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コパチンスカヤの唯一無二で何ともチャーミングな音楽の一夜@トッパンホール 2023.3.23

コパチンスカヤの天衣無縫な演奏が弾けるようなワクワク感にあふれた最高のコンサートでした。
いつものように裸足で現れたコパチンスカヤはチャーミングな笑顔で万雷の拍手に応えます。派手な動きの思い切りのよいアクションで彼女にしか表現できない独自性にあふれた音楽を披露してくれます。作曲家の同じ楽譜から、彼女が感じ取った音楽表現で唯一無二の演奏を聴かせてくれます。しかも実に即興的要素が多く、今日の演奏はもう2度と聴けない音楽です。完成度の高さでは彼女のCDの演奏が最高ですが、今日の実演では即興性と高いエネルギー感に満ちた気魄がCDでは味わえないものです。

シェーンベルクとウェーベルンはいずれも新ウィーン学派の無調の音楽で、現在でも難解な音楽ですが、コパチンスカヤは熱い共感と気魄に満ちた演奏で難解さの壁を打ち破り、彼女の演奏に聴衆を引き込んでくれます。頭ではなく、体で実感し、我々も分かったというよりも共感させてくれます。コパチンスカヤにとって、彼女が存分に音楽表現していく上で、新ウィーン学派の無調の音楽は格好の材料のようです。

続くベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第7番もまるで新ウィーン学派の演奏の延長のように奏でられます。事前に彼女の演奏を予習していなければ、びっくり仰天で度肝を抜かれるところです。まるで居合抜きの勝負のように一瞬、一瞬の音楽を気魄を込めて演奏していきます。うっ、最近、同じような体験をしたことを思い出します。まるでデジャヴのよう。そうそう、鶴見サルビアホールで聴いたドーリック・ストリング・クァルテットのベートーヴェンの弦楽四重奏曲 第11番「セリオーソ」で似た思いを感じました。こういうスタイルのベートーヴェンが流行っているのかしらね。
第1楽章の異次元の演奏の後、一転して、第2楽章はフツーの抒情的な音楽表現で虚を突かれます。何とも心に響く音楽です。第3楽章、第4楽章はまた、エキセントリックとも言える演奏です。それにしてもコパチンスカヤだけでなく、ピアノのアホネンもコパチンスカヤ風の演奏で驚かされます。コパチンスカヤはアホネンのことをドッペルゲンガーと呼んでいるそうですが、さもありなんです。そう言えば、コパチンスカヤがチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲をクルレンツィスと共演したときも、あのクルレンツィスがドッペルゲンガーになっていたような気がします。コパチンスカヤ、恐るべし。

休憩後、フェルドマンの小品。これは無機的で静謐な作品。とても短い作品で、まるで次のアンタイルのソナタの序章のようですが、音楽の質はまるで違っています。フェルドマンは難解と言えば、難解ですが、新ウィーン学派の難解さとは意味が違います。フェルドマンはその乾いたような響きをただ受容するだけでそれ以上の意味を探るような音楽ではありません。静寂と音の響きの間の音空間を味わうとでも言えばいいのでしょうか。

アンタイルのヴァイオリン・ソナタ第1番。これは難解でもなんでもありません。民俗的なメロディーをベースに多彩なリズムが乱れ狂うような面白い音楽です。バルトーク的にも思えますが、解説によるとアメリカ出身のアンタイルがパリでストラヴィンスキーの影響を受けたとのことです。saraiはどうしてもバルトークの影響を感じるのですが、思い過ごしなんでしょうか。
ともかく、コパチンスカヤの演奏はエネルギー感に満ち満ちて、聴くものをインスパイアするようです。しつこいですが、そういう面でもバルトーク的です。特に第1楽章と第4楽章が勢いにあふれています。そう言えば、第1楽章はゲームミュージック的な要素も含んでいます。ジョン・アダムズへの系譜もあるのでしょうか。第2楽章は美しく抒情的。第3楽章は哀感に満ちた音楽です。音楽だけを聴いていれば、東欧の作曲家を想像してしまうような作品です。コパチンスカヤはこの曲を自在に弾きこなし、まるで彼女に捧げられた音楽のようです。あまり演奏されない曲ですが、コパチンスカヤが世に広めていくことになるのでしょうか。

アンコールはクイズ形式。誰が作曲したのかを聴衆に問う形で演奏されます。最初は日本的なメロディーにも思えましたが、正解はリゲティ。1940年の作曲のようですから(間違っているかも)、17歳でまだ、作曲を学ぶ前の作品ですね。後年のリゲティからは想像できません。ちなみにリゲティは今年、生誕100年で、このトッパンホールで生誕100年バースデーコンサートが5月28日にあります。無論、saraiも聴きます。
2曲目のアンコール曲はギドン・クレーメルがいつもアンコール曲にしているカンチェリのラグ-ギドン-タイム。風変わりな曲で笑わせてくれます。
とってもチャーミングなアンコールでした。

コパチンスカヤ、凄し!! 聴いて超満足のコンサートでした。


今日のプログラムは以下です。

  パトリツィア・コパチンスカヤ(ヴァイオリン)
  ヨーナス・アホネン(ピアノ)

  シェーンベルク:幻想曲 Op.47
  ウェーベルン:ヴァイオリンとピアノのための4つの小品 Op.7
  ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第7番 ハ短調 Op.30-2

   《休憩》

  フェルドマン:ヴァイオリンとピアノのための作品(1950)
  アンタイル:ヴァイオリン・ソナタ第1番(1923)

   《アンコール》

  リゲティ:アダージョ・モルト・センプリチェAdagio molto semplice
  カンチェリ:ラグ-ギドン-タイムRag-Gidon-Time
  
  
最後に予習について、まとめておきます。

すべて、Youtubeでコパチンスカヤとアホネンのライヴ映像で聴きました。
さらに、以下のCDを聴きました。

 『ジョージ・アンタイルの見た世界~アンタイル、フェルドマン、ケージ、ベートーヴェン』
    パトリツィア・コパチンスカヤ、ヨーナス・アホネン
  1. フェルドマン:小品~ヴァイオリンとピアノのための (1950)
  2. ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第7番ハ短調 Op.30-2 (1802)
  3. ケージ:夜想曲 ~ヴァイオリンとピアノのための (1947)
  4. アンタイル:ヴァイオリン・ソナタ第1番 (1923)
  5. フェルドマン:エクステンション 1~ヴァイオリンとピアノのための (1951)
   2020年12月 スイス、ラジオ・スタジオ・チューリッヒ セッション録音
   
たっぷり予習したので、もうそれだけで今日のリサイタルを聴いた気分になりました。CDの演奏は流石に完成度の高い演奏で聴き惚れました。1,2,4が今日の演奏曲。3のケージの夜想曲はこれがケージかと驚くようなロマンティックな曲。5のフェルドマンは1のフェルドマンの小品をそのまま引き延ばしたような作品で瓜二つに思えます。   




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       コパチンスカヤ,

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久々のコメント、ありがとうございます。
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