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エレーヌ・グリモー・ピアノ・リサイタル@神奈川県立音楽堂 2011.1.15

いやあ、やっぱり、音楽って生で聴いてみないと分かりませんね。

今日は美貌のピアニストのエレーヌ・グリモーのピアノ・リサイタルを聴きました。
そんなに積極的に聴きに行くつもりはありませんでしたが、たまたま横浜でもリサイタルをやるということを知り、ふらふらっとチケットを買ってしまいました。
ホールが神奈川県立音楽堂ということでそんなに大きなホールでないので聴きやすいかなっと思ったこともチケットを購入した一因です。
が、既にチケットの販売は始まっていたのでそんなに良い席は残っていなくて、13列目の中央から外れた席でした。
積極的に購入しなかった理由はsaraiの偏見にあります。《美貌》のピアニストってことできっと音楽はそれほどのものではないだろうということです。もちろん、CDでもテレビでも聴いたことがありますが、それほど強いインパクトは受けませんでした。ところが・・・・

神奈川県立音楽堂は横浜みなとみらい地区・桜木町から紅葉坂という急な坂道を上った高台にあります。適当な公共交通機関もないので自力で上るしかありません。もっと年齢を重ねるとこの坂道が苦しそうですが、今日は何とかひーひー言いながら一気に上りました。リサイタルの前からぐったりです。

でも、そうやって頑張った甲斐がありました。そんなに期待度は高くありませんでしたが、素晴らしい演奏で感激しました。

今日のプログラムは以下です。

 モーツァルト:ピアノ・ソナタ第8番イ短調K.310
 ベルク:ピアノ・ソナタOp.1

  《休憩》

 リスト:ピアノ・ソナタ ロ短調
 バルトーク:ルーマニア民俗舞曲

  《アンコール》
 グルック:精霊の踊り
 ショパン:3つの新しいエチュードから第1番ヘ短調

実はこのプログラムは彼女の最新のアルバム《レゾナンス》の内容とまったく同じです。もちろん、アンコール曲はありませんけどね。
で、事前に購入し、予習してみました。ですから、ある程度、演奏については予測できたわけです。saraiが一番期待したのはベルクのピアノ・ソナタです。

で、本番の演奏ですが、まずは長い金髪でシルバーの上着と黒のゆったりしたパンツで微笑みながら登場。さすがに絵になりますね。
1曲目はモーツァルトのイ短調のピアノ・ソナタ。憂愁を帯びた名曲です。saraiも好きな曲です。しかし、グリモーはエネルギーに満ちたタッチで憂愁さなど微塵も感じさせない演奏でぐいぐい弾き進めます。演奏自体は美しいのですがリズムのとり方など独自性に満ちてどうしても違和感を感じます。タッチもモーツァルトの場合はもっとピュアーな感じで透明性のある雰囲気で弾いてもらいたいなと思ってしまいます。
第2楽章ではさすがに抑えた表現で美しい演奏でsaraiもうっとりとしますが、相変わらずタッチは底流に強いエネルギーを秘めた感じです。
第3楽章はまた第1楽章同様、早めのテンポで力強く引き続けます。
昔風にモーツァルトを気品高く弾くというのは現代のピアニストには抵抗があるのかなあと思いながら、考え込みながらも拍手を送りました。頭の中には疑問が残り、いろんな考えを巡らせますが、いい答えは分かりません。

まだ考え込んでいるうちに次のベルクです。もっとも期待した曲です。気持ちを入れ直して聴きましょう。
これは最初の一音から音色が違います。何とクリアーなタッチの美しい響きでしょう。この曲は調性はあるものの半音が多く新鮮な響きに満ちて、無調への予感を秘めた曲です。この曲をグリモーは素晴らしく美しい響きで弾き進めます。
響きの美しさだけでなく、ベルクのねっとりした情念のロマンと抒情を時に繊細に時に奔放に熱く表現します。パーフェクトな演奏でない部分もありましたが、逆にグリモーの熱い情念をそこに感じたことも事実です。まったく素晴らしいベルクでした。テクニックと音楽性が一体になった名演でした。
シェーンベルクも聴いてみたいものです。このベルクの熱い情念はシェーンベルクではどのような表現になるのか。無機的に弾きこなすのだろうか。
それにしても曲によってこんなにタッチや響きを変えるのだったら、先程のモーツァルトは意図的にあのような解釈で弾いたに違いありません。どうしてあのような解釈なのか、saraiには今後考えていく課題です。

