平均律を弾いたんです。このコラール前奏曲は未完の大作、フーガの技法の初版譜に未完で終わったフーガを補うような意味でコラール前奏曲『われ汝の御座の前に進み出て』BWV 668が併録されましたが、それはコラール前奏曲《我ら悩みの極みにありて》 BWV641の歌詞を変えただけのものです。バッハはこの作品を死の床で口述筆記させたと言われています。バッハの晩年の最高傑作の《フーガの技法》を暗示するようなコラール前奏曲を記念リサイタルの〆に置いたメジューエワの強いバッハへの思いが感じられます。彼女はこれから本気でバッハに取り組んでいくようです。楽しみですね。アンジェラ・ヒューイットのように全鍵盤作品の連続コンサートでもやってくれれば、saraiは卒倒するくらいに嬉しいんですけどね・・・。


今日のプログラムは以下です。

  日本コンサートデビュー25周年記念
   イリーナ・メジューエワ ピアノ リサイタル


  J.S.バッハ:平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第12番 ヘ短調 BWV857 プレリュード
  ブラームス:ピアノ・ソナタ第3番 ヘ短調 Op.5

   《休憩》

  リスト:《巡礼の年 第3年》S.163
 
   《アンコール》
     リスト:聖ドロテア S.187
     ブラームス :6つの小品 Op.118 から 第5曲 ロマンス ヘ長調 Op.118-5
     J.S.バッハ(ヴェデルニコフ編):コラール前奏曲《我ら悩みの極みにありて》 BWV641


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のバッハの平均律クラヴィーア曲集 第1巻 第12番 ヘ短調 BWV857 プレリュードは突然の追加でしたから、予習していません。


2曲目のブラームスのピアノ・ソナタ第3番は以下のCDを聴きました。

 イリーナ・メジューエワ 2021年9月29日~10月1日 新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音
 
メジューエワのコロナ禍中の録音です。とても力強く新鮮な演奏です。


3曲目のリストの《巡礼の年 第3年》は以下のCDを聴きました。

 イリーナ・メジューエワ 2017年4月8~9日 新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音

メジューエワ、日本コンサートデビュー20周年記念アルバムでした。力強く、かつ、繊細な演奏です。



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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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aokazuyaさん

コメントありがとうございます。デジタルコンサートホールは当面、これきりですが、毎週末、聴かれているんですね。ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲ

03/03 23:32 sarai

DCHは私も毎週末、楽しみに聞いています。
・スーパースターには、ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲルトの名も挙げたいところです。
・清水直子さん後半のみ登場、D

03/01 19:22 aokazuya

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大学入学直後からの長いお付き合い、素晴らしい伴侶に巡り逢われて、幸せな人生ですね!
京都には年に2回もお越しでも、青春を過ごし

10/07 08:57 堀内えり

 ≪…長調のいきいきとした溌剌さ、短調の抒情性、バッハの音楽の奥深さ…≫を、長調と短調の振り子時計の割り振り」による十進法と音楽の1オクターブの12等分の割り付けに

08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
思えば、もう10年前のコンサートです。
これがsaraiの聴いたハイティンク最高のコンサートでした。
その後、ザル

07/08 18:59 sarai

CDでしか聴いてはいません。
公演では小沢、ショルティだけ

ベーム、ケルテス、ショルティ、クーベリック、
クルト。ザンデルリング、ヴァント、ハイティンク
、チェリブ

07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai
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