納得のブルックナー、インバル&東京都交響楽団@東京文化会館 2015.3.18
昨年までのインバルと創り上げてきたマーラーの素晴らしい演奏はもう既に過去のこと。一瞬で消え去る音楽は未来に向かって、また、新しく築き上げていくものだという厳しい現実があります。インバルはブルックナーを演奏するために、マーラーとはまったく異なる響きを都響のメンバーに要求したのでしょう。今日の都響の響きはこれまでに聴いたことのないようなものでした。マーラーを演奏していたときの弦の繊細な美しい響きはもう、そこには聴けません。都響のアンサンブルで感じるのは、《強靭な響き》ということです。各声部がしっかりと強く音を響かせて、アタックも明確にして、意欲的なスタイルで演奏していました。これがインバルの考えるブルックナーの響きなんでしょう。都響から新たな響きを引き出すインバルの指揮者としての力量には舌を巻きます。優れた指揮者はそういう魔法も使えるのですね。
インバルが創り上げたブルックナーの音楽ですが、至上のブルックナーとまでは言えませんが、特に強奏の素晴らしい響きは納得できる演奏でした。これに弱奏での美しい響きが加われば、最高のブルックナーとも思えたのですが、そこまでは達していなかったと感じました。しかし、日本のオーケストラがここまでのブルックナーを演奏したのは画期的にも思えました。これまではどのオーケストラでも弦の美しさは感じられても、金管の力強さが不満でしたが、今日はとても弦と金管のバランスがよかったと思います。
なお、今回、予習したCDは以下のものです。(未聴のものを中心に聴きました。)
ハイティンク指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1965年
ベーム指揮ウィーン・フィル 1973年
ヨッフム指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1975年
アーノンクール指揮アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団 1997年
ヴァント指揮北ドイツ放送交響楽団 2001年
いずれも素晴らしい演奏ですが、特にアムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団の3つのCDはオーケストラの素晴らしい響きに感銘を受けました。やはり、ブルックナーはオーケストラの美しい響きが重要だと感じました。アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団とミュンヘン・フィルが2強でしょうか。
最初に演奏された《トリスタンとイゾルデ》の「前奏曲と愛の死」ですが、冒頭のトリスタン和音から、甘美さを取り除いた強靭さが感じられたのは、後半のブルックナーへの助走だったのでしょうか。こういうトリスタンも決して悪くないのですが、やはり、もう少し、陶酔感を味わいたいとは思いました
今日のプログラムは以下です。
指揮:エリアフ・インバル
管弦楽:東京都交響楽団
ワーグナー:楽劇《トリスタンとイゾルデ》より「前奏曲と愛の死」
《休憩》
ブルックナー:交響曲第4番 変ホ長調 WAB104 《ロマンティック》 (ノヴァーク版:1878/80)
久しぶりのインバルの指揮でしたが、やはり、聴き応えがありました。期待にたがわぬ演奏でした。
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