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聖金曜日に聴くマタイ受難曲は新鮮な歓びで最高! 鈴木優人指揮バッハ・コレギウム・ジャパン@東京オペラシティコンサートホール 2024.3.29

2018年以来、聖金曜日(復活祭の2日前の金曜日)にバッハ・コレギウム・ジャパンのマタイ受難曲を聴くのが習いになりました。この素晴らしいマタイ受難曲が極東の日本で聴けるのは幸せです。このマタイ受難曲を聴くたびにバッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)が日本にある幸せを噛みしめています。
saraiは生きているうちは毎年聴き続けるつもりです。その聖金曜日だけは俄かですが、クリスチャンでいましょう。あと5回ほどは聴けるでしょうか。

今日は何と指揮は鈴木雅明ではなく、鈴木優人。どんなマタイになるかと思いましたが、父親のマタイとは、まったく違うマタイを聴かせてくれました。表現・解釈は違っても演奏するのはBCJですから、やはり、途轍もなく素晴らしいマタイを聴かせてくれました。

冒頭の第1曲から、鈴木優人はとても遅い入りでびっくりです。最近の鈴木雅明はロマン的な表現が目立つようになりましたが、テンポは早いものでした。ともあれ、じっくりと管弦楽と合唱を聴かせてくれて、新鮮な気持ちでこの長大な作品に集中できます。
マタイ受難曲では、BCJの美しいコラールを聴くのが一番の楽しみです。心が癒される思いというか、1年間、汚れた魂がコラールを聴くことで浄化されます。今日のコラールは強い歌唱で、癒されるというよりも励まされるという感じです。しかし、後半になるといつものコラールになってきて、最後は癒され、魂が浄化されました。
こういう風に鈴木優人は彼なりの表現を聴かせてくれましたが、高い緊張感を保った演奏が最後まで続き、saraiも集中を切らさずに(寝落ちせずにw)、マタイ受難曲が持つ己の罪と向き合う時間をたっぷりと持つことができました。そうなんです。罪深い存在である自分の反省、そして、そんな自分でも優しくコラールが包み込んでくれるという得難い時間を過ごすことができました。バッハの作り出した音楽の中でも特別なもの、マタイ受難曲はヨーロッパ文明が作り出した最高の芸術です。その特別な音楽を余すところなく、鈴木優人とBCJ、素晴らしい歌手たちが奇跡のように演奏してくれました。

計5回演奏された受難のコラールが今日の演奏でも軸になりました。イエスが亡くなる前の4回目の受難のコラール(第54曲)は第1節と第2節が続きますが、音量を弱めた第2節の美しさは例えようもありません。BCJの最高の合唱です。そして、イエスが亡くなった後の5回目の受難のコラール(第62曲)はコラール「いつの日かわれ去り逝くとき」です。このフリギア旋法で歌われるコラールは弔いの歌にしか聴こえません。死すべき運命にあるすべての人々に優しく救いをもたらすようにしみじみと歌われます。頭を垂れて、目を閉じて、じっと聴き入りました。これもBCJの最高の音楽です。これを聴ければ、また、来年まで、心穏やかに生きていけるような気がします。

最高の名曲、第39曲の《エルバルメ・ディッヒErbarme dich、マイン・ゴットMein Gott(憐れみたまえ、我が神よ)》のアリアでは、寺神戸亮のオブリガートヴァイオリンの名演も相俟って、異次元のような音楽が成立します。カウンターテノールのアレクサンダー・チャンスがCT特有の澄み切った声で優しく歌います。saraiにとって、この曲だけは1958年録音のカール・リヒター盤のアルト歌手、ヘルタ・テッパー以上の歌唱はなかったのですが、今日のアレクサンダー・チャンスの歌唱はまた違った形で感動の歌唱を聴かせてくれます。

第49曲のソプラノのアリアも圧巻でした。菅きよみのフラウト・トラヴェルソのソロが主導して、アウス・リーベAus Liebe、ヴィル・マイン・ハイラント・シュテルベンWill Mein Heiland Sterben(愛故にわが救い主は死にたまわんとす)とソプラノのハナ・ブラシコヴァが澄み切った歌声で歌います。あえて、ステージの奥でひっそりと歌っていたのが印象的です。終盤に「アウス・リーベAus Liebe」(愛故に)が幾度も繰り返されるところの清澄さには胸を打たれました。菅きよみのフラウト・トラヴェルソの朴訥とした響きも心に響きました。

こう書いているときりがありません。すべての曲が素晴らしかったんです。1曲たりとも不足を感じた曲はありませんでした。

BCJの管弦楽も達人揃いで凄い演奏を聴かせてくれました。フラウト・トラヴェルソの菅きよみ、オーボエの三宮正満、ヴァイオリンの寺神戸亮、若松夏美、チェロの山本徹など、凄過ぎる演奏でした。

独唱者は、エヴァンゲリストのベンヤミン・ブルンスが出色の歌唱。少し奥に引っ込んで歌っていましたが、その張りのある声はどこまでも響きます。表現も練りに練った凄い歌唱。こんなエヴァンゲリストは聴いたことがありません。
松井亜希と櫻田 亮の新機軸のような歌唱にも感銘を覚えました。久保法之と加耒 徹も流石の歌唱。
ソプラノのハナ・ブラシコヴァ、アルトのアレクサンダー・チャンスは世界最高級の歌唱で言うことなし。

無論、主役はBCJの合唱隊。何という美しい合唱を聴かせてくれるんでしょう。

鈴木優人の指揮は素晴らしかったのですが、また、来年は鈴木雅明の登場をお願いしますね。


今日のプログラムは以下です。


  指揮、チェンバロ:鈴木優人
  エヴァンゲリスト:ベンヤミン・ブルンス
  ソプラノ:ハナ・ブラシコヴァ、松井亜希
  アルト:アレクサンダー・チャンス、久保法之
  テノール:ベンヤミン・ブルンス、櫻田 亮
  バス:加耒 徹(イエス)、マティアス・ヘルム(ピラト)
  合唱:バッハ・コレギウム・ジャパン
  管弦楽:バッハ・コレギウム・ジャパン コンサートマスター:寺神戸亮、若松夏美
   フラウト・トラヴェルソ、リコーダー:菅きよみ、前田りり子  
   オーボエ、オーボエ・ダモーレ、オーボエ・ダ・カッチャ:三宮正満、荒井豪 
   チェロ:山本徹、上村文乃
   オルガン:大塚直哉
   ヴィオラ・ダ・ガンバ:福澤宏


  J. S. バッハ:《マタイ受難曲》BWV 244 第1部

 《休憩》

  J. S. バッハ:《マタイ受難曲》BWV 244 第2部



最後に予習について、まとめておきます。

 カール・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管弦楽団&合唱団
  エルンスト・ヘフリガー(エヴァンゲリスト)
  キート・エンゲン(イエス)
  イルムガルト・ゼーフリート(ソプラノ)
  ヘルタ・テッパー(アルト)
  ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
  ミュンヘン少年合唱団
      1958年6~8月 セッション録音

原点に戻るつもりで、この決定盤といえる演奏を久しぶりに聴きました。やはり、美しい演奏です。それに歌手が凄い!



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       バッハ・コレギウム・ジャパン,

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最後までレビューありがとうございます。最後は時間の都合がつかず視聴できず、非常に残念でした。

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