FC2ブログ
 
  

感動の《ルチア》:MET@東京文化会館 2011.6.16

日本のこういう状況のなかで、気持ちよく来日してくれたメンバーに感謝あるのみです。特に生まれたばかりの息子さんを連れて来日してくれたディアナ・ダムラウには特に感謝の意を捧げたいと思います。彼女の今夜の歌唱は素晴らしいという言葉では表現できないものです。ほぼ10年ぶりに聴きましたが、まさに世界最高のソプラノに成長していました。現在、彼女に比肩できるのはネトレプコ、フリットリ、デッセイくらいでしょう。それぞれタイプが異なりますが、非常に高いレベルでの独自性を持つディーヴァたちです。もちろん、別格のグルベローヴァはいますが、もう世代が異なりますね。

さて、今日のプログラムとキャストは以下です。

 ドニゼッティ:歌劇《ランメルムーアのルチア》
 
 ジャナンドレア・ノセダ指揮メトロポリタン歌劇場管弦楽団
 演出:メアリー・ジマーマン

 ルチア:ディアナ・ダムラウ
 エドガルド:ピョートル・ベチャワ
 エンリーコ:ジェリコ・ルチッチ
 ライモンド:イリダール・アブドラザコフ
 アリーサ:テオドラ・ハンスローヴェ
 アルトゥーロ:マシュー・プレンク
 ノルマンノ:エドゥアルド・ヴァルデス

第1幕の第1場、ルチッチの美しく豊かなバリトンが響きわたります。素晴らしいですね。生で聴くのは初めてです。得意役のマクベスを聴いてみたいものです。
で、第1幕の第2場、いよいよ期待のダムラウが登場しますが、最初のアリアでは、まだ、あまり声が出ていません。アリア後半の声を張り上げるところになると、突如、実に美しい高音の響きが聴かれるようになりました。続いて、ベチャワも登場して、2人で別れの2重唱を歌うあたりはもう澄みきっていて芯のある素晴らしい響きです。ベチャワは声は十分出ていますが、この歌は少し平板な感じでもう一つです。ただ、あまり技巧を凝らさないで歌っていくのはきっと終盤での切々と歌うところにつなげていくためだとも考えられます。いずれにせよ、この2重唱はsaraiが大好きな歌なので、ダムラウの歌唱にはすっかり満足です。

休憩後、第2幕の第1場、ルチッチ扮する兄とダムラウ扮するルチアの対決の場面ですが、ここは激しいやりとりというよりも、ダムラウは等身大の哀れな女性としてのルチアを演じていました。これはこれで彼女の個性ですから、面白く聴きました。アブドラザコフ扮するライモンドがルチアを家のために犠牲になって結婚するように諭すところは、どのプロダクションもそうですが、なにかもうひとつ説得力に欠けます。ダムラウはここでも等身大の哀れな女性としてのルチアを演じていました。ですから、抑え気味の歌唱です。このあたりはこれくらいの盛り上がりで納得です。
続いて、第2幕の第2場はルチアとアルトゥーロの結婚の手続きの場面。ダムラウは相変わらず、等身大の哀れな女性を演じます。ここにベチャワ扮するエドガルドが飛び込んできて、怒りまくるところですが、なかなかの迫力での歌唱、聴きいってしまいます。

