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マルティヌー傑作選!フルシャ&東京都交響楽団@サントリーホール 2014.9.8

今や、東京都交響楽団の看板プログラムとなったチェコ音楽。今日はチェコを代表するマルティヌーの傑作、2作品です。マルティヌーは1923年から1941年までのパリ時代の初期、その後、1953年までのアメリカ時代の中期、その後のヨーロッパ時代の後期と3つの時代に渡って活躍した20世紀の異色の作曲家です。このマルティヌーの作品を見事に表現してくれたのは、都響の首席客演指揮者のヤクブ・フルシャです。チェコ人のフルシャの指揮するお国もののチェコ音楽には毎回、堪能させられます。なかでも日本では演奏機会の少ないマルティヌーの作品はフルシャの腕が冴えわたり、音楽の素晴らしさに酔わされます。今日も中期のアメリカ時代を代表する交響的楽章第4番は納得の演奏。それ以上に素晴らしかったのが、初期の傑作であるカンタータ《花束》です。チェコの民族色に満ちたオペラっぽい音楽にはすっかり、惹き込まれ、最後はしみじみとした思いになりました。独唱の4人もプラハの国民劇場で活躍している人が主体でまことに見事な歌唱。さすがです。現在、当ブログで執筆中のプラハでの素晴らしい音楽体験を思い出しました。

今日のプログラムは以下です。

  指揮:ヤクブ・フルシャ
  ソプラノ:シュレイモバー金城由紀子
  メゾソプラノ:マルケータ・ツクロヴァー
  テノール:ペテル・ベルゲル
  バス:アダム・プラヘトカ
  合唱:新国立劇場合唱団
  児童合唱:東京少年少女合唱隊
  管弦楽:東京都交響楽団

  マルティヌー:交響的楽章第4番 H.305

   《休憩》

  マルティヌー:カンタータ《花束》 H.305

まず、前半はマルティヌーの交響的楽章第4番。マルティヌーの交響曲全6曲は第6番の仕上げを除いて、すべてはアメリカ時代に書かれました。なかでも、第2次世界大戦終結時に完成した第4番は傑作の誉れ高い作品です。この作品は明るく演奏されることが多いのですが、ヴァーツラフ・ノイマンのように陰の多い演奏もある、多様性のある作品です。今日の演奏は第1楽章は明るく、新鮮な音響に満ちて、クリアーな表現。えてして、とりとめのない表現に陥りがちのところですが、実にまとまりのよい演奏で音楽構造の明確な演奏です。第2楽章は一転して、明快な推進力の音楽ですが、今日の演奏は繊細かつダイナミックな表現。中間部は穏やかで美しく、ボヘミアを思わせる音楽でフルシャが見事に演奏。第3楽章は哀切極まりない音楽が頂点に達した後、優しく終わっていきます。第2次世界大戦の悲しみに哀悼を捧げたかのようです。第4楽章はその第3楽章の気分を引きずりながらも勢いのある表現。最後は希望に満ちた音楽になり、勇壮なコーダでしめくくります。実に見事な演奏でした。引き締まっていて、響きの新鮮さに満ちて、素晴らしい演奏。フルシャと都響のマルティヌーの交響曲は第6番に続いてのものでしたが、とても聴き応えがあります。残りの4曲も是非、披露してもらいたいものです。

