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フランチェスコ・トリスターノ・ピアノ・リサイタル@上大岡ひまわりの郷 2015.4.5

一昨日は大野和士&都響の音楽監督就任記念コンサート、昨日はバッハ・コレギウム・ジャパンのマタイ受難曲と重いものを聴きましたが、打って変わって、今日は若手ピアニストのピアノ・リサイタルです。素晴らしいピアノ独奏を聴き、改めて、自分がピアノ好きだということを再認識しました。

フランチェスコ・トリスターノはルクセンブルク出身でまだ30代半ばのイケメンのピアニスト。初めて聴くので、どんな演奏をするのかと思っていたら、最初のバッハのトッカータは切れのよい演奏ですが、少し分厚い響き。なかなかの演奏ではありますが、こういうピアノの響きでのバッハの鍵盤楽器曲の演奏には頭をひねってしまいます。これだったら、やはり、チェンバロ演奏のほうがよいと思います。バッハをピアノで演奏する意味が分からない響きになっているからです。ただ、演奏自体はノリもよく、決して悪くはありません。どうして、こんなに分厚い響きで弾くんだろうと思っているうちに次のフランス組曲第2番の演奏が始まります。えっと驚きます。最初の1音から、繊細な響きに変わっています。彼は曲ごとに響きを変えて演奏できるようです。この響きこそ、バッハの鍵盤楽器曲をピアノで弾くときに出すべき響きです(saraiが勝手にそう思っている響き)。素晴らしいフランス組曲の演奏です。CDで一番評価しているアンドラーシュ・シフの演奏にも匹敵するものです。第3曲のサラバンドは心に沁みるような深く、しみじみとした演奏です。今日は特別提供のYAMAHAのCFX(価格は1900万円もするそうです)ですが、バッハに関してはスタインウェイならばもっと表現力を増したような気がします。それにしても超満足の素晴らしいフランス組曲でした。彼の弾くパルティータも聴いてみたいところと思ってしまいました。昨年聴いたアンデルシェフスキのバッハ(フランス風序曲、 イギリス組曲第3番)の演奏を上回る演奏にある意味、びっくりしてしまいました。世の中は広いものです。才能のある人はいるんですね。素晴らしいバッハを聴けただけで、もう、今日は満足です。

前半の最後は超難曲のストラヴィンスキーの《ペトルーシュカからの3楽章》です。これはもう絶句。これこそ、今日特別に運び込まれたYAMAHAのCFXの能力を100%発揮した超絶演奏。演奏のキレもシャープな響きもパーフェクトと言わざるを得ません。CDで聴くポリーニの鋭角的な演奏も霞んでしまうような会心の演奏です。やはり、こういう超絶的な曲はライブで聴くのが一番です。CDではライブの迫力は決して味わえません。

素晴らしいバッハとストラヴィンスキーを聴いて、saraiは至福の境地。

さあ、後半です。バッハのコラール《目覚めよと呼ぶ声あり》は原曲はカンタータ第140番『目覚めよと、われらに呼ばわる物見らの声』(Wachet auf, ruft uns die Stimme)BWV140で、テノールの歌うコラールにユニゾンの弦が絡んでいく曲ですが、バッハ自身がオルガン独奏用に編曲して、「シューブラー・コラール集」の第1曲 BWV645として知られています。ブゾーニやケンプがこのオルガン曲をピアノに編曲したものが有名です。今日の演奏はトリスターノ自身がオルガン曲ではなく、原曲のコラールからピアノ用