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ワーグナー《トリスタンとイゾルデ》第2章 至上の愛と憧れに再び感動!@東京文化会館大ホール 2024.3.27

ワーグナーの長大な楽劇《トリスタンとイゾルデ》を2週間も置かずに再び鑑賞。前回は新国立劇場で鑑賞し、その後、ブッフビンダーのベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏会全7回を聴き、再び、ここ東京文化会館の東京・春・音楽祭での公演を鑑賞しました。ベートーヴェンも凄いし、ワーグナーも凄い! そう言えば、ワーグナーが最高に敬愛した作曲家はベートーヴェンでしたね。ワーグナーの聖地バイロイト祝祭劇場でワーグナー作品以外で唯一上演が認められているのはベートーヴェンの交響曲第9番《合唱付き》ですね。あ、脱線しました・・・。

今日も午後3時から始まった楽劇《トリスタンとイゾルデ》が終わったのは午後8時でした。時間的には長いですが、その音楽に聴き入っていると、長さをものともしない充実した内容に終止、魅了されました。楽劇《トリスタンとイゾルデ》を鑑賞するのはこれが6回目。この大傑作を生涯でたった6回しか鑑賞していないことは忸怩たる思いがあります。でも、モーツァルトのオペラ《フィガロの結婚》ですら、11回しか聴いていないことを考えれば、十分なのかな。プッチーニのオペラ《ラ・ボエーム》に至ってはたった7回ですからね。ともあれ、バイロイト音楽祭で聴いた楽劇《トリスタンとイゾルデ》にも匹敵する内容の素晴らしい演奏に感動し、ウルウルでした。

冒頭の前奏曲、最初のトリスタン和音のあたりはさらっとしたものでしたが、前奏曲終盤の盛り上がりは鳥肌のたつような凄い演奏。ヤノフスキ指揮のN響、やりますね。弦と木管の美しさは素晴らし過ぎます。ヤノフスキが凄いのか、コンマス席にメトのベンジャミン・ボウマンが座ったN響の出来がよいのかは分かりません。ともかく、この後もずっと素晴らしい演奏で、ワーグナーの素晴らしさを満喫させてくれました。前回の新国の都響も素晴らしい演奏でしたし、日本のオーケストラのワーグナー演奏のレベルの高さに驚愕する思いです。
前奏曲が終わり、イゾルデとブランゲーネが登場します。イゾルデ役のビルギッテ・クリステンセンの歌唱に耳を奪われます。こんなところでの歌唱に魅了されたのは初めてです。低域の声もしっかり出ていて、何と言っても高域の輝かしい声は絶品! それにイゾルデ姫としての気品と気高さ、気の強さが見事に表現されています。そのまま第1幕の終幕、愛の媚薬の盃を飲み干すシーンに入り、イゾルデとトリスタンの恋愛に落ちるところはオーケストラ演奏も二人の歌唱も圧倒的です。ビルギッテ・クリステンセンとヘルデンテノールのスチュアート・スケルトンの輝かしい高音に聴き惚れてしまいます。そして、何と言ってもワーグナーの音楽の素晴らしさが光り輝きます。天才ワーグナーをもってしても一生に一回しか書けなかったような超絶的な音楽です。その真髄がようやく分かりかけてきました。それに音楽評論家の船木篤也氏による字幕の見事さ。こういうしっかりした字幕だと、難解なワーグナーの台本も読み解けそうです。もろもろあって、大感動の第1幕でした。あっ、書き忘れましたが、オーケストラ後方に陣取った男声合唱の怒涛のような凄い合唱も大迫力でした。

