ピアノの鍵盤を凝視しながら弾くベンジャミン・グローヴナーの完成度の高いショパンとリストのピアノ・ソナタ@上大岡 ひまわりの郷 2023.9.24
冒頭、予定にないショパンの夜想曲第20番をサプライズのように弾き出して、その美しい響きにびっくりします。その後、予定の曲目の舟歌を弾きます。表情を変えずに一心に鍵盤を見ながらの演奏は実に真面目そうな演奏ですが、ちゃんと音楽の表情は表現出来ています。
そして、大曲、リストのピアノ・ソナタ ロ短調を弾き始めます。一切の虚飾を排した演奏ですが、それでいて、超絶技巧はきちんとこなしています。派手さもなく、ほとんど表情も変えないので、リストらしさがないようにも思えますが、見事な演奏ではあります。ビジュアル的には損しているような気もしますが、目をつむって聴くとちゃんとリストの巨大な音楽が流れてきます。とても素晴らしい演奏ですが、以前聴いた美貌のピアニストのエレーヌ・グリモーの喘ぐようなロマンティックな演奏に比べると、何かピアノ演奏以外の魅力が欠落しているような気もします。陶酔感がこの曲には必要な気もしますが、グローヴナーはあくまでもピアノ演奏のみに集中して、ピアノの響きだけで勝負しているんでしょう。それもこの曲のひとつの表現でしょう。ピアノ演奏としては完璧でした。
休憩後、リストの子守歌。予習した子守歌ではなかったので、まったくの初聴きです。素晴らしい響きの演奏でした。
最後はまた、大曲。ショパンのピアノ・ソナタ 第3番。これは妙な陶酔感は不要なので、鍵盤だけをじっと見つめながら、最高のピアノの響きを聴かせてくれるグローヴナーの演奏に聴き入って、とても満足できました。第1楽章の甘美な第2主題、第3楽章のノクターンのような魅力的な旋律に酔ってしまいそうになります。そして、第4楽章の情熱的な音楽の盛り上がりに感銘を受けます。
アンコールはてっきり、リストとショパンの有名曲を弾くと思っていたら、何やら知らない曲です。ヒナステラのアルゼンチン舞曲でした。アルゲリッチが同郷のヒナステラの曲をCDに収めていたので、以前聴いた筈ですが、すっかり忘れていました。お洒落な作品を素晴らしい演奏で聴かせてくれました。
2曲目も何か分かりませんでしたが、何とこれは有名なラヴェルの水の戯れ。これもアルゲリッチのCDでさんざん聴いた筈ですが、頭から抜け落ちています。グローヴナーの演奏は今日、最高の演奏でした。素晴らしいタッチで素晴らしい響き。これなら、今日のプログラムももっと多彩なものを弾いたほうがよかったのでは・・・。
明日の庄司紗矢香とのデュオが楽しみになりました。ドビュッシーのヴァイオリン・ソナタの演奏が素晴らしいものになりそうです。
今日のプログラムは以下です。
ピアノ:ベンジャミン・グローヴナー
ショパン:夜想曲第20番 嬰ハ短調 BI. 49「レント・コン・グラン・エスプレッシオーネ」(遺作)
ショパン:舟歌 嬰へ長調 Op.60
リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調 S.178
《休憩》
リスト:子守歌 S.174
ショパン:ピアノ・ソナタ 第3番 ロ短調 Op.58
《アンコール》
ヒナステラ:アルゼンチン舞曲集 Op.2~第2曲 粋な娘の踊り
ラヴェル:水の戯れ
最後に予習について、まとめておきます。
1曲目のショパンの夜想曲第20番は当日、急にプログラム追加になったため、予習していません。
2曲目のショパンの舟歌は以下のCDを聴きました。
イリーナ・メジューエワ 京都リサイタル2011 2011年7月24日、京都コンサートホール・小ホール(アンサンブルホールムラタ) ライヴ録音
今回はすべて、メジューエワの演奏で予習します。ライヴとは思えない質の高い演奏です。
3曲目のリストのピアノ・ソナタ ロ短調は以下のCDを聴きました。
イリーナ・メジューエワ 日本デビュー20周年記念リサイタル 2017~2018 2018年2月24日、東京文化会館・小ホール ライヴ録音
これは素晴らしい演奏です。このリサイタルを聴き逃がしたのが残念です。
4曲目のリストの子守歌は事前にどの子守歌かを公表されなかったので、誤って、S.198を聴きました。実際はS.174でした。
5曲目のショパンのピアノ・ソナタ 第3番は以下のCDを聴きました。
イリーナ・メジューエワ 日本デビュー20周年記念リサイタル 2017~2018 2017年11月18日、東京文化会館・小ホール ライヴ録音
これも素晴らしい演奏です。ショパンの真髄に迫るような演奏です。
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