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ルドルフ・ブッフビンダーのベートーヴェン ピアノ・ソナタ 全曲演奏会3回目 ブッフビンダーは絶好調!@東京文化会館小ホール 2024.3.17

ウィーンの巨匠ルドルフ・ブッフビンダーのベートーヴェン ピアノ・ソナタ 全曲演奏会、今日は全7回のうち、3回目です。

前回までは1回目から2回目に目を瞠るようなジャンプアップした演奏に驚嘆しましたが、今回は曲目がさらに後期寄りになったこともあり、ブッフビンダーの真の実力を堪能することのできる演奏が繰り広げられました。ブッフビンダーは本当にベートーヴェンを弾かせると非の打ちどころのないような音楽を聴かせてくれます。まず、指回りの確かさでかなりの高速演奏を聴かせてくれます。そして、何と言ってもピアノの響きの美しさが例えようもないものです。とりわけ、右手の奏でる高音域の響きの美しさと言ったら、ただ魅了されるだけです。無論、ベートーヴェンの音楽表現は曲目が後期寄りになるほど、その素晴らしさが実感できます。壮麗さや深い音楽表現など、ただ、納得して聴き入るばかりです。


最初は第3番のソナタです。初期のソナタですが、若きベートーヴェンの意欲に満ちた意思の力が充満する作品です。ブッフビンダーは鍵盤を上行、下行の音階で駆け巡りながら、ピアノ・ソナタとしては実に壮麗な音楽を築き上げます。ヴィルトゥオーゾ的ですが、品位を保ちながら、弾いていきます。華麗とも言える第1楽章に続き、第2楽章は優美なアダージオが響きます。諧謔的なスケルツォの第3楽章を経て、第4楽章は華やかに展開していき、ブッフビンダーの見事な技巧に魅了されつつ、堂々たるコーダで曲を締めくくります。初期とは思えない素晴らしい音楽を味わわせてくれました。

次は第19番のソナタです。番号は出版順に付けられたもので、実際に作曲されたのは、今演奏された第3番のソナタの後で、第20番とともにやさしいソナタとタイトルが与えられています。2楽章構成の短い作品ですが、中身は濃いものです。第1楽章はト短調の少し翳のある主題で始まり、格調の高い音楽になっています。ブッフビンダーは深さのある音楽表現で魅了してくれます。第2楽章は一転して、スタッカートの付けられた元気のよい音楽が展開され、爽やかに音楽が駆け抜けます。

前半最後は第26番《告別》です。中期の終わりの有名な作品です。冒頭の動機の3音Lebewohl(さようなら)が磨き抜かれた美しい音で奏でられます。この動機は以後、様々な作曲家が引用することになります。特にマーラーが交響曲第9番や大地の歌でこの世に別れを告げる音楽に引用しています。saraiはこの動機を聴くと様々な思いが脳裏に交錯します。
第1楽章の序奏の後、主部に入って、高邁な思想のような演奏になります。第2楽章は深い味わいの歌、後期ソナタのアリエッタにそのまま続いていくような錯覚を覚えます。もう中期の終盤で後期に足を踏み入れたような音楽です。そして、第3楽章は喜びにあふれた明るい音楽が横溢します。こういう有名な作品もブッフビンダーは格調高く演奏してくれます。


休憩後、後半は第7番のソナタです。初期のソナタですが、先ほどの第3番のソナタと同様に大きな構成の作品です。たっぷりした聴き応え。特に第2楽章のメストと題された哀し気な音楽はベートーヴェンの中でも稀有なもので、ある意味、後期ソナタに続くものかもしれません。その哀感を中心に癒しや憂鬱さの音楽が第4楽章まで続く印象深いものです。ブッフビンダーの音楽表現が深さを増します。

最後は第28番。中期の最後の作品で、もう、ほとんど、後期ソナタに足がかかっています。第1楽章は歌謡性のある音楽が優美に優しく響きます。第2楽章は付点のリズムのついた行進曲風の勢いのある音楽です。シューマンを予感させる音楽と言われていますが、なるほどね。第3楽章は寂漠としたゆったりとした音楽が序奏のように続き、第1楽章の主題が回想された後、主部とも言える溌剌とした音楽が展開されます。そして、対位法的な音楽が始まりますが、純然たるフーガではないそうです。ただ、素人の耳には後期ソナタのフーガを先取りしたもののように聴こえます。実に壮麗な音楽です。最後はいったん静まった後、強烈なフォルティシモで全曲を締めくくります。ブッフビンダーの渾身の演奏でした。

