シューベルトの交響曲第7番《未完成》、自然体で深い味わいの名演 ベルナルト・ハイティンク&ベルリン・フィル@ベルリン・フィルハーモニー(配信) 2016年10月8日
明日、鈴木雅明指揮のバッハ・コレギウム・ジャパンでシューベルトの交響曲第7番《未完成》を聴くので、予習も兼ねて、聴くことにしました。
内田光子の語るところでは、この曲は死を間近にした指揮者が振ると名演になるのだそうです。
巨匠ベルナルト・ハイティンクはこの時、亡くなるまで、まだ、5年もあったので、それにはあたらないでしょうが、87歳という高齢だったので、あるいは基準にあてはまるのかもしれません。
ところで、saraiはこれまでハイティンクのシューベルトを聴いた覚えがありません。多分、これが初めての経験になります。なお、ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールには、このほか、交響曲第5番の演奏も残されています。《ザ・グレイト》の演奏が聴きたいものです。(ということで、saraiの未聴のCDライブラリを調べてみると、何と1975年録音のコンセルトヘボウ管弦楽団との《未完成》と《ザ・グレイト》が見つかりました!)
冒頭、コントラバスが極めて小さな音で奏されて、静かな開始。ハイティンクはいつものようにほとんど大きな動作はせずに自然体の演奏です。ポイントポイントでは、軽く指揮棒で指示して、鋭い視線を送ります。実に静寂な弱音を中心に味わい深いシューベルトの音楽を聴かせてくれます。弱音でもベルリン・フィルのアンサンブルは超絶的に揃っていることに驚愕します。ロマンというよりも暗い翳を帯びた悲哀を感じる音楽です。それだけにトゥッティで強く高潮するときは凄まじい響きを感じます。管のソロもホルンはシュテファン・ドール、フルートはエマニュエル・パユ、クラリネットはアンドレアス・オッテンザマー、オーボエはアルブレヒト・マイヤーという達人たちが素晴らしい演奏を聴かせてくれます。とりわけ、アルブレヒト・マイヤーのオーボエの味わい深い響きに魅了されます。第1楽章は提示部の繰り返しも入れて、ゆったりとした演奏を聴かせてくれました。ほぼ16分という長さは最長レベルでしょう。第2楽章は穏やかなアンダンテが情感豊かに、しかし、静謐に奏されて、悲哀に満ちた味わいがますます深くなります。コーダではそっとそっと静かに音楽を閉じます。ハイティンクのシューベルトは初めて聴きますが、感動するような素晴らしい演奏でした。ハイティンクがシューベルトを好んで取り上げなかったのが不思議です。シューベルト交響曲全集を録音していなかったのが残念です。
ハイティンクの描き出した未完成交響曲は決して未完成には感じない充足した音楽でした。
この日のプログラムは以下です。
2016年10月8日、ベルリン・フィルハーモニー
指揮:ベルナルト・ハイティンク
管弦楽:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
フランツ・シューベルト:交響曲第7番ロ短調 D 759《未完成》
なお、この日のコンサートでは、その他、以下の曲も演奏されました。(未聴)
グスタフ・マーラー:《大地の歌》
クリスティアン・エルスナー(テノール)
クリスティアン・ゲルハーヘル(バリトン)
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