それにしてもモーツァルトとベルクというウィーンを基盤とする作曲家を取り上げ、時代の隔たりとある意味連続性を示したプログラムでしたが、ベルクの情念に満ちた曲に対応するウィーンの古い曲だったら、むしろ、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ、例えば、《熱情》とか《ワルトシュタイン》とか《テンペスト》のほうがモーツァルトのピアノ・ソナタよりもふさわしくなかったかと素人考えをしてしまいました。そういえば、あのモーツァルトはむしろ響きとしてはベートーヴェン的な響きのようにも感じました。意外とモーツァルトのこれまでの世間的な殻を打ち破り、ベートーヴェン的な世界にもちこもうという意図でもあったのかなとますます深読みというか、迷路的思索にはいりこんでしまいました。
そんなことを考え込んでいるうちに20分の休憩もあっと言う間に終わりました。
ともあれ、素晴らしいベルクでした。

次はリストの有名なロ短調ソナタです。
この演奏には絶句しました。長大な30分を超える1楽章だけのソナタは内容がぎっしりと詰まり、演奏は新鮮そのもの。長大さを忘れさせる力演でした。
まずは冒頭からぐんぐんエネルギーの高い響きが盛り上がり、凄い迫力でsaraiを打ちのめします。また、一転して実に美しいメロディーラインでこれ以上ロマンチックには弾けないくらい抒情に満ちた演奏で陶然とします。するとその美しい響きのなかに何か妙な喘ぎ声が混ざります。なんと彼女自身があえいだ息をそらした顔から漏らしています。感極まってのエクスタシーです。それも自然に感じる美しい響きとメロディー。でもまた一転して大迫力のピアノの大轟音。
これらが何度も繰り返されながら、終局に向かっていきます。なんとセクシーな演奏でしょう。最後は低音の響きが途切れ途切れ続き、右手の和音が鐘のように響き、再び低音の響きに沈み込みながら音は途絶えます。

saraiとしてはリストのロ短調ソナタを初めて聴いた思いです。初めてこの魅力的な曲をすみずみまで楽しみました。美しく、迫力に満ちた曲・・・これはリストのピアノ曲すべてに共通しますがそのなかでも最高の名曲がこのロ短調ソナタ。
グリモーのピアノは生演奏ならではの熱い演奏でその本質を語ってくれました。
グリモーは美貌だけでなく、音楽を熱く演奏できる素晴らしい才能のピアニストでした。言いたくはありませんが、いっぺんにファンに仲間入りしてしまいました。

最後はバルトーク。まあ、ハンガリーつながりでしょうが、彼女もバルトークは得意でしょう。何故、バルトークのピアノ・ソナタを弾かないのかなと思っていましたが、この日のリストのソナタを聴いて分かりました。リストの凄い演奏の後でまたバルトークを熱く弾くのはいかにもバランスが悪いですね。
いわば、《ルーマニア民俗舞曲》は本編のなかのアンコール曲みたいなものでデザート的な意味合いです。
実際、実に美しい響きでチャーミングな演奏でした。もっと激しい演奏もできたでしょうがバルトーク的な意味で甘美な演奏に感じました。
でも、やはり、バルトークのピアノ・ソナタもいつか聴かせてもらいましょう。

ということで、このままリサイタルが終わってもアンコール曲も聴いた気分でしたが、やはり、アンコールはありました。
なんだかやたら懐かしい曲がアンコールで弾き始めたなあと思っていたら、そうです。これはsaraiのフルートの愛奏曲であることに思い当たりました。こんなに美しく、甘美にはとても演奏できませんけどね。ピアノ曲として聴くのは初めてでしたがなかなか素晴らしいですね。
最後のアンコール曲は分かりませんでしたがショパンだったんですね。これも美しい演奏。
美しい演奏も力強い迫力に満ちた演奏もどちらも素晴らしく弾けるピアニストであることが認識できました。

