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バルトーク、武満徹、ベートーヴェン  山田和樹、最高の演奏! 読売日本交響楽団@サントリーホール 2024.2.9

今日はともかく、プログラムが素晴らしい。saraiが20世紀最高の音楽と認めたバルトークの弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽、そして、若きsaraiを魅了した武満徹のノヴェンバー・ステップス。とりわけ、武満徹のノヴェンバー・ステップスは実演で聴くのは初めてかもしれません。山田和樹はどんな音楽として聴かせてくれるんでしょう。ちなみにこの時点では最後に演奏されるベートーヴェンの交響曲第2番はノーマークでした。

まず、前半はバルトークの弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽です。実演で聴くのは3回目の筈です。以前も書きましたが、saraiの青春時代の思い出の詰まった曲です。
saraiが学生時代にLPレコードで初めて聴いて、大変な衝撃を受けた曲です。そのとき、バルトークの作品を聴いたのが初めてでしたが、それ以来、saraiにとって、バルトークは神のような存在になりました。その後、弦楽四重奏曲を聴いて、バルトークへの尊敬の念はさらに高まりました。西洋音楽はバッハからベートーヴェンを経て、20世紀はマーラーという高みを迎えましたが、孤高の天才バルトークによって、西洋音楽は未曽有の頂点に立つことができました。その記念碑的作品が《弦楽器と打楽器とチェレスタのための音楽》です。この作品は聴く者に大変な緊張感を与えずにはおかない音楽です。ある意味、音楽というジャンルを別次元の芸術に変容させたとも思えます。
今日の山田和樹と読響の演奏は真摯で誠実な演奏でした。正直、第1楽章の演奏はもっと厳しさを欲しいところでしたが、現代においては、これ以上の突っ込みは時代が与えてくれないのかもしれません。バルトークが作曲した当時の大戦前夜の限界状況はそのときでないと音楽として成立し得ないのかもしれません。山田和樹は無駄をそぎ落とし、弦楽による哀しさを湛えたオスティナートを静謐に表現していました。これで十分でしょう。音楽的頂点に達したときは背中がぞくぞくする思いに駆られました。
第2楽章は全楽章の主題をひきづりながら、強くうちかかってくるような勢いが圧巻です。暗い情念が支配的ですが、山田和樹がドライブする読響のアンサンブルの素晴らしいこと。
第3楽章は青ひげ公の城を想起させるような夜の音楽です。ここでも山田和樹の表現力の深さが見事です。
第4楽章は《中国の不思議な役人》を想起させる疾駆する音楽です。山田和樹、凄し!

後半、ステージからピアノが取り去られるだけで、左右に2群の弦楽器群が配置されたまま。うーん、同じような構成なんですね。
指揮者の前には、尺八の藤原道山と琵琶の友吉鶴心が鎮座しています。尺八は1尺8寸管ではなく、長い2尺4寸管。これでないとどすの効いた演奏が不可能です。昔は2尺4寸管は横山勝也の独壇場でしたが、尺八の第1人者と目される藤原道山がどこまで吹きこなすのでしょう。
演奏はまず、オーケストラパートから始まります。武満らしい音響空間が広がります。読響のアンサンブルは素晴らしいです。聴き惚れているうちに尺八と琵琶の独奏がはいってきます。尺八独特のむら息が炸裂します。琵琶の撥の音も凄まじく、2人の掛け合いで強烈な自我がこの場を支配していきます。オーケストラが創り出す西欧的な音響の場のなかに和楽器の表現する、融合することのない2つの実存が雄たけびをあげているようです。とりわけ、尺八のむら息の激しさとすすり泣くようなビブラートが特別な存在感を放ちます。ときおり、オーケストラと和楽器は融合しかかりますが、結局は別次元を生きる者同士。それぞれの領域を生きていきます。ベルクのヴァイオリン協奏曲は最後は高次元で融合しますが、武満のこの作品はそういう救済はなく、といって、悲惨な結末でもなく、それぞれ、強く生き抜くというメッセージが残ったように思えます。藤原道山の見事な演奏がとても印象的。記憶に残る横山勝也の演奏にも並ぶものです。
実はこの曲が初演されたとき、saraiは高校生。多感だった心に強い衝撃を受けました。それが忘れられず、大学では尺八のクラブに入ってしまいました。無論、そんなに腕は上がらずにこのノヴェンバー・ステップスは吹けませんでした。難曲ですからね。その代わり、クラブの活動のなかで知り合ったのが今の配偶者です。このノヴェンバー・ステップスなくして、saraiの今の人生はなかったんです。半世紀ぶりにこのノヴェンバー・ステップスに回帰して、感慨しきり。山田和樹始め、演奏者のみなさん、ありがとう。

最後はえらく普通の曲、ベートーヴェンの交響曲第2番。普通の筈でしたが、山田和樹は前2曲と同様に左右にオーケストラ群を分けた配置にして、特別バージョンのベートーヴェンです。もう、詳細に書く時間がありませんが、実に多彩、そして、豊満の響きの演奏が展開されました。読響のアンサンブルの鉄壁さにも感銘を受けます。何よりも山田和樹の音楽的な才能の豊かさに驚嘆するのみでした。地味な存在の第2番を光り輝かせました。


今日のプログラムは以下です。

  指揮:山田和樹
  尺八:藤原道山
  琵琶:友吉鶴心
  管弦楽:読売日本交響楽団  コンサートマスター:林悠介

  バルトーク:弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽 BB 114

   《休憩》

  武満徹:ノヴェンバー・ステップス
  ベートーヴェン:交響曲第2番 ニ長調 Op.36
  

最後に予習について、まとめておきます。

1曲目のバルトークの弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽は以下の演奏を聴きました。

 フリッツ・ライナー指揮シカゴ交響楽団 1958年12月28-29日 セッション録音
 
本命中の本命の演奏です。saraiは学生時代にこのレコードを聴いて、バルトークにはまりました。
ハイレゾの優秀録音で聴けます。


2曲目の武満徹のノヴェンバー・ステップスは以下の演奏を聴きました。

 横山勝也(尺八)、鶴田錦史(琵琶)、小澤征爾指揮サイトウ・キネン・オーケストラ 1989年9月15日 ベルリン,イエス・キリスト教会 セッション録音
 
指揮の小澤征爾、尺八の横山勝也、薩摩琵琶の鶴田錦史は初演のメンバーで、日本を代表するサイトウ・キネン・オーケストラがヨーロッパ公演の際、ベルリンで録音したこの演奏は決定盤とも思える内容です。くしくも今日、小澤征爾の訃報を聞きました。


3曲目のベートーヴェンの交響曲第2番は以下の演奏を聴きました。

 ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団 1964年 クリーヴランド、セヴェランス・ホール セッション録音

ジョージ・セル指揮クリーヴランド管弦楽団はここでも引き締まった鉄壁のアンサンブルを聴かせてくれます。



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最後までレビューありがとうございます。最後は時間の都合がつかず視聴できず、非常に残念でした。

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michelangeloさん

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03/29 21:28 michelangelo

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