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バッハ《ロ短調ミサ曲》byアーノンクール+ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス@サントリーホール 2010.10.26

感動というのではなく、共感したと言えばいいのか、表現は難しいのですが、音楽を聴いた幸せが体中に満ちた大変充実したコンサートでした。

昨日はこのサントリーホールにブルックナーの管弦楽の炸裂が轟きわたっていましたが、今日は打って変わって、古楽器のアンサンブルでバッハです。モダン楽器のリッチな響きはなく、最初はホールが響かない感じで若干拍子抜け。古楽器の響きに慣れないsaraiの感覚とホールトーンをまだつかみきれていなかった演奏者側の手さぐりの両面があったと思います。しかし、しばらくすると、耳慣れしたことと明らかにホールの特性を感知した演奏でホールに典雅というか、素朴というか、誠実で無理のない響きが満ちてきました。
saraiの脳裏にかすめたのは何故か、アッシジの聖フランチェスコ。先程、パンフレットでのアーノンクールのインタビュー記事で彼が聖フランチェスコを敬愛しているらしいことが書いてあったからかもしれませんが、この古楽器の素朴な響きが聖フランチェスコの清貧と結びついて連想してしまいました。古楽器の響きはモダン楽器に比べて、ある意味、プアーな響きかもしれませんが、逆に音楽への誠実さを感じさせ、音楽の原点を思い起こさせる響きにも感じます。
バッハやハイドン、モーツァルトあたりはこれで十分ではないのか、モダン楽器の贅沢な響きは必要なのかと心に問いかけてしまいそうです。

さて、まずは今日はコンサートの概要について、まとめておきましょう。
このコンサートはこの秋の高額コンサート、いや違った、著名な海外演奏家のコンサートの皮切りです。チケット代で破産状態ですが、やめられないですね。

ともあれ、演奏は以下のメンバーです。
 
 ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス
 指揮:ニコラウス・アーノンクール
 ソプラノ:ドロテア・レッシュマン
 メゾ・ソプラノ:エリーザベト・フォン・マグヌス
 メゾ・ソプラノ:ベルナルダ・フィンク
 テノール:ミヒャエル・シャーデ
 バリトン:フローリアン・ベッシュ
 合唱:アーノルト・シェーンベルク合唱団

特に80歳を過ぎたアーノンクールは今回が最後の来日と言っており、今後はウィーンでのみ活動するとのことです。最後の海外公演が日本だということで、我々にとってはとてもありがたいことです。もちろん、海外とはいうほどではないオーストリア近隣ではまだ演奏活動はあるのかもしれませんが、いずれにせよ、日本人にとって、聴き逃せない機会です。
特にバッハは今夜がサントリーホールでの唯一のコンサート。
今年、日本での最も貴重なコンサートのひとつでしょう。
あと、サントリーホールでは、ハイドンのオラトリオ《天地創造》が今週末に2回予定されており、これも絶対に聴き逃せないコンサートです。
アーノンクールが手兵ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスと盟友アーノルト・シェーンベルク合唱団を引き連れ、さらに彼のお気に入りの旬な歌手たちを同道し、ある意味、アーノンクールの集大成を聴ける最後の機会かもしれません。

で、今夜のプログラムはマタイ受難曲とともにバッハの音楽の最高峰とも言われる大曲です。

 バッハ:ロ短調ミサ曲

全4部が1部と2部の間に休憩をはさみ、演奏されます。
 
予習は有名なリヒター盤でしたが、近年、バッハも古楽器ブームでずいぶん演奏スタイルがかわりました。その火付け役が今夜のアーノンクールです。でも、バッハの音楽の本質が変わったわけじゃありません。

で、演奏については冒頭で古楽器については触れましたが、この大曲全体を詳細にレポートする力はsaraiのような素人にはとても無理そうです。断片的な印象を述べるに留めさせてください。

ともかく、特筆すべきは合唱の素晴らしさ、パーフェクトではないでしょうか。力強い響きから、美しく透明な響き、対位法的な部分のバランスも素晴らしい歌唱です。この曲自体、半分以上は合唱曲ですから、その響きに身を委ねるだけで陶然とした思いになります。とりわけ、第2部の「エト・インカルナートゥス・エスト」からの部分は、アーノンクールがはっきりと声を抑えさせたこともあり、消え入るような声で神秘に満ちた曲を美しく、そして、深く、演奏し、心に強い共鳴をもたらされました。

歌手では、テノールのシャーデが好調。オペラよりもずっと良いですね。明るいハイトーンが伸び伸びとしており、フルートと掛け合いの「ベネディクトゥス」の難曲を軽々と歌っていました。
ソプラノのレッシュマンは相変わらずの美声ですが、オペラよりは自制した表現です。テノールのシャーデとの2重唱「ドミネ・デウス」は2人とも伸びやかな歌唱で素晴らしい出来です。

で、この曲では、一番、目立つのはメゾ・ソプラノ(アルト)です。アリアの2曲はフィンクが歌いましたが、非常に感銘を受けました。表現力に優れた人ですね。特に終盤の「アニュス・デイ」はオブリガート・ヴァイオリンの響きとともに心に染み渡ります。いつまでも歌っていてほしいと思うくらいです。

アーノンクールについては、この演奏を全部、マネージメントしているわけで、何もいうことはありません。ここまで準備してきたことがすべてでしょう。彼の80年の人生がここに込められています。あとは、ポイントだけを押さえればいいわけです。

最後はぐっと盛り上がったところで、すーっと引いて、静かな終わりです。
これがバッハですね。

しばらくすると、おずおずと聴衆の拍手が始まり、あとは熱狂の渦でした。
ただ、オペラのようにドラマチックな感動があったのではなく、また、大多数の人は宗教的な感動があったのでもなく、バッハの音楽への人間的な共感がアーノンクールの演奏を通じて沸き上がったのだと思います。少なくともsaraiはそうでした。カーテンコールの最後では、ほぼ全員がスタンディングオベーション。
その価値のあるコンサートでした。もう2度と聴けないバッハかもしれません。

サントリーホールの外に出ると、もう秋風が冷たく、興奮でほてった頬が気持ちよく感じられました。音楽は本当に人生を豊かにしてくれます。



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この記事へのコメント

1, ハルくんさん 2010/10/27 08:03
こんにちは。

アーノンクールのバッハへ行かれたのですね。
一時代を築いた人ですが、どちらかというと好きではないので見合わせました。でも「ロ短調」ならやはり聴いてみたかったという気持ちは有ります。詳しいレポートありがとうございました。

2, saraiさん 2010/10/27 14:00
ハルくんさん、saraiです。
コメントありがとうございます。

実は私もあまりアーノンクールのよい聴き手ではありません。
でも、バッハは奥が深く、これだけのメンバーで演奏されると、悪いわけがありません。年齢とともにバッハに傾倒していくsaraiです。
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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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