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田部京子の弾くシューベルトの遺作ソナタ、19番、20番に深く感銘@浜離宮朝日ホール 2023.12.3

田部京子の全10回のシューベルト・プラス・シリーズに続いて、今年も年2回のペースでリサイタルがあります。今回はオール・シューベルト・プログラムで遺作のピアノ・ソナタ3曲のうち、2曲が聴ける嬉しい選曲です。いずれもシューベルト・プラス・シリーズに続いて、2回目の登場です。

前半は冒頭、シューベルトの即興曲 ハ短調 Op.90-1 D899-1が前奏曲のような形で演奏されます。10分ほどの短い曲ですが、憧れに満ちたロマンの香りがぎっしりと詰まっています。もう、これだけ聴いて、田部京子のシューベルト演奏の何たるかが分かります。格調の高い詩情を歌い上げた魂の音楽です。丁寧なアーティキュレーションで一音たりともないがせにしない作曲家に寄り添った演奏です。こんな素晴らしいシューベルト弾きが日本にいるのは奇跡としか思えません。

そして。いよいよ本番の遺作のピアノ・ソナタ。第19番 ハ短調 D958。のっけから、ベートーヴェンのハ短調を思わせる激しい打鍵です。しばらくすると、シューベルト本来の歌謡調の音楽になります。ともかく、完成度の高い作品を田部京子の美しい響きの音楽性の高い演奏で言うことがありません。ほのぼのとした詩情で憧れに満ちた音楽になっています。
第2楽章のアダージョは抒情に満ちて、しみじみとしています。こういう曲は田部京子がもっとも得意にするところです。うっとりと聴き入ります。
第3楽章のメヌエットはさらっと通り過ぎ、第4楽章のアレグロに入ります。ここでも詩情に満ちた音楽が展開されて、圧巻のフィナーレ。見事な演奏でした。


後半はやはり、遺作のピアノ・ソナタ。第20番 イ長調 D959。第21番と並ぶ傑作中の傑作。ベートーヴェンの後期ソナタと同じくらい、いや、それ以上に好きなピアノ曲です。
第1楽章の冒頭の動機はクレドのジャンジャンという2音。実に激しい冒頭の響きです。そして、第2楽章、アンダンティーノの寂しげで美しいメロディーが始まると、saraiの心は感極まります。中間部の凄まじい音響も恐ろしいほど素晴らしく、その後に美しいメロディーに戻ると心がとろけそうです。短い第3楽章のスケルツォを経て、終楽章に入ります。もう、これは言葉での表現ができそうにもありません。最高のシューベルトとしか、形容のしようがありません。終盤に入るころには田部京子のピアノの響きが美しく透明になり、まさに天国の調べを聴くか如くです。特に高域の音の魅力に満ちた美しさはピアノの究極の響きです。そうして、最終部に入っていきます。歩を止めるように、何度もパウゼを繰り返すところは、まるでシューベルトが美しいこの世から去り難く思っているような心情が見事に表現されています。聴いているsaraiが苦しくなってきます。そして、意を決したように圧巻のコーダで一気に最後まで駆け抜けていきます。まるでシューベルトとの別れを体験したような深い感動を覚えます。

アンコールはシューベルトの鉄板の作品、即興曲と楽興の時。これだけでもシューベルトの最高の音楽を体験できます。そして。最後の最後はやっぱりこれ、シューベルトの極め付きのアヴェ・マリアです。終わりに高域でアヴェ・マリアと歌った後、アーメンと終止します。田部京子の至芸です。

来年からはどうするのかと思っていたら、SINKA〈進化×深化×新化〉という新しいシリーズが始まります。テーマはよく分かりませんが、次回のコンサートのしめはシューマンの《ウィーンの謝肉祭の道化》。saraiが望んでいたシューマン・プラス・シリーズに近づいていきそうな気配です。田部京子がこれまで弾いてこなかったシューマンの作品が聴けそうな気配です。ノヴェレッテンとか森の情景とかが聴ければ嬉しいな。ブラームスも聴けるだけ聴きたいな。うきうき・・・。


今日のプログラムは以下です。

  田部京子ピアノ・リサイタル
   CDデビュー30周年×浜離宮リサイタル・シリーズ20周年記念 Part2

  ピアノ:田部京子
 
  シューベルト:即興曲 ハ短調 Op.90-1 D899-1

  シューベルト:ピアノソナタ 第19番 ハ短調 D958

  《休憩》

  シューベルト:ピアノソナタ 第20番 イ長調 D959

  《アンコール》
   シューベルト :即興曲 変ト長調 Op.90-3 D899-3
   シューベルト:楽興の時 第3番 ヘ短調 D780-3
   シューベルト(編曲:田部京子/吉松隆) :アヴェ・マリア 
   

最後に予習について、まとめておきます。

いずれも田部京子の演奏を聴きました。予習というよりも楽しみ半分です。
まず、シューベルトの即興曲 Op.90 D899は以下のCDを聴きました。

 田部京子 1997年10月7,9,10日 サラマンカ・ホール(岐阜) セッション録音
 

シューベルトのピアノソナタ 第19番は以下のCDを聴きました。

 田部京子 2000年11月14日~17日 愛知県豊田市コンサートホール セッション録音
 

後半のシューベルトのピアノソナタ 第20番は以下のCDを聴きました。

 田部京子 1997年10月7,9,10日 サラマンカ・ホール(岐阜) セッション録音

田部京子のシューベルトの一連の録音は伝説的とも言えますが、土の演奏もその中でもこれ以上の演奏はあるまいと思える傑出したものばかりです。



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ジャンル : 音楽

       田部京子,

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aokazuyaさん

コメントありがとうございます。デジタルコンサートホールは当面、これきりですが、毎週末、聴かれているんですね。ファゴットのシュテファン・シュヴァイゲ

03/03 23:32 sarai

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08/04 21:31 G線上のアリア

じじいさん、コメントありがとうございます。saraiです。
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07/08 15:53 じじい@

saraiです。
久々のコメント、ありがとうございます。
哀愁のヨーロッパ、懐かしく思い出してもらえたようで、記事の書き甲斐がありました。マイセンはやはりカップは高く

06/18 12:46 sarai
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