MET@東劇《ランメルモールのルチア》
弁当を購入し、近くの夕闇の公園のベンチでちゃちゃっと簡単に夕食を済ませ、再び、東劇へ。
次の2番目の演目が実は最もお目当てのオペラです。何せ、ネトレプコの出る≪ルチア≫ですからね。ネトレプコは最近はウィーンで≪椿姫≫を見ましたが、何と素晴らしかったことか!
この≪ルチア≫が19時から上映されます。
≪ルチア≫はウォルター・スコットの原作にドニゼッティがオペラを作曲したものです。筋立ては簡単に言えば、≪ロミオとジュリエット≫みたいなもので、愛し合う2人が対立する家同士の板挟みにあって、最後は2人とも死んでしまうというものです。特に第3幕で、無理に嫌な男と結婚させられたルチアがその男を刺し殺し、狂気に陥ったシーンが「狂乱の場」として、ソプラノが長時間、持てる力を出し尽くして歌い続ける、感動的な見せ場になっています。当ブログでも紹介済みですが、ドレスデンで見たエディッタ・グルヴェローヴァのルチアは感涙もので、これを超えるルチアはないと思っていました。
で、今回のメトの配役は以下のとおりです。
アンナ・ネトレプコ:ルチア
ピョートル・ベチャワ:エドガルド
マリューシュ・クヴィエチェン:エンリーコ
イルダール・アブドラザゴス:ライモンド
本来は相手役エドガルドのテノールはロランド・ビリャソンだったのですが、病気のため、急遽、代役のベチャワに変更。構いませんよ、私は・・・ネトレプコさえ出ればね。
いよいよ、時間になり、幕が開きます。1幕の第2場になると、遂にネトレプコ登場。メトの観客は彼女が出てきただけで早々と拍手を送っています。いやはや、スーパースターですね。
む、ネトレプコはまだ相当に太目。この公演は2009年2月7日のもので、出産後の復帰直後なので仕方ないですね(5月にウィーンで見たときもまだ太目でしたが・・・)。それはさておき、オペラは歌です。ネトレプコが歌い始めました。うーん、なんだか、調子出ないなあ。彼女本来の歌声からは程遠い。まあ、ウィーンの≪椿姫≫でもスロースターターだったから、調子が上がってくるのを待ちましょう。
この後、エドガルド役のベチャワも登場。2人の2重唱が始まります。前半の見せ場です。ネトレプコはこのあたりから、高音あたりが大分、良くなってきましたが、まだまだです。ベチャワも声は出ていますが、表現力がビリャソンに比べると、今一つ。
不満を残しつつ、第1幕が終わり、幕間の休憩です。
さて、気を入れなおして、第2幕です。
結婚を強いる兄の部屋にルチアがはいってきます。はあ、美しい! ネトレプコも気分が乗ってきたのでしょうか。 顔を見ただけで、1幕目と大違い。兄におどし、すかされ、その上、恋人の嘘の手紙まで見せられ、怒り、苦悩するルチア。ネトレプコは素晴らしい歌唱を聴かせてくれます。第2幕はいやいやながらの結婚と急遽駆け付けた恋人のエドガルドの悲痛な非難でルチアが苦悶するなかで盛り上がりながら終わります。すごい迫力です。
でも、それまでの第2幕までがすべての序章に過ぎなかったと思わされたのが第3幕です。あまりの感動に感想を書くのもままなりません。ネトレプコの「狂乱の場」の素晴らしさは文字通り、感涙ものです。彼女もまさに天使の歌声! 我を忘れて、ただただ聴きほれるのみ。
ルチアの退場後、オペラは続きますが、いつもはつけたしだと思っていました。これがなかなかです。エドガルド役のベチャワもネトレプコに触発されたか、素晴らしく感情のこもった歌で、もう十分に涙腺のゆるんだsaraiに追い打ちをかけます。ルチアが狂死したことを知り、自身も自害するエドガルドの心情を歌い切り、きっと、暗い映画館の観客皆が泣かされたと思います。
映画が終わっても、誰一人、声も立てません。感動を胸に深夜の地下鉄で家路につきました。
体力を使いきり、次の日までぼーっとしていましたが、やっぱり、オペラはやめられません。
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