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素晴らしいシューマン、そして、鳥肌の立つようなバルトーク 北村朋幹 ピアノ・リサイタル@東京文化会館小ホール 2023.2.25

今、注目の若手ピアニスト、北村朋幹(きたむら ともき)のピアノ・リサイタルです。5日連続コンサート中の2日目。毎日、心に残る演奏が続きます。北村朋幹のリリシズムあふれる個性的なピアノにはいつも敬服します。ある意味、日本人離れしたピアニストです。いつも尖がったプログラムで、ジョン・ケージだけのプログラムだと、saraiも尻込みしてしまいますが、今日はシューマン、バルトークにホリガー、ノーノを組み合わせた意欲的、かつ魅力的なプログラムです。特にシューマンの独奏曲を聴きたいとかねがね思っていましたが、普通の有名曲ではなく、森の情景と暁の歌です。いずれも実演で聴くのは初めてです。森の情景の予言の鳥だけはアンコール曲として、何度も聴きましたけどね。まあ、いずれの曲も北村朋幹らしい瑞々しい演奏で堪能しましたが、とりわけ、バルトークの「戸外にて」は鳥肌の立つような凄い演奏でした。

まずはシューマンの森の情景。シューマン好きにはたまらない演奏です。静かで懐かしい曲の演奏が心に沁みます。有名な第7曲の「予言の鳥」はまさにミステリアスな雰囲気で最高です。途中、普通の雰囲気の音楽に切り換わって、また、冒頭のミステリアスな音楽に変わる対比が素晴らしい。

次はホリガーのエリス-3つの夜曲-。先鋭的な響きですが、何故か心地よく感じられます。オーボエ奏者として知っているホリガーですが、実に趣味のよい曲を書いています。途中、ピアノの中に手を突っ込んで音色を変えていましたが、プリペアド・ピアノのようなことをしていたのかな。

前半の最後はバルトークの「戸外にて」。第1曲から、この曲の打楽器的な性格が表れていて、北村朋幹がその風貌から想像のできないようなエネルギッシュな演奏を繰り広げます。こちらも気持ちが高揚していきます。この作品の中心は最長の第4曲の「夜の音楽」ですが、北村朋幹は左手のアルペッジョで夜の雰囲気を醸し出しながら、右手で夜に出没する様々な自然の生き物を描き出していきます。その見事なピアノ表現に惹き付けられていきます。そして、第5曲は一転して、激しい狩りの音楽に変わります。バルトークの夜と並んで主要なモティーフである追跡Chaseの音楽です。ピアノが打楽器的に演奏されて、興奮の極致に至ります。北村朋幹が最高のバルトークを聴かせてくれました。次は是非、ピアノ・ソナタを聴かせてほしいものです。

休憩後、ノーノの . . .苦悩に満ちながらも晴朗な波. . .。あらかじめ、マウリツィオ・ポリーニのピアノの録音が電子的に編集されたテープが用意されて、その再生音と北村朋幹がコラボするように音楽を作り上げていきます。いやはや、ライヴでこんな演奏が聴けるとは凄い。素晴らしい現代音楽の演奏でした。北村朋幹ならではの会心の演奏です。

最後はまた、シューマンに戻ります。シューマンの晩年の作品、暁の歌です。もはや、ピアノの年のシューマンではありません。第1曲はまさしくコラールで静謐な宗教色に染まっています。まるでシューマン自身の心や体を癒すような音楽です。北村朋幹はリリシズムにあふれた優しく繊細な音楽を奏でていきます。色々な性格の曲を経て、最後の第5曲はまた、最初のコラールに戻って、シューマンの人生を閉じるような風情で静かに曲を閉じます。何と痛々しいシューマンなんでしょう。

アンコールは再び、シューマンの2曲がリリシズムに満ちて演奏されます。思っていた通り、北村朋幹にはシューマンがとっても似合います。
素晴らしいピアノ・リサイタルでした。


今日のプログラムは以下です。

  北村朋幹 ピアノ・リサイタル

  ピアノ:北村朋幹
 
  シューマン:森の情景 Op.82
  ホリガー:エリス-3つの夜曲-
  バルトーク:戸外にて Sz.81 BB89

  《休憩》

  ノーノ: . . .苦悩に満ちながらも晴朗な波. . .[エレクトロニクス:有馬純寿]
  シューマン:暁の歌 Op.133

  《アンコール》
   シューマン:「子供のためのアルバム Op.68」より 第15曲 春の歌
   シューマン:「森の情景 Op.82」より Ⅸ. 別れ


最後に予習について、まとめておきます。

シューマンの森の情景を予習したCDは以下です。

 ヴィルヘルム・ケンプ 1973年2月、ベートーヴェンザール、ハノーバー、ドイツ セッション録音

シューマンを愛奏したケンプ、とてもいいです。


ホリガーのエリス-3つの夜曲-を予習したCDは以下です。

 ヘルベルト・シュフ 2008年8月 セッション録音

ホリガーの作曲した曲を聴くのは初めてですが、なかなか素晴らしい曲で演奏も素晴らしい。


バルトークの戸外にてを予習したCDは以下です。

 ゾルタン・コチシュ 1996年6月、ハンブルク セッション録音

バルトークのピアノ独奏曲全集からの1曲です。見事な演奏です。


ノーノの . . .苦悩に満ちながらも晴朗な波. . .を予習したCDは以下です。

 マウリツィオ・ポリーニ 1977年9月 ミュンヘン セッション録音

ポリーニが初演した作品。確信に満ちた素晴らしい演奏です。


シューマンの暁の歌を予習したCDは以下です。

 アンドラーシュ・シフ 1997年1月、テルデック・スタジオ、ベルリン、ドイツ セッション録音

シフのシューマン、見事です。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       北村朋幹,

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aokazuyaさん

コメントありがとうございます。デジタルコンサートホールは当面、これきりですが、毎週末、聴かれているんですね。ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲ

03/03 23:32 sarai

DCHは私も毎週末、楽しみに聞いています。
・スーパースターには、ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲルトの名も挙げたいところです。
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03/01 19:22 aokazuya

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08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
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CDでしか聴いてはいません。
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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai
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