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アラン・ギルバートと東京都交響楽団の壮麗なアルプス交響曲に深く感動@東京文化会館 2023.7.20

先週に引き続き、アラン・ギルバートと東京都交響楽団のコンビの演奏を聴きます。アラン・ギルバートが指揮すると鉄壁のアンサンブルで豪放とも思える演奏を聴かせてくれますが、それがますます磨きがかかった感じに思えます。期待通り、いや、それ以上の素晴らしい音楽が展開されました。それにしても、演奏もさることながら、プログラムが実に凝ったものと言えます。先週のニールセンの序曲《ヘリオス》はエーゲ海の太陽の日の出から日の入りまでを描いたもので、まるでアルプス交響曲の圧縮版のような音楽でしたが、後期ロマン派の音楽でもあり、今日の最初の曲、ウェーベルンの《夏風の中で》へのつながりも感じます。先週と今週で後期ロマン派の大回顧展という構成になっており、その中にアクセントとして、モーツァルトのホルン協奏曲を組み入れた効果は甚大です。無論、マーラー、ブルックナー、R.シュトラウスの作品の前にモーツァルトの協奏曲を置くというのはよくある構成ですが、さらにその前にウェーベルンが無調作品を書く前の後期ロマン派の爛熟した《夏風の中で》を置くという小憎らしいとも思える演出には唸らせられます。そして、これらを実際に聴いてみると、何ともぴたっとはまり、次第に楽興が高まり、最後のアルプス交響曲で最高の感銘に至るという完璧な仕掛けになっていました。すべてはアラン・ギルバートの音楽構成力とアンサンブル力が絶頂に達したとも思える都響の最強コンビのなせる業ではありました。それに今日はベルリン・フィルのホルンの達人、シュテファン・ドールというスペシャルゲストもいました。秋のキリル・ペトレンコ率いるベルリン・フィルの来日公演の予告でもありますね。
さすがに今日はsaraiのお知り合いの音楽ファンも集結し、この公演への期待の高さも感じられます。

まずはウェーベルンの《夏風の中で》。20歳の学生だったウェーベルンの何とも才能豊かな作品にも感心しますが、それよりもアラン・ギルバートが繊細かつスケール感に満ちた音楽に仕立てあげていく様に驚嘆します。後期ロマン派の香気にあふれた音楽を展開し、まるでR.シュトラウスの交響詩にも匹敵する高まりを味わわせてくれます。この作品が生まれた20世紀初頭、才能ある音楽家の間にR.シュトラウスの交響詩がいかに衝撃を与えていたのかということも実感します。同時期にバルトークもR.シュトラウスの交響詩に衝撃を受け、自ら、ピアノ独奏用に編曲して演奏していたのは有名な話です。話が横道にそれてしまいましたが、この曲を冒頭に置いたのは後半のプログラム、アルプス交響曲に向けての周到な布陣であり、ウェーベルンの隠れた名作をR.シュトラウスを暗に感じさせるような素晴らしい演奏で奏でてくれました。都響の弦楽アンサンブルの見事な演奏は今更、讃える必要はありませんが、とりわけ、弦のトップ奏者たちの達人ぶりは健在で、矢部達哉の存在の大きさを再認識しました。この演奏でsaraiはインスパイアされて、ぐっと音楽に前のめりの気持ちにさせられます。

