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20世紀初頭のウィーンのあだ花、コルンゴルトのシンフォニエッタをゲッツェルと東京都交響楽団が美しくも儚い一夜の夢のように好演@サントリーホール 2023.9.8

ますます好調な東京都交響楽団は滅多に聴けないコルンゴルトのシンフォニエッタをサッシャ・ゲッツェルの見事な指揮で最高に美しく演奏してくれました。その後半の演奏に先駆けて、前半はセルビアの異様な風体のヴァイオリニスト、ネマニャ・ラドゥロヴィチの演奏するベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。
サッシャ・ゲッツェルの指揮する都響は完璧に美しい演奏を聴かせてくれます。そして、何とも異様なスタイルのラドゥロヴィチですが、ヴァイオリンはとても美しくナイーヴな演奏を聴かせてくれます。この曲は高音パートが目立ちますが、ラドゥロヴィチの高音の冴えは素晴らしいものです。そして、ちょっと、溜めのきいた演奏は個性的にも感じます。第1楽章はラドゥロヴィチのナイーヴな演奏を聴いているうちに終了。ゲッツェル指揮の都響の演奏も見事です。そうそう、終盤のカデンツァはクライスラーの作になるものとのことですが、あきれるほどに超絶技巧の連続で、凄い技の冴えを聴かせてくれました。
第2楽章はラドゥロヴィチの極端に音量を抑えた綿々たる演奏にぐっと惹き付けられます。まさにラドゥロヴィチの一人舞台。ある意味、ラドゥロヴィチのやりたい放題のヴァイオリン演奏にゲッツェルが見事にオーケストラをつけます。ゲッツェル凄し!
第3楽章はエンジン全開の演奏で音楽が高潮する中、フィナーレ。
ラドゥロヴィチのヴァイオリン、ナイーヴな音楽性の美しい演奏。そして、ゲッツェルの見事な指揮と都響の会心の演奏も最高。素晴らしいベートーヴェンでした。

休憩後の後半はコルンゴルトのシンフォニエッタ。無論、初めて聴きます。20世紀の初頭、ウィーンで才能が開花した天才、コルンゴルトの若き日の作品です。弱冠15歳の少年の作品がワインガルトナー指揮のウィーン・フィルによって初演というのも凄いですね。
曲は後期ロマン派の範疇にはいるのでしょうが、なんとも初々しく、当時のウィーンを思わせる美しくも儚い夢のような音楽です。ゲッツェルの指揮が素晴らしく、都響の最高のアンサンブルを引き出して、美し過ぎる音響を聴かせてくれます。第1楽章は活気あふれる響きで華麗な音楽を展開します。第2楽章はスケルツォで力強い音楽が響き渡ります。
第3楽章が凄い。ファンタジックな響きで夢のような音楽が美しく歌い上げられます。ゲッツェルの表現力に驚嘆します。まさに美しく儚い夢のような音楽が心を魅了します。都響ならでは美しい響きで夢のような音楽が展開されます。
第4楽章は低弦からフーガが始まります。意外に短くフーガが終わり、勢いのある主部が始まります。都響の美しいアンサンブルに魅了されているうちに長大な楽章も終盤にはいります。美しいコラール風の音楽を経て、高潮したコーダに心躍りながら、フィナーレ。予習では分かりにくい音楽に思えましたが、今日のゲッツェルの見事な指揮、そして、都響の最高のアンサンブルで美しく儚い音楽をたっぷりと堪能しました。

サッシャ・ゲッツェルは都響に初登場でしたが、以前聴いた読響のときと同様に見事な指揮で都響の素晴らしい響きを引き出して、素晴らしい音楽を聴かせてくれました。今後、このコンビは期待できそうです。


今日のプログラムは以下のとおりです。

  指揮:サッシャ・ゲッツェル
  ヴァイオリン:ネマニャ・ラドゥロヴィチ
  管弦楽:東京都交響楽団 コンサートマスター:山本友重

  ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 Op.61
   《アンコール》ヤドランカ・ストヤコヴィッチ:あなたはどこに
   
   《休憩》
   
  コルンゴルト:シンフォニエッタ ロ長調 Op.5
   

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲を予習した映像は以下です。

 イザベル・ファウスト、ベルナルド・ハイティンク指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2015年3月6日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホール)

先日の記事でアップしましたが、ファウストの深く内省的な演奏です。


2曲目のコルンゴルトのシンフォニエッタを予習した映像は以下です。

 ジェイムス・コンロン指揮ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団 2021年11月16日 ケルン・フィルハーモニー ライヴ収録 (YouTube)

コンロンはツェムリンスキーやコルンゴルトという20世紀初頭のウィーン音楽のスペシャリストとして、ここでも豪華絢爛な演奏を聴かせてくれます。



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