完璧なR・シュトラウスの響き、ティーレマン&シュターツカペレ・ドレスデン@サントリーホール 2015.2.23
リストの交響詩《オルフェウス》は初聴きの曲。予習で聴いたところでは、聴きやすいメロディアスな曲。ところがティーレマンの手にかかると、実に甘美な名曲に変身。オーケストラの響きも最高です。のっけから、ティーレマンの音楽の魔法にかかり、陶然としてしまいます。
次のワーグナーの《ジークフリート牧歌》は極上の名演。予習したすべての演奏を凌駕する驚くべき演奏でした。かのクナッパーツブッシュ、フルトヴェングラーの名演も霞んでしまいます。ティーレマンの演奏の基調は静かで穏やかな音楽ですが、音楽性がぎっしりと詰まった密度の濃いもので、綺麗で退屈な演奏とは対極にあるような素晴らしい演奏。そして、熱が高まってくるとロマンの極致に至り、感動で頭がいっぱいになります。ティーレマンがとびっきりのワーグナー指揮者であることを再認識させてくれました。
休憩後は今日のメインのプログラムのR・シュトラウスの《英雄の生涯》。ティーレマンの指揮でこの曲を聴くのはこれが2度目。以前、ミュンヘンのガスタイクでミュンヘン・フィルの演奏で聴きましたが、そのときとは比較にならないほどの素晴らしさ。広大なガスタイクのホールの遠い席で聴いたせいもあるかもしれませんが、今日の演奏は格別の出来に思えます。今日の演奏を聴いていると、ティーレマンとシュターツカペレ・ドレスデンは大変な蜜月状態にあり、ティーレマンのオーケストラのコントロールがきっちりと決まっており、ティーレマンの意図する音楽が存分に表現できているのが分かります。ティーレマンのドレスデン移籍は大成功だったのが確認できました。これまでsaraiが聴いた《英雄の生涯》の最高の演奏はハイティンク+シカゴ交響楽団のみなとみらいホールでの演奏(残念ながらブログ記事未掲載)。まさか、その演奏を上回るものを聴くことになることは想像だにできませんでしたが、今日はまさにその奇跡のようなことが起こったんです。
ティーレマンはこの《英雄の生涯》から様々なものを引き出してくれました。多くは音楽的な響きによるものです。R・シュトラウスが若干35歳で作曲したこの作品は彼の最後の交響詩であり、それまでの交響詩作品を俯瞰しつつ、その後の楽劇を見据えた驚異的な作品と言えます。ティーレマンはオペラ指揮者としての経験をもとに、この作品でR・シュトラウスの過去の交響詩を総括するだけではなく、随所で後の楽劇(オペラ作品)を彷彿とさせる響きを明確に織り込んでいきます。特に《ばらの騎士》、《サロメ》の響きが感じられました。終盤では、《4つの最後の歌》の響きが聴こえてきます。この45分ほどの《英雄の生涯》でR・シュトラウスの全音楽人生を響かせてくれたのがティーレマンの演奏でした。R・シュトラウス好きにはたまらない音楽的充実度の高い《英雄の生涯》でした。
そうそう、コンサートマスターのマティアス・ヴォロングの見事なソロにも触れないわけにもいかないでしょう。シカゴ交響楽団のロバート・チェンとも拮抗する素晴らしい演奏でした。特に最後の最高音がきっちりと響いていたしね。
予習でもハイティンクとティーレマンが響きという点でとりわけ優れていると感じたのは、間違いではなかったようです。予習についてはここに書きました。
ところで、今日のプログラムは以下です。
指揮:クリスティアン・ティーレマン
管弦楽:シュターツカペレ・ドレスデン
リスト:交響詩『オルフェウス』
ワーグナー:ジークフリート牧歌
《休憩》
R・シュトラウス:交響詩『英雄の生涯』
《アンコール》
ワーグナー:楽劇『ローエングリン』第3幕への前奏曲
もっと書きたいこともあるのですが、まだ、明日のブルックナーも控えているので、このあたりで止めて、早々に寝ます。
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