休憩後は、マルティヌーのカンタータ《花束》。チェコの民俗詩に基づいた作品で、8曲からなります。第1部が6曲で第2部が2曲ですが、続いて演奏されます。奇数番の曲が第7曲を除いて、管弦楽のみの音楽で、偶数番の曲が声楽(独唱と合唱)を伴う音楽です。もともとはラジオ局の依頼で、ラジオ用のカンタータとして作曲されたもので、ラジオで鑑賞しても分かりやすいストーリー性のある音楽として作曲されたようです。チェコ語を解すれば面白い作品でしょうが、今回は歌詞の日本語字幕が表示されたので、チェコ語が分からなくても十分に楽しめました。
第1曲の《前奏曲》は親しみにあふれた音楽でボヘミア色に満ちています。短い曲ですが、堪能できます。
第2曲の《毒を盛る姉》は音楽だけ聴いていれば、普通ですが、歌詞の内容が実に陰惨です。陰惨な内容を淡々とした音楽で表現すると、シュールな感覚にも襲われます。歌詞の内容は、自分の行動を制限する弟に毒を混ぜた食事を食べさせて、毒殺した姉が官憲に捕らわれて、死罪になり、本人の望みで壁に塗りこめられるというものです。弟役を歌ったテノールの声量のある歌声は素晴らしいものでした。
第3曲の《牧歌》は一転して、長閑な美しい曲。オーケストラの響きにうっとりと聴き入ります。
第4曲の《牛飼いの娘たち》はソプラノとメゾソプラノの女声独唱の呼びかけるような歌声に合唱が木霊のように呼応するという独特の音楽です。ソプラノの日本人歌手、彼女はプラハの国民劇場での経歴を持っているようですが、実に美しい歌唱でした。また、曲の後半でのソプラノとメゾソプラノの2重唱の美しさも特筆ものでした。
第5曲の《間奏曲》はリズムに満ちた民俗的な舞曲です。都響の見事なアンサンブルが印象的でした。
第6曲の《家族に勝る恋人》は、ストーリー性のある歌詞が繰り返しのメロディーに乗って、歌われていきます。最後は見事に変奏されて終わります。歌詞の内容は、トルコの監獄に3年も囚われた男が家族に解放のためのお金を出してくれるように懇願する手紙を次々と、父、母、兄弟に出しますが、すべて、断られ、最後に恋人に手紙を書き、彼女に救われるという単純なストーリーですが、見事な音楽にまとまっています。
第7曲の《クリスマス・キャロル》は児童合唱で歌われるアダムとイブの物語です。歌詞はカレル・ヤロミール・エルベンの《花束》という詩集に基づくもので、カンタータの題名もこれから取られました。歌詞の最後の締めが利いていて、楽園から追放されたアダムが麦畑を耕して、パンを作ったけれども、このアダムが人類の祖先だから、人々は貧しさを受け継いでしまったのだと終わります。
第8曲、終曲の《人と死神》は、最後を飾る秀作です。満足な生活を送る男がばったりと道で死神と出会ったことから、彼の機知に満ちた言葉も通用せずに、結局は死神の矢を受けて、悲惨な死を迎えるというストーリーを荘重な音楽にしています。管弦楽の響き、合唱の響き、バス独唱の素晴らしい歌唱が重なって、素晴らしい音楽が奏でられ、さらにヴィオラ独奏、ヴァイオリン独奏も美しく、最後は4人の独唱と合唱で万人に訪れる突然の死への警告を歌い上げて、オーケストラが静かに曲を閉じていきます。感銘の残る音楽にしばし、息を止めます。

マルティヌーの初期の傑作の素晴らしさに感動するとともに驚きもありました。交響曲の多彩な響きが印象的なマルティヌーですが、初期の作品はモラヴィア、ボヘミアの民俗的な作風で大変、魅力的でした。これからもフルシャの指揮する都響のチェコ音楽には期待いっぱいです。



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この記事へのコメント

1, 寄り道さん 2014/09/09 13:01
フルシャのマルティヌー、素晴らしかったですね。「花束」の奇妙なコミカルさが良かったです。演奏自体も見事なものでした。
記事を読んでちょっと、あれ?と思ったので……。フルシャ/都響は、マルティヌーの交響曲は、第3番も取り上げています。

2, saraiさん 2014/09/09 13:51
寄り道さん、初めまして。

大切な情報、ありがとうございました。2010年12月の首席客演指揮者就任の文化会館の公演でしたね。その月のサントリーでドヴォルザークの《フス教徒》、スメタナの交響詩《ブラニーク》、マルティヌーの《リディツェへの追悼》、ヤナーチェクの《グラゴル・ミサ》という素晴らしいプログラムがあったので、文化会館の第3番はパスしました。今思えば、大変、残念です。このときがフルシャの初聴きだったので、まだ、真価を理解していませんでした。いやー、残念!!
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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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06/18 12:46 sarai

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