30分の休憩後、第2幕が始まります。コンサート形式ですから、幕は上がりませんけどね。まずは素晴らしい前奏曲に耳を傾けます。
そして、長大なトリスタンとイゾルデの愛と官能の2重唱が始まります。ワーグナーならではの愛の2重唱、ビルギッテ・クリステンセンとスチュアート・スケルトンの素晴らしい歌唱力で場を圧倒します。これこそ、楽劇《トリスタンとイゾルデ》の最高の聴きどころです。昼の光りや夜がどうかというような理屈をこね回すワーグナー流のセリフがありますが、次第に愛至上主義、そして、その果ての死に行き着く不穏とも言える2重唱は実に現代的、実存的なものに昇華していきます。聴いているほうもおかしくなっていきそうです。聴衆のみなさんが静かに聴いていられるのが不思議なくらいです。ここでも船木篤也氏による字幕の見事さが光ります。芸術家の心中事件はこういう意識の高まりから起こるかなとも、いらぬ連想を抱きます。
ブランゲーネの「見張りの歌」が2階の聴衆席後方から響いてきます。ブランゲーネ役のルクサンドラ・ドノーセが素晴らしい歌唱を聴かせます。立体的な響きが素晴らしいです。
そして、二人の蜜月は不意に終わります。裏切者メロートとマルケ王が踏み込んでくるんです。物語とは言え、実に残念。愛が成就して、死に至れば、どんなにいいかと思ってしまうからです。それに愛の2重唱はまだまだ続いて欲しいんです。
マルケ王役のフランツ=ヨゼフ・ゼーリヒが悲嘆にくれた歌唱を見事に歌い切ります。もっとも、あまりに常識的な内容は笑止千万とも思えます。あえて、ワーグナーはそのあたりを狙っているんでしょう。大芸術家ワーグナーはあくまでもトリスタンとイゾルデの現世を超越した愛と死のみを唯一の至上主義としています。ですから、トリスタンはマルケ王のあまりの現世的な問いに答えずに、イゾルデに死の国までも一緒についてきてくれるかとマルケ王を無視して問いかけます。イゾルデのどこまでもトリスタンに従いますという歌唱は実に感動的。これぞ芸術でしょう! イゾルデの優しさが全開します。これでトリスタンも救われます。聴いているsaraiも現世を離れ、芸術の中に身を置いて、ともにイゾルデの優しさに救われます。もう、このあたりはマーラーの音楽に直結しています。音楽のみがなしえる愛と死の昇華。ああ、何でもいいから、この素晴らしい音楽をいつまでも聴かせてと欲するばかりです。
こんな音楽を一般大衆に聴かせていいのかとも思ってしまう、現実超越の愛と死のしびれるような官能芸術に溺れてしまった第2幕でした。

また、30分の休憩後、第3幕が始まります。低弦が暗く響く前奏曲は最後、イングリッシュ・ホルン独奏による「嘆きの調べ」が長く続き、もう、ここは現世ではなく、黄泉の国かと思わせられます。
トリスタンは深手を負い、恍惚としながらの歌唱を聴かせて、イゾルデに再会した途端に息を引き取ります。スチュアート・スケルトンのヘルデンテノールとしての素晴らしい歌唱に深く魅了されます。
最後はイゾルデの有名な《愛の死》。ビルギッテ・クリステンセンの優しい歌声に癒されながら、幕。

書き洩らしたところは、クルヴェナール役のマルクス・アイヒェの素晴らしく響く声。さすがにウィーン国立歌劇場で活躍してきたバリトンです。第3幕での歌唱は見事でした。
メロート役に甲斐栄次郎を起用するほど、歌手陣が充実していました。

まあ、素晴らしかったのは重ねて言いますが、ビルギッテ・クリステンセン。声も素晴らしいですが、強い表現から柔らかい表現まで、イゾルデ役に必要な要素を備えており、その気品があり、美しい歌唱は素晴らしいものでした。次第にイゾルデと像が重なり、絶世の美女に思えてくるほどでした。真っ白な衣装が眩しく映りました。

最後にマレク・ヤノフスキの指揮、最高でした。これぞ、現代の楽劇《トリスタンとイゾルデ》。

2週間で2回聴く楽劇《トリスタンとイゾルデ》を満喫しました。


今日のキャストは以下です。

  リヒャルト・ワーグナー
   トリスタンとイゾルデ
    全3幕 演奏会形式

  指揮:マレク・ヤノフスキ
  トリスタン(テノール):スチュアート・スケルトン
  マルケ王(バス):フランツ=ヨゼフ・ゼーリヒ
  イゾルデ(ソプラノ):ビルギッテ・クリステンセン
  クルヴェナール(バリトン):マルクス・アイヒェ
  メロート(バリトン):甲斐栄次郎
  ブランゲーネ(メゾ・ソプラノ):ルクサンドラ・ドノーセ
  牧童(テノール):大槻孝志
  舵取り(バリトン):高橋洋介
  若い水夫の声(テノール):金山京介
  管弦楽:NHK交響楽団(ゲストコンサートマスター:ベンジャミン・ボウマン(MET管コンマス)、(ダブルコンマス隣席:郷古廉))
  合唱:東京オペラシンガーズ
  合唱指揮:エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩
  音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
  

最後に予習について、まとめておきます。

 ・ワーグナー:楽劇『トリスタンとイゾルデ』全曲
 
 イゾルデ:キルステン・フラグスタート
 トリスタン:ルートヴィッヒ・ズートハウス
 ブランゲーネ:ブランシュ・シーボム
 マルケ王:ヨーゼフ・グラインドル
 クルヴェナール:ディートリッヒ・フィッシャー・ディースカウ
 メロート:エドガー・エヴァンス
 牧童:ルドルフ・ショック
 水夫:ルドルフ・ショック
 舵手:ローデリック・デイヴィーズ
 コヴェントガーデン王立歌劇場合唱団(合唱指揮:ダグラス・ロビンソン)
 フィルハーモニア管弦楽団
 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(指揮)

 録音:1952年6月10-21日、23日、ロンドン、キングズウェイ・ホール(モノラル)
  
フルトヴェングラー、畢生の名演。深く感動しました。何回も聴いていますけどね。



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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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ご無沙汰しております。

sarai様

こんばんは。

3月に8回も《トリスタンとイゾルデ》公演が開催される東京は音楽都市です。再び御感想を拝読し、改めて感じるのはsarai様のクラシック音楽オペラ公演に対する大きな愛です。書き手の心が伝わる文章は、読み手の胸に響きます。

それから、作品名にドイツ式《》二重山括弧の御使用とは流石です。私はタイトルだけ«作品名»にしますが、感想記事は日本式に『作品名』にしてしまう癖があります。また、「このあたりはマーラーの音楽に直結しています」と言う御言葉にハッとしました。マーラー初心者なので、少しずつ勉強しています。明日は、マーラー«第8番»CD商品が届きます。

スチュアート・スケルトン氏はサイモン・ラトル氏と共演した映像を視聴すると、テキストに演技力に素晴らしいです。トリスタン役を務め主要ワーグナー・テノール制覇となったクラウス・フロリアン・フォークト氏は、今年1月の第3幕にて僅かな歌詞の間違いが散見されました。同じくカミラ・ニュルンド氏も瞬時に作詞して沈黙を乗り切りましたが、それは如何に難解な作品かを物語っています。

長くなり申し訳ございません。最後に、新国立劇場«トリスタン»に続き、ルドルフ・ブッフビンダー氏の全曲演奏会制覇、そして春音楽祭«トリスタン»を鑑賞されるとは大変驚きました。ヨーロッパを何十年も旅されたsarai様らしい音楽の旅ですね。

コメントありがとうございます

michelangeloさん

saraiです。大変、ご無沙汰しています。
このたびは過分なご評価いただき、恐縮しています。

よいコンサート、オペラを聴くと、興奮して、記事を書き過ぎてしまいます。いくつになっても音楽を聴いていると若い時と同じです。シューマンが永遠に青年だったのがよく理解できます。
michelangeloさんもバイロイトでティーレマンのトリスタンを聴かれましたが、やはり、トリスタンは途轍もない芸術であることがようやく、この歳になって分かってきました。やはり、長生きしないと音楽が理解できません。
michelangeloさんも健康にお過ごしになって、高齢になって聴く音楽の味わいに浸かってください。

また、コンサート会場でお会いしましょう。ありがとうございました。
命尽きるまで音楽の旅は続きますよ。
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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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最後までレビューありがとうございます。最後は時間の都合がつかず視聴できず、非常に残念でした。

アンコールも含め好評のレビューを見てますます残念ですが、お陰様でど

04/02 12:33 

michelangeloさん

saraiです。大変、ご無沙汰しています。
このたびは過分なご評価いただき、恐縮しています。

よいコンサート、オペラを聴くと、興奮して、記事を書き過

03/31 01:42 sarai

sarai様

こんばんは。

3月に8回も《トリスタンとイゾルデ》公演が開催される東京は音楽都市です。再び御感想を拝読し、改めて感じるのはsarai様のクラシック音楽オペラ公

03/29 21:28 michelangelo

《あ》さん、saraiです。

結局、最後まで、ご一緒にブッフビンダーのベートーヴェンのソナタ全曲をお付き合い願ったようですね。
こうしてみると、やはり、ベートーヴェン

03/22 04:27 sarai

昨日は祝日でゆっくりオンライン視聴できました。

全盛期から技術的衰えはあると思いましたが、彼のベートーヴェンは何故こう素晴らしいのか…高齢のピアニストとは思えな

03/21 08:03 

《あ》さん、再度のコメント、ありがとうございます。

ブッフビンダーの音色、特に中音域から高音域にかけての音色は会場でもでも一際、印象的です。さすがに爪が当たる音

03/21 00:27 sarai

ブッフビンダーの音色は本当に美しいですね。このライブストリーミングは爪が鍵盤に当たる音まで捉えていて驚きました。会場ではどうでしょうか?

実は初めて聴いたのはブ

03/19 08:00 
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