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長岡純子ピアノリサイタル@ひまわりの郷 2010.11.28

今日のリサイタルは横浜・上大岡ひまわりの郷でのコンサートシリーズです。

演奏は以下です。

 ピアノ:長岡純子(すみこ)

プログラムは以下です。

 バッハ(ブゾーニ編曲):シャコンヌ
 シューマン:子供の情景Op.15
  《休憩》
 ベートーヴェン:ピアノソナタ第21番ハ長調Op.53「ワルトシュタイン」

ピアノ演奏の長岡純子はオランダ在住の82歳の大家です。
失礼ながら、このリサイタルまで、このピアニストの存在を知りませんでした。
軽い気持ちでホールに行きましたが、その高い音楽性に驚きを禁じ得ませんでした。

ご高齢でそんなに体を動かさない演奏ですが、強弱、テンポ、タッチの多彩さなど感銘を受ける演奏でした。
もちろん、若手の高い技巧を持ったピアニストに比べると、幾分ミスタッチや指が回らないところもありましたが、それを補って余る音楽的表現、特に丁寧に1音1音ピアノを奏でる真摯さは音楽の原点を見る思いがしました。

最初のシャコンヌはもちろん原曲は独奏ヴァイオリンのための曲で、saraiは原曲が好きなのですが、美しい響きのピアノでの演奏に思わず、引き込まれる部分も多々ありました。バッハ好きにはなかなか感銘を受ける演奏でした。ともすれば、この曲は派手に弾かれることも多いわけですが、彼女はあくまでも真摯で美しいバッハの響きで好感を持てました。

驚いたのは2曲目の「子供の情景」です。
いきなり、凄くスローなテンポで「見知らぬ国で」が始まり、びっくり。こんなテンポの演奏って聴いたことがありません。
お蔭で1音1音しっかりとしたタッチの演奏でかなり幻想的な演奏になります。音楽表現の自由度が高くなり、心を込めて、独自の節回しですが、それが過剰に至らないのが節度ですね。
まあ、こんなシューマンも楽しいものです。
結局、最後まで、このスローなテンポを一貫して維持。
終曲はもともとスローな曲なので、どうなるかと思っていたら、これがさらにスローなテンポでの演奏。もう最後は音が続かないとおもうほどですが、これが間延びではなく、心を込めた感じというのが凄い。
多分、2度と聴けないシューマンでした。

最後の「ワルトシュタイン」。
これはベートーヴェン中期の傑作ですが、かなりダイナミックな曲です。
先程、シューマンを聴いた感覚では、むしろ、30番・31番・32番あたりのほうがスローテンポでゆったりと弾けてよいかなとも思っていました。
ところがまた驚き!
この曲はほとんどスタンダードなテンポで、早いパッセージは早く、そして、ゆっくり聴かせるところはゆっくりというテンポのチェンジを大きくした変化のある演奏でした。そのため、スローな部分の美しい響きが際立って心にしみ入る感じでまるでそのあたりは後期の精神性の高いソナタを聴いている思いです。
丁寧に音に心を込めた演奏で抒情性の高いベートーヴェンを聴き、やはり、音楽はテクニックも必要だけれども一番大事なのは精神性だと思いました。

80歳を過ぎて、こんな素晴らしい音楽を作り出せるのはとても嬉しいことです。
saraiも長生きして、さらに聴く者としての音楽の感受性を高めたいと切に思いました。
それにしても今年はアーノンクール、プレートルと80歳を過ぎた演奏家の音楽に接し、長い人生でたどり着いた高い音楽的境地に感動する年になりました。
指揮者とピアニストは80歳を過ぎないと駄目なのかなと配偶者に言ったら、無言で笑われました。saraiは結構本気なんですが・・・

ちなみに今saraiが夢中で聴き続けているCDは晩年のクラウディオ・アラウのバッハ、モーツァルト、ベートーヴェン、ショパン、リスト、ブラームス、ドビュッシー、それに素晴らしいシューベルト。テクニックは明らかに衰えていますが、魂の音楽です。

やはり、音楽家は80歳を過ぎると、野心もなく、失うものもなく、本物の音楽だけに集中できるのではないかと思いますが、いかがでしょう?



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この記事へのコメント

1, ハルさん 2010/11/30 21:40
こんばんは。

音楽家というのは己の芸の道を長い年月をかけて一歩づつ進んでいると思うのです。当然肉体的には衰えてきますが、決してスポーツ選手ではありませんから、円熟の芸や精神面で充分カバーした演奏が可能ですよね。むしろそのほうが心を打たれることも多いと思います。歌舞伎、茶道、花道、陶芸、どれもみな本物の芸の精進には途方もない時間がかかるものじゃないでしょうか。
ですので「80歳を過ぎると、野心もなく、失うものもなく、本物の音楽だけに集中できるのではないか」というご意見に全面的に賛同します。

2, saraiさん 2010/12/01 00:16
ハルくんさん、こんばんは。

思いを同じくするコメントをお寄せいただき、ありがとうございます。
まさにそのようなご意見をお待ちしていました。
saraiも80を過ぎたら、本当の音楽が見えてくるかもしれませんね。それまで音楽修行を続けたいと思います。
年を重ねる楽しみっていうのもあるもんですね。漫然とした日を送っていなければ・・・

3, たらこ爺さん 2011/01/23 09:16
はじめまして
msnの長岡純子さんの検索で表示されていたものでつい見てしまいました。
NHKの放送をビデオで撮ったものを日曜に見ながら読みましたので、そのとおり!とうなづきました。
惜しい人をなくしたものです。
ワルトシュタインは、ふつう自己主張が入るものがほとんどですが
長岡先生の演奏は、個人的なものはそぎ落としたあとに残った
まさしく「純」粋な響き、「こころ」の歌とでもいう感慨を
感じます。
階段を、アクロバティックに駆け下りたりかけ登ったりも、目を見張る演奏が多い中、先生の演奏は、そういったエキサイト要素がなくても何回聞いても飽きない演奏です。
草津音楽祭でのジャン・クロード・ペネティエ氏と同様
年齢が熟すことで、音楽となにかが結合して、昇華した美に
いたるという吉田秀和さんの音楽礼賛の境地に皆さんが
いるのでしょうか?
純粋な、美しさへの狂おしさとでもいうのでしょうか。胸になにかこみあげるものがあります。

4, saraiさん 2011/01/23 12:03
たらこ爺さん様、コメントありがとうございます。

長岡純子さんが亡くなられたこと知りませんでした。
結果的に最晩年の素晴らしい演奏を生で聴けて感慨深いものがあります。

80歳を超えて、あそこまでの境地に達した演奏は日本人演奏家では聴いたことがありません。ステージではおぼつかない足どりでしたがいったんピアノを弾き始めると芯のしっかりした精神性の高い音楽表現でした。あの高い芸術性に驚嘆したことがまざまざと思い出されます。

ご冥福をお祈りするばかりです。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん

みーちゃんさん、saraiです。

あの謎の建物は雄琴沖総合自動観測所という施設で琵琶湖の水質を測定しているそうです。

https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/repo

02/13 21:40 sarai

ずーと前にうきみどうに行きました
やはり、琵琶湖の真ん中の建物が何なのか気になったままです
分かりましたか
教えてください

02/13 20:54 みーちゃん

五十棲郁子さん、コメントありがとうございます。

水道水のこと、tap waterって言うんですね。知らなかった。単にwaterで通していました。ましてや、フランス語はほとんど

02/11 00:12 sarai

フランスも地方へ行くと英語が通じないでしょう。tap water ぐらいフランス語で言えないとね。

02/10 12:54 五十棲郁子
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