アンコールは何と悲愴ソナタ。見事な演奏でした。本編での演奏が楽しみです。


明後日は、《ハンマークラヴィーア》が最後に演奏されます。ブッフビンダーの渾身の演奏が聴けるでしょう。


今日のプログラムは以下です。


 ルドルフ・ブッフビンダー ベートーヴェン ピアノ・ソナタ 全曲演奏会 III

  ピアノ:ルドルフ・ブッフビンダー
  
 ベートーヴェン:ピアノソナタ

  第3番 ハ長調 op.2-3
  第19番 ト短調 op.49-1
  第26番 変ホ長調 op.81a《告別》

   《休憩》

  第7番 ニ長調 op.10-3
  第28番 イ長調 op.101

   《アンコール》
   ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 op.13《悲愴》 より 第3楽章 Rondo: Allegro


最後に予習について、まとめておきます。

すべて、ブッフビンダーとメジューエワの以下のベートーヴェン・ピアノ・ソナタ全集を聴きました。

 ルドルフ・ブッフビンダー ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ全集 2014年8月 ザルツブルク音楽祭 ライヴ録音

ウィーンの巨匠ブッフビンダー3回目のピアノ・ソナタ全集はザルツブルク音楽祭のライヴ録音です。ともかく、高音域の美しい響きに感銘を覚えました。そして、ベートーヴェンが初期から中期にかけて、音楽的に上り詰めていく様が見事に表現されています。後期は別世界です。

 イリーナ・メジューエワ ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ全集 2020年6月~7月、新川文化ホール(富山県魚津市) セッション録音

メジューエワの2回目のピアノ・ソナタ全集はコロナ禍の際に録音されました。予定していたチクルスが中止になったのを機に録音したものです。メジューエワらしい力強いタッチの演奏。まったく隙のない演奏です。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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ブッフビンダーの音色は本当に美しいですね。このライブストリーミングは爪が鍵盤に当たる音まで捉えていて驚きました。会場ではどうでしょうか?

実は初めて聴いたのはブラームスなのですが、ハッとさせられてそれからベートーヴェンやモーツァルトを聴きました。

またブログ楽しみにしております😊

No title

《あ》さん、再度のコメント、ありがとうございます。

ブッフビンダーの音色、特に中音域から高音域にかけての音色は会場でもでも一際、印象的です。さすがに爪が当たる音は分かりませんけどね。ブッフビンダーのベートーヴェンの演奏の核を支えているのはこの音色の美しさだと思っています。ほかの作曲家でも有効でしょうが、とりわけ、ベートーヴェンでは、この音色の美しさが光っています。

ブログの記事もあと3回。ますます、素晴らしい演奏のレポートが書けるでしょう。よろしくお願いします。
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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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最後までレビューありがとうございます。最後は時間の都合がつかず視聴できず、非常に残念でした。

アンコールも含め好評のレビューを見てますます残念ですが、お陰様でど

04/02 12:33 

michelangeloさん

saraiです。大変、ご無沙汰しています。
このたびは過分なご評価いただき、恐縮しています。

よいコンサート、オペラを聴くと、興奮して、記事を書き過

03/31 01:42 sarai

sarai様

こんばんは。

3月に8回も《トリスタンとイゾルデ》公演が開催される東京は音楽都市です。再び御感想を拝読し、改めて感じるのはsarai様のクラシック音楽オペラ公

03/29 21:28 michelangelo

《あ》さん、saraiです。

結局、最後まで、ご一緒にブッフビンダーのベートーヴェンのソナタ全曲をお付き合い願ったようですね。
こうしてみると、やはり、ベートーヴェン

03/22 04:27 sarai

昨日は祝日でゆっくりオンライン視聴できました。

全盛期から技術的衰えはあると思いましたが、彼のベートーヴェンは何故こう素晴らしいのか…高齢のピアニストとは思えな

03/21 08:03 

《あ》さん、再度のコメント、ありがとうございます。

ブッフビンダーの音色、特に中音域から高音域にかけての音色は会場でもでも一際、印象的です。さすがに爪が当たる音

03/21 00:27 sarai

ブッフビンダーの音色は本当に美しいですね。このライブストリーミングは爪が鍵盤に当たる音まで捉えていて驚きました。会場ではどうでしょうか?

実は初めて聴いたのはブ

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