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ロレンツォ・ヴィオッティ&東京交響楽団による覇気のあるベートーヴェン《英雄》とR.シュトラウス《英雄の生涯》は聴き応え十分@サントリーホール 2023.9.23

前半はベートーヴェンの交響曲 第3番 「英雄」。かなり、テンポの早いきびきびした演奏で勢いがあります。惜しむらくはアンサンブルがもう一つびしっと決まっていません。ただ、気持ちのよい演奏ではありました。

後半は超大編成のオーケストラがステージ狭しと並び、壮観です。対向配置で両翼のヴァイオリン奏者は16人。管楽器奏者はホルンの8人を始め、膨大な人数です。スコアの指定通りだとすると、総勢105名になります。

冒頭の英雄のテーマは低弦とホルンで颯爽と演奏されます。なかなか素晴らしい滑り出しです。このテーマは何度も繰り返されますが、聴くたびに心が高揚します。最初の《英雄》のセクションを聴いているだけで、この大編成の管弦楽のための凄い作品を書いたR.シュトラウスは創作力の頂点にあったことを思い知らされ、その天才の偉大さに深い感銘を覚えます。同時代の音楽家たちに凄い衝撃を与えたことが想像に難くありません。

次のセクションの《英雄の敵》では木管群が目覚ましい活躍を見せます。東響の木管がなかなか好調です。

次のセクションの《英雄の伴侶》では、グレブ・ニキティンの独奏ヴァイオリンが活躍。若干、気負いのせいか、響きが濁るところもありますが、好演です。その独奏ヴァイオリンとオーケストラが次第に高潮し、頂点を作り、英雄と伴侶の愛を歌い上げます。このあたりは壮大な演奏です。

舞台裏からトランペットが鳴り響き、《英雄の戦場》のセクションが開始されます。管弦楽が激しく鳴り響きながら、英雄と敵の戦が繰り広げられます。特に弦楽パートの響きが素晴らしいのですが、次第に一糸乱れずという感じではなくなるのも正直な感想です。ここまでの大編成になると、東響の正規メンバーだけでは不足して、相当のエキストラが加わり、ヴィオッティの指揮に即座に反応するのは困難でしょう。それでも十分に善戦しているとは思います。ヴィオラのがっがっという力強い響きには感銘を受けます。最後は英雄の勝利が華々しく歌い上げられます。壮大な管弦楽による絵巻です。R.シュトラウスの才能、ここに極まれりという感じです。

次のセクションの《英雄の業績》はこの作品以前にR.シュトラウスが書いた作品の断片が引用されて、英雄が自身の内面を回想するという雰囲気に変わっていきます。ヴィオッティはこの感傷的なシーンをうまく表現していきます。そして、そのまま、テンポを落として、最後のセクションに入っていきます。

最後は《英雄の隠遁と完成》では、描かれた音楽は諦念的とも思える雰囲気にあります。創作力の絶頂にあった筈のR.シュトラウスが人生の最後を見据えたような音楽を書いたことにいつも驚きを禁じ得ません。最後は伴侶(独奏ヴァイオリン)に優しく抱かれながら、英雄はその生涯を終えます。この最後のシーンをヴィオッティは見事に表現しきっていました。

今日の主役は交響曲 第3番 「英雄」で長大で大規模な音楽に発展的な転換を完成させたベートーヴェン、そして、その路線の超大規模な音楽の完成形、交響詩 「英雄の生涯」を創り上げたR.シュトラウスでしょう。
ヴィオッティと東響はその2つの巨大な音楽を我々に見事に提示してくれました。素晴らしいコンサートでした。


今日のプログラムは以下のとおりでした。

  指揮:ロレンツォ・ヴィオッティ
  管弦楽:東京交響楽団 コンサートマスター:グレブ・ニキティン

  ベートーヴェン:交響曲 第3番 変ホ長調 Op.55 「英雄」

  《休憩》
  
  R.シュトラウス:交響詩 「英雄の生涯」 Op.40


最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のベートーヴェンの交響曲 第3番 「英雄」を予習した演奏は以下です。

 ベルナルト・ハイティンク指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2012年10月6日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ映像(デジタル・コンサートホール)

ハイティンクの落ち着きのある指揮で重厚な演奏。


2曲目のR.シュトラウス:交響詩 「英雄の生涯」を予習した演奏は以下です。

  キリル・ペトレンコ指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団 2023年8月25日、ベルリン・フィルハーモニー ライヴ映像(デジタル・コンサートホール)

ベルリン・フィルのデジタル・コンサートホールの配信による今シーズンの開幕コンサートです。素晴らしい演奏でした。詳細は以下の記事に書きました。

  https://sarai2551.blog.fc2.com/blog-entry-4808.html



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