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フリットリ新たな伝説・聖女ミミ!《ラ・ボエーム》:MET@NHKホール 2011.6.17

プッチーニの名作オペラ《ラ・ボエーム》はsaraiがオペラにのめりこむきっかけとなった記念的作品。そして、このオペラだけはミレッラ・フレーニのミミなしには成立しないものでした。
イタリア人プッチーニのオペラをイタリア人フレーニがすべてを歌い尽くす。そこには愛と死という人間として根源的なものがありますが、フレーニは一人の哀しい生身の女として演じきります。で、聴く者すべてを人間的共感に包み込むわけです。フレーニのミミはsaraiにとって、永遠に不滅のもの。今までは封印が解かれることは決してありませんでした。

フリットリは今までにないタイプのソプラノ歌手でしょう。イタリア人でありながら、決してイタリア臭くありません。なにか人間を超越している存在にも思えることがあります。一言で言えば、聖女の歌声を持つソプラノです。
フリットリでさえもフレーニのミミの封印を解くことは決してできません。しかし、もうひとつ別のミミを作り出すという破天荒なことをやってのけました。それはフレーニの歌うミミはあくまでも血の通った生身の人間であり、人間としての共感が我々聴衆との結びつきを作り上げたわけですが、フリットリは違います。フリットリは天上の世界から遣わされた天使が地上に舞い降り、生身の人間と一時の恋に落ち、そして、また、聖女として天界に帰って行くのです。その聖なる奇跡を我々聴衆がオペラとして目撃するわけです。

第1幕、どこからともなく、ロドルフォのもとに現れたミミ(フリットリ)はまことに優しげな声で「私の名はミミ」と語りかけます。その声ははかなげでもあります。ドラマチックな筈の愛の2重唱も人間ロドルフォと聖女ミミの決して通うことのない絆を強調するだけです。

第2幕の喧騒のなかでも、一人ミミは超越した存在として、冷静に周囲を見渡しているだけで、客観的な立場を貫きます。

第3幕、ここからは実に見事なフリットリの聖なる天上の声が響きわたります。ミミの別れ、それはミミの病気が原因ですが、それは天上の世界に戻る時期が近くなったとも言えます。だんだんと澄み渡っていくフリットリの高音の声の響きはミミが次第に聖化していくかのようです。とても生身の心や体が蝕まれた人間とはほど遠いものです。優しげにロドルフォを気づかう聖女ミミの純粋さがとても心を打ちます。このあたりからは涙なしには聴けなくなります。なんという感動でしょう。

第4幕、もうミミは完全に聖女に列せられます。声量を抑えて、澄みきって、どこまでも伸びていく高音は天上の世界の響きです。地上での想い出をひとつひとつ語りながら、ロドルフォを慰め、そして、天上に昇天していきます。残された我々人間は聖女ミミの姿を求めて、哀しみにくれます。

こういう聖女伝説はフレーニにもなしえなかった世界です。稀代のソプラノ、フリットリが作り上げた奇跡のオペラと言えるでしょう。人間の哀しみを表現したフレーニのミミは不滅ですが、ここに聖女ミミを誕生させたフリットリの新たな伝説が生まれました。そして、これも永遠に不滅でしょう。ラ・ボエームの封印が2重になってしまいました。

語っても語り尽くせない最高のオペラでした。こういうオペラに遭遇できて、とても幸せです。

最後に今夜のキャストをご紹介して幕とします。ルイージの指揮も聖女ミミを好サポートした見事なもので、メトロポリタン歌劇場管弦楽団の弦セクションの美しさが耳に残りました。ロドルフォを歌ったアルバレスは声量が足りませんが、その分、とてもロマンチックな歌唱で好印象。また、マルチェッロを歌ったマリウシュ・クヴィエチェンのバリトンの豊かな響きも忘れられません。ムゼッタを歌ったスザンナ・フィリップスは声がよく出て、とてもよい歌唱でした。

 プッチーニ:歌劇《ラ・ボエーム》
 
 ファビオ・ルイージ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団
 演出:フランコ・ゼッフィレッリ

 ミミ:バルバラ・フリットリ
 ロドルフォ:マルセロ・アルバレス
 マルチェッロ:マリウシュ・クヴィエチェン
 コッリーネ:ジョン・レリエ
 ショナール:エドワード・パークス
 ムゼッタ:スザンナ・フィリップス
 ベノワ/アルチンドロ:ポール・プリシュカ

これを持って、4夜聴いたメトロポリタンオペラも終幕です。結果的に震災後に素晴らしい公演を実施してくれた関係者のみなさんに感謝します。



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この記事へのコメント

1, 瑞光さん 2011/06/20 13:31
こんにちは

私は、この演目は
昨年のトリノオペラとくしくも同じになったので
スルーして「ルチア」2回という選択をしましたが
行けばよかったかもしれませんね。

個人的にはオケ・コンもほぼ同じような感想でした。
私も行ったコンサートについて書いてありますので
まあ読んでみてください。
ほぼ同じです。

2, saraiさん 2011/06/21 01:24
瑞光さん、こんばんは。
こちらにもコメントありがとうございます。

そうですね。「ルチア」2回という選択は二人のテノールを聴けたので正解だと思いますが、やはり、フリットリのミミは欠かせなかったでしょう。ゼッフィレッリの演出した舞台も見物でしたし・・・
六万四千円は決して高くなかったですよ、この内容では。

ブログ面白く読ませていただきました。基本的に同じ感想でしたね。ただ、R・シュトラウスはオケがまだ練習不足だったと思います。いかにアメリカのオケでももう少し、ドイツ的な響きが出せたと思いました。

最後にルチアで感涙した同類であることに喜びを禁じ得ませんでした。
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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん

みーちゃんさん、saraiです。

あの謎の建物は雄琴沖総合自動観測所という施設で琵琶湖の水質を測定しているそうです。

https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/repo

02/13 21:40 sarai

ずーと前にうきみどうに行きました
やはり、琵琶湖の真ん中の建物が何なのか気になったままです
分かりましたか
教えてください

02/13 20:54 みーちゃん

五十棲郁子さん、コメントありがとうございます。

水道水のこと、tap waterって言うんですね。知らなかった。単にwaterで通していました。ましてや、フランス語はほとんど

02/11 00:12 sarai

フランスも地方へ行くと英語が通じないでしょう。tap water ぐらいフランス語で言えないとね。

02/10 12:54 五十棲郁子
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