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ウィーン古典派のハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの美しさを極め尽くしたルイージの会心の演奏 NHK交響楽団@サントリーホール 2023.5.24

聴く前は何とも地味なプログラムに思えましたが、ルイージがN響を見事にコントロールして、ウィーン古典派のハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの肌触りのよい美しい演奏を聴かせてくれました。こういう音楽を聴くと、殺伐とした世界を忘れて、ほのぼのとした幸福感に満たされます。リアルな世界とは異次元の天上の世界を味わった2時間になりました。音楽は聴く者を束の間の別の人生を体験させてくれます。ウィーン古典派の時代ではなく、もっと天国的な世界を体験するんです。

まずは、ハイドンの交響曲 第82番「くま」。パリ交響曲の6曲セットの最初の曲です。このあたりの曲はあまり聴いていなくて、この曲も実演では初聴きです。50代の脂の乗り切ったハイドンの勢いあふれる作品ですが、ルイージは自然体で実に美しい響きをN響から引き出して、聴く者を魅了してくれます。特に弦の響きは最高です。少ない構成のオーケストラですが、豊かで芳醇な響きで、それでいて、室内楽的な音のまとまりもあり、ただただ、その演奏に身を委ねるのみで、18世紀末のウィーン古典派の真髄を味わうことができます。うーん、言葉で表現できないような見事な音楽です。

次いで、モーツァルト晩年の傑作、ホルン協奏曲 第3番です。時代的には、ハイドンの交響曲 第82番「くま」とほぼ同時期に作曲されたというのが不思議な感じです。ホルンの福川伸陽は驚くほど抑えた演奏です。まるでウィンナーホルンで演奏しているように感じます。モーツァルトの時代の様式感を表出しているのでしょう。それでも、音の芯はしっかりとしていて、モーツァルトの美しい旋律を奏でています。サポートするルイージ指揮のN響の演奏の美しいこと! ハイドンの美しさとはまた違っていますが、自然体の美しさという点では共通しています。ウィーン古典派の粋を味わわせてくれます。第2楽章のラルゲットの沈潜したような抒情は深い味わいに満ちています。そして、一転して、第3楽章の勢いにあふれた喜びの音楽で気持ちが高揚します。
このモーツァルトの作品も心に平安をもたらすような素晴らしい演奏でした。

休憩後、ベートーヴェンの名曲、交響曲 第6番「田園」。これが素晴らしかったんです。プログラムの解説にあった、古代ギリシャの理想郷アルカディアを彷彿とするような究極の美しさに満ち溢れた音楽が第1楽章、第2楽章と続いていきます。とりわけ、第2楽章の音楽はベートーヴェンがテキストに書いた通り、《小川のほとり》が見事に表現されて、まさにアルカディアの小川の風景が心に浮かび上がってくるかのようです。この曲がこんなに天上の響きを醸し出すとは思っていなかったので、望外の喜びを味わいます。これまではウィーン郊外の美しい自然を表現していると思って聴いていましたが、ベートーヴェンはもっと深い内容をこの音楽に込めていたんですね。これから、この有名な曲の聴き方が変わりそうです。今年は何故か、この「田園」を聴く機会が多く、井上道義&新日フィル、ジョナサン・ノット&東響などで聴きます。俄然、どんな演奏を聴かせてくれるか、楽しみになってきました。
横道にそれましたが、第5楽章の牧歌が素晴らしい演奏でベートーヴェンの晩年の穏やかな心境の諦念を予感するような深い音楽を聴くことができました。

ファビオ・ルイージで聴いた最高の音楽だったかもしれません。ルイージにはウィーン古典派が似合う?


今日のプログラムは以下のとおりです。


  指揮 : ファビオ・ルイージ
  ホルン : 福川伸陽
  管弦楽:NHK交響楽団 コンサートマスター:郷古廉(前半)、篠崎史紀(後半)

  ハイドン:交響曲 第82番 ハ長調 Hob. I-82「くま」
  モーツァルト:ホルン協奏曲 第3番 変ホ長調 K. 447
   《アンコール》ロッシーニ:狩りのファンファーレ

   《休憩》

  ベートーヴェン:交響曲 第6番 へ長調 Op.68「田園」


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のハイドンの交響曲 第82番「くま」を予習したCDは以下です。

  ニコラウス・アーノンクール指揮ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス 2001年12月10-15日、2002年6月4,5日 コンツェルトハウス・モーツァルトザール,ウィーン セッション録音

アーノンクールが遺したハイドンのパリ交響曲集(6曲)。見事な演奏で言うことはありません。


2曲目のモーツァルトのホルン協奏曲 第3番を予習したCDは以下です。

   ギュンター・ヘーグナー、カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1978年11月、1980年4月(カデンツァ) ウィーン、ムジークフェラインザール セッション録音

ウィンナーホルンのへーグナー、そして、ベーム指揮ウィーン・フィルとくれば、よい演奏に決まっていますが、とりわけ、無理のない自然体の演奏は晩年のベームならではと言えるかもしれません。



3曲目のベートーヴェンの交響曲 第6番「田園」を予習したCDは以下です。

  レナード・バーンスタイン指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1978年11月4~7日 ウィーン、ムジークフェラインザール ライヴ録音

バーンスタインの決して、超人的な演奏ではなく、あくまでも人間味あふれる演奏。曲の本質を突いた超名演です。くしくもベームのホルン協奏曲も同時期のウィーン・フィルの演奏ですね。ちなみにベームはこの前年、1977年にウィーン・フィルと来日し、この田園の素晴らしいライヴ録音を遺しています。



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