以上でリサイタル完了ですが、急遽ファンになったからにはやはりサインの一つももらうのが音楽ミーハー。急いでサイン会の列の前のほうに加わりました。
で、順が回ってきて、CDにサインを貰い、彼女に「今日のベルクは素晴らしかったよ」と言うと美しい顔をsaraiに向けてくれて「メルシー!」と言って、微笑みながら手を差し伸べてくれました。そして熱く握手をしてくれました。ミーハーのsaraiは天にも上る心地。ところでグリモーってフランス人だったんですね。

後で配偶者にその話をすると「よかったわね。その握手した手を洗わないようにしなさいよ」



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この記事へのコメント

1, ハルくんさん 2011/01/16 15:31
こんにちは。

いいコンサートを聴かれたようですね。
グリモーは非常に好きですが、生で聴いたことはありませんしCDも僅かしかありません。でもすごくインパクトのあるCDが有るのです。それはブラームスのピアノ協奏曲第1番で、指揮はクルト・ザンデルリンクでオケはシュターツカペレベルリンです。オケの演奏も素晴らしいのですが、負けずに素晴らしいのがグリモーのピアノなんです。僕のベスト盤の一つです。
グリモーの次回は是非コンサートに足を運びたいです。そしてサイン会にも!♡

2, saraiさん 2011/01/16 21:58
ハルくんさん、こんばんは。

俄かファンになったグリモーのCD情報ありがとうございます。指揮もオケも素晴らしいですね。でも、それだとグリモーもずい分若いとき(今も十分若いですが・・・)の録音ですね。是非、聴いてみましょう。
ブーレーズと共演したバルトークのピアノ協奏曲のCDは持っていますが、あれはブーレーズが主役で評判ほどは感心しませんでした。で、グリモーもそれっきり。
生であんなに熱いピアニストとは思っていませんでした。

今回もまだサントリーホールのリサイタルは残っていますが、次回には是非どうぞ。期待は裏切らないと思います。サイン会は必須です!間近にあの美貌が見られますからね(笑い)。

3, takacciさん 2011/02/11 20:45
はじめまして。
私はBShiの放送で彼女のリサイタルの録画を聴き感激しました。放送されたのはサントリーホールでの演奏で、saraiさんの記事を読むとモーツアルトとアンコールを除いた演奏が放映されたようです。
リストは私の理解を超える曲でしたが、リストを聴いて楽しめたのは初めての体験で、嬉しかったです。
saraiさんのブログ、楽しそうなのでまた読ませていただきます。よろしく。

4, saraiさん 2011/02/11 22:04
takacciさん、初めまして。コメントありがとうございます。

放送でのサントリーホールのリサイタルもよかったですね。あんなリストはなかなか聴けません。彼女のCDの演奏を超える演奏でした。ただ、放送録画のあったせいか少し冷静さ?があり、残念ながら神奈川県立音楽堂で聴けた彼女の喘ぎ声は聴けませんでしたね。神奈川県立音楽堂のリストの演奏のほうがサントリーホールよりももう少しよかったかもしれません。

また、コメントをお待ちしています。
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ジャンル : 音楽

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん

みーちゃんさん、saraiです。

あの謎の建物は雄琴沖総合自動観測所という施設で琵琶湖の水質を測定しているそうです。

https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/repo

02/13 21:40 sarai

ずーと前にうきみどうに行きました
やはり、琵琶湖の真ん中の建物が何なのか気になったままです
分かりましたか
教えてください

02/13 20:54 みーちゃん

五十棲郁子さん、コメントありがとうございます。

水道水のこと、tap waterって言うんですね。知らなかった。単にwaterで通していました。ましてや、フランス語はほとんど

02/11 00:12 sarai

フランスも地方へ行くと英語が通じないでしょう。tap water ぐらいフランス語で言えないとね。

02/10 12:54 五十棲郁子
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