休憩後、このオペラの最大の見せ場の第3幕です。第1場はルチッチとベチャワの対決シーン。よく省略される場面ですが、今回のプロダクションは丁寧に作られています。この後の布石となるシーンですから、省略なしにやったのは正解でしょう。2人ともよく声が伸び、いい場面になっています。
そして、遂に第2場は「狂乱の場」です。ここはダムラウの一人舞台。現代を代表するソプラノにふさわしい素晴らしい歌唱です。特にフルートと絡み合うところでの自在な高音の響き、まさに驚異的です。この美しさは多分、ネトレプコ、デッセイよりも上です。パーフェクトを通り越しています。フィナーレに向かってのコロラテューラの技巧を凝らした歌唱の素晴らしいこと、完璧にコントロールされたクリスタルの輝きを思わせる高音の響き、ただただ呆然と聴きいるのみです。最後の超高音の叫びでまるでこのオペラも幕を閉じた感があります。
しかし、METのこのプロダクションはこの後に続く第3場が泣かせるんです。まず、ベチャワの素晴らしいアリアで愛する人のいない人生の哀しさが胸につきささるようです。その後、ルチアが正気を失って、エドガルドに恋い焦がれながら、死んでいくことを知り、エドガルドは「ルチアが死ぬ」と哀切を込めた歌唱。このベチャワの歌唱はとても涙なしには聴けません。突然、愛するルチアがこの世からいなくなる衝撃ははかりしれませんが、このオペラでは、saraiを含めた聴衆にその悲しみが共有されます。ここで涙しない聴衆はオペラを聴く資格なしと断じたいと思うくらいです。
そして、最後は天使として現れたルチアに導かれて、エドガルドは自害を果たします。哀しい結末ですが、あえて、ハッピーエンドといいたいと思います。それが救いというものでしょう。人は愛の力で最後は救われる。そう信じたいオペラの結末です。
それにしても、この演出で最後にルチアを再度登場させたのは、とてもよい考えだと思います。演出のジマーマンにもブラボー!!

ということで、昨日の《ドン・カルロ》に比べて、なんという素晴らしさでしょう。新世代の《ルチア》として、とても感動した公演でした。



↓ saraiのブログを応援してくれるかたはポチっとクリックしてsaraiを元気づけてね

 いいね!



この記事へのコメント

1, 瑞光さん 2011/06/20 13:26
こんにちは

本当にMETのルチアは素晴らしかったですね。

私は2回出かけましたが
2回ともテノールが違うので
すごく楽しめました。
初日でしたので、ものすごく興奮したのを覚えております。

2回目は

同じ日に出かけたみたいで、
この日もとてもよかったと思います。
おっしゃるようにダムラウは
初日の方が良かった印象ですが、初日よりも堂々としておりました。


本当に
良い公演に巡り合えたと、心から感謝しております。

2, saraiさん 2011/06/20 13:38
瑞光さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。

ダムラウは初日はさらによかったんですね。それは聴きたかった。来年の6月はウィーン国立歌劇場でも、ベチャワと一緒にルチアを歌うようです。きっと、ますます磨きがかかるでしょうね。
ところで初日というと、テノールはカレーヤの代わりにビリャソンが歌ったんですよね。これは聴きたかったですね。特に第1幕の2重唱はCDで聴きましたが、素晴らしかったので、きっと、生ではもっと聴き応えがあったでしょう。

また、当ブログにお越しくださいね。では。
関連記事

テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

コメントの投稿

非公開コメント

人気ランキング投票、よろしくね
ページ移動
プロフィール

sarai

Author:sarai
オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

来訪者カウンター
CalendArchive
最新記事
カテゴリ
指揮者

ソプラノ

ピアニスト

ヴァイオリン

室内楽

演奏団体

リンク
Comment Balloon

えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん

みーちゃんさん、saraiです。

あの謎の建物は雄琴沖総合自動観測所という施設で琵琶湖の水質を測定しているそうです。

https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/repo

02/13 21:40 sarai

ずーと前にうきみどうに行きました
やはり、琵琶湖の真ん中の建物が何なのか気になったままです
分かりましたか
教えてください

02/13 20:54 みーちゃん

五十棲郁子さん、コメントありがとうございます。

水道水のこと、tap waterって言うんですね。知らなかった。単にwaterで通していました。ましてや、フランス語はほとんど

02/11 00:12 sarai

フランスも地方へ行くと英語が通じないでしょう。tap water ぐらいフランス語で言えないとね。

02/10 12:54 五十棲郁子
月別アーカイブ
検索フォーム
RSSリンクの表示
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR