コバケン、圧巻のサン=サーンスの交響曲第3番《オルガンつき》 日本フィルハーモニー交響楽団@サントリーホール 2023.9.10
冒頭はオーケストラ演奏を封印して、石丸由佳のパイプオルガン独奏。これが素晴らしい。
名曲コンサートにふさわしいバッハの超名曲2曲を演奏しましたが、誰でもよく知っている曲で、芸術性の高い曲とあれば、満足できるレベルの演奏を聴かせるのはなかなか難しいところです。とりわけ、トッカータとフーガ ニ短調はバッハの最高峰とも言える作品ですが、トッカータの奔放性のある表現、フーガの厳しい表現を見事に実現してくれました。とても満足しました。
続くヴァイオリン独奏の3曲は楽しく聴かせてもらいました。これは芸術性をうんぬんするものではないでしょう。髙木凜々子のストラディヴァリウス「ロード・ボーウィック」(1702年)は美しい響きを堪能させてくれました。
休憩後、後半はいよいよ、今日のメイン、サン=サーンスの交響曲第3番《オルガンつき》です。83歳のコバケン、こと小林研一郎は老境の渋さなんていうものではない圧巻の演奏を聴かせてくれました。コバケンが振ると、日本フィルはよく鳴り、しかもコバケンの最高の美質であるメロディーラインが浮き立った演奏で魅了してくれます。とりわけ、弦の美しさはフォルティシモからピアノッシモまでゆるぐことがありません。第1楽章第1部では、循環主題が素晴らしく歌い上げられます。そして、第1楽章第2部では、パイプオルガンと弦楽が静謐さを湛えた音楽を敬虔とも言える表情で奏でられます。コバケンの面目躍如といった風情です。第2楽章第1部では、勇壮とも思えるスケルツォが響き渡ります。そして、いよいよ、第2楽章第2部では、荘厳なパイプオルガンの響きによって、華麗な音楽が開始されます。4手ピアノの響き、力強いファンファーレ、弦楽のフーガなど、循環主題に基づく多様な音楽表現を楽しみながら、オルガンとオーケストラが響き渡り、高潮したコーダに突入します。コバケン、圧巻のフィナーレです。
いやはや、素晴らしい演奏を聴かせてくれました。
アンコールの『カヴァレリア・ルスティカーナ』間奏曲も名曲コンサートを締め括るにふさわしいしみじみとした美しさ。久しぶりにこの名曲を堪能しました。そして、最後のしめはサン=サーンスの交響曲第3番の壮麗な終結部分。満足しました。
今日のプログラムは以下です。
指揮:小林研一郎[桂冠名誉指揮者]
ヴァイオリン:髙木凜々子
オルガン:石丸由佳
管弦楽:日本フィルハーモニー交響楽団 コンサートマスター:扇谷 泰明
J.S.バッハ:G線上のアリア
J.S.バッハ:トッカータとフーガ ニ短調 BWV565
(以上2曲オルガン独奏:石丸由佳)
エルガー:愛の挨拶
マスネ:タイスの瞑想曲
サラサーテ:ツィゴイネルワイゼン
(以上3曲ヴァイオリン独奏:髙木凜々子&オーケストラ)
《アンコール》プッチーニ:オペラ『ジャンニ・スキッキ』より「私のお父さん」(髙木凜々子&小林研一郎(ピアノ伴奏))
《休憩》
サン=サーンス:交響曲第3番《オルガンつき》 ハ短調 Op.78
《アンコール》
マスカーニ:オペラ『カヴァレリア・ルスティカーナ』間奏曲
サン=サーンス:交響曲第3番 ハ短調 Op. 78 「オルガンつき」より第2楽章第2部 終結部
最後に予習について、まとめておきます。
1~2曲目のJ.S.バッハのオルガン曲を予習した演奏は以下です。
石丸由佳 りゅーとぴあ新潟市民芸術文化会館(G線上のアリア)、横浜みなとみらいホール(トッカータとフーガ ニ短調)ライヴ収録 (YouTube)
みなとみらいホールでのトッカータとフーガ ニ短調はまさに神のごとき演奏。圧倒的な迫力。
3~5曲目のヴァイオリン独奏曲は以下のYOUTUBEを聴きました。
髙木凜々子 愛の挨拶《使用楽器:ストラディヴァリウス「ロード・ボーウィック」(1702年)》 ピアノ:河内恵理子 2022年11月10日 東京、すみだトリフォニーホール 小ホール
タイスの瞑想曲《使用楽器:ストラディヴァリウス「ロード・ボーウィック」(1702年)》 ピアノ 五十嵐薫子 2023年1月26日 東京・Hakujuホール
ツィゴイネルワイゼン ピアノ 高橋元子 2018年11月11日 県民文化センターふくやま
どれも美しい演奏です。とりわけ、ストラディヴァリウス「ロード・ボーウィック」での演奏は絶品です。
6曲目のサン=サーンスの交響曲第3番《オルガンつき》を予習した映像は以下です。
ティエリー・エスケシュ(オルガン)、ズービン・メータ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2015年9月26日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ収録 (ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホール)
当時79歳のメータが安定した指揮。終盤の熱い指揮は圧巻。壮大な演奏です。
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