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ショスタコーヴィチの最後の弦楽四重奏曲、第15番は鎮魂の名作 クァルテット・エクセルシオの暗く沈んだ薄明の演奏に静かな感動@鶴見サルビアホール 2023.9.15

日本を代表するカルテットの一つ、クァルテット・エクセルシオの初のショスタコーヴィチ全曲チクルスも今回で最終回。saraiは2回目の第6番までは聴きましたが、3回目と4日目のチクルスは都合で聴けず、第6番の後はいきなり、最後の第15番。

この第15番はショスタコーヴィチの死の前年に作曲されましたが、このとき、ショスタコーヴィチは自らの死を悟っていたそうです。最後にして、最長の告別の弦楽四重奏曲です。
暗く物悲しい雰囲気の演奏が全6楽章にわたって続きます。チェロの大友肇、ヴィオラの吉田有紀子が低域をきっちりと支えながら、暗い音楽の底を物語っていきます。そして、第1ヴァイオリンの西野ゆかが美しくも哀しい旋律を歌っていきます。クァルテット・エクセルシオの畢生の演奏にただただ聴き入っていきます。次第に音楽的に高潮していき、第4楽章のノクターンの後半の第1ヴァイオリンとチェロがデュオで美しい音楽を奏でるところでは感極まる思いです。そして、音楽はさらにヒートアップして、第5楽章の葬送行進曲の白熱の演奏で頂点を極めます。クァルテット・エクセルシオのここまで弾き込んだ成果が如実に現れて、ショスタコーヴィチの音楽の総決算のような果実があふれんばかりです。もう、これ以上の音楽は不要に思えますが、そのまま、第6楽章のエピローグに突入。これまでの音楽人生を振り返りつつも、奇っ怪なフレーズが出現します。ショスタコーヴィチは何を遺言に遺そうとしたのが、考え込みますが、それは暗黒のような謎です。決して死後の世界が明るいものであるとは思えなかったことだけは分かります。今、ロシアも世界も暗い現実に呑み込まれようとしています。
しかし、ショスタコーヴィチの将来への危惧を我々がそのままにしてはならないことは確かでしょう。クァルテット・エクセルシオの素晴らしい演奏は確実にショスタコーヴィチのメッセージを伝えてくれたような気がします。

我が日本のクァルテットがこれだけ精度の高いショスタコーヴィチのチクルスを展開してくれたのは、驚きであり、喜びでもあります。若手のクァルテットもこれに続いてほしいと思いました。


今日のプログラムは以下のとおりです。
  クァルテット・エクセルシオ
    西野ゆかvn  北見春菜vn  吉田有紀子va  大友肇vc  
    
  ピアノ:鈴木慎崇
  
  ラボ・エクセルシオ ショスタコーヴィチ・シリーズ#5
  
    
  ショスタコーヴィチ:未完の弦楽四重奏曲(アレグレット) 変ホ長調
  ショスタコーヴィチ:ピアノ五重奏曲 ト短調 Op.57
  
   《休憩》

  ショスタコーヴィチ:弦楽四重奏曲 第15番 変ホ短調 Op.144
   
     
最後に予習について、まとめておきます。

1曲目の未完の弦楽四重奏曲を予習したCDは以下です。

 ボロディン弦楽四重奏団 2015年12月 モスクワ セッション録音

初演したボロディン弦楽四重奏団の演奏です。見事な演奏です。


2曲目のピアノ五重奏曲を予習した演奏は以下です。

 スビャストラフ・リヒテル、ボロディン弦楽四重奏団 1983年12月5日 モスクワ ライヴ録音 映像(YouTube)
 アレクセイ・ヴォロディン、ボロディン弦楽四重奏団 2015年12月 モスクワ セッション録音
 
リヒテルのピアノによる演奏は音質は最低ながら、曲の本質を突く素晴らしい名演。
新しいボロディン弦楽四重奏団(ピアノ:ヴォロディン)は素晴らしい音質の切れ味鋭い演奏ですが、音楽としてはリヒテルと比べるものではありません。


3曲目の弦楽四重奏曲 第15番を予習したCDは以下です。

 ボロディン弦楽四重奏団 2017年2月 モスクワ セッション録音
 
ボロディン弦楽四重奏団の3回目の全集盤(1回目は第13番まで)。演奏は素晴らしいのですが、2回目のような迫真の音楽とまではいきません。



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