次いで、ぐっと編成を縮小して、モーツァルトのホルン協奏曲第4番。若干の管楽器奏者はいますが、ほぼ、弦楽オーケストラ。それも室内オーケストラの規模です。満を持して、ホルンの達人、シュテファン・ドールの登場。モーツァルト後期のピアノ協奏曲を思わせるような充実した弦の響きに続いて、シュテファン・ドールのホルンが軽やかに入ってきます。弦が軽く刻んでいく上をドールのホルンが余裕で駆け抜けていきます。第1楽章終盤のカデンツァも微塵の重さもなく、さわやかに演奏。と思っていたら、何とドールの顔には汗が浮かんでいます。それでも第1楽章は見事にフィナーレ。第2楽章は独奏ホルンが緩徐楽章のメロディーを歌い上げていきます。ドールの顔はますます汗が浮かんできますが、音楽は余裕の演奏に思えます。間を置かずに第3楽章に突入。狩りのような勢いのある旋律。そのまま、完璧な演奏でフィナーレ。都響のアンサンブルも素晴らしく、何とも見事なホルン協奏曲でした。余裕に思えたシュテファン・ドールの演奏でしたが、大粒の汗を見ると実際はなかなか大変だったのでしょうね。
ところで、R.シュトラウスのアルプス交響曲に先駆けて、モーツァルトの協奏曲が演奏されたのは、R.シュトラウスがモーツァルトを崇敬しており、その音楽の根幹にはモーツァルトの音楽があることと無縁ではないでしょう。もっとも、R.シュトラウスの音楽からモーツァルトを連想するものはほとんどありませんけどね。


休憩後の後半はR.シュトラウスのアルプス交響曲。第1ホルンはシュテファン・ドールが吹くという贅沢さ。
大編成の都響をアラン・ギルバートが完璧にコントロールして、とても分厚い響きでゆったりとスケールの大きな演奏を聴かせてくれました。冒頭の夜から分厚い響きが続き、圧倒的な日の出には目が眩む思いです。そして、山登りを開始。カウベルが鳴ったり、バンダとの掛け合いがあったりしながら、アラン・ギルバートのスケールの大きな音楽が展開されていきます。そして、遂に圧倒的な響きで《山頂にて》。音楽的にも頂点を極めます。その荘厳な響きは大自然の雄大さを描き尽くし、心が震えます。アルプスの自然以上に強烈とも思える音楽は神を超えるようなレベルに達します。そして、《ヴィジョン》では太陽の光を浴びて美しい景観が広がります。芸術が創り出した神を超える美の世界です。何故か、この美しい風景に《エレジー》を感じるのは人間の弱さなのか、繊細さのか。強烈な嵐の中、下山。そして、太陽も沈みます。これも大自然の雄大さ。《終末》です。オルガンの響きはコラールのように宗教的です。そして、美しいホルンの響き。最高に素晴らしい音楽です。瞑想的な音楽が続き、静かな感動を覚えます。夜の帳が落ちていき、静かに曲を閉じます。言葉を失います。わずか50分で大自然と人間の究極のドラマが描き尽くされました。

音楽の素晴らしさをアラン・ギルバートと都響は最高に与えてくれました。音楽の楽しみを味わい尽くす究極の2時間でした。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:アラン・ギルバート
  ホルン:シュテファン・ドール
  管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:矢部達哉

  ウェーベルン:夏風の中で―大管弦楽のための牧歌
  モーツァルト:ホルン協奏曲第4番 変ホ長調 K.495
   
   《休憩》
   
  R.シュトラウス:アルプス交響曲 Op.64
   

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のウェーベルンの《夏風の中で》を予習したCDは以下です。

 ベルナルド・ハイティンク指揮シカゴ交響楽団 2009年4月23,24,25,28日 シカゴ、シンフォニーセンター、オーケストラ・ホール ライヴ録音

R.シュトラウスの交響詩『英雄の生涯』の素晴らしい演奏とカップリングされたアルバムで、これも丁寧で美しい演奏です。


2曲目のモーツァルトのホルン協奏曲第4番を予習したCDは以下です。

 ギュンター・ヘーグナー、カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団 1978年11月 ウィーン、ムジークフェラインザール セッション録音

ウィンナーホルンのへーグナー、そして、ベーム指揮ウィーン・フィルとくれば、よい演奏に決まっていますが、とりわけ、無理のない自然体の演奏は晩年のベームならではと言えるかもしれません。


3曲目のR.シュトラウスのアルプス交響曲を予習したCDは以下です。

 フランソワ=グザヴィエ・ロト指揮バーデン=バーデン&フライブルクSWR交響楽団(南西ドイツ放送交響楽団) 2014年11月5,6日 フライブルク、コンツェルトハウス セッション録音
 
ロトの精密で精妙な音楽作りが光ります。R.シュトラウス交響詩全集(全5枚)からの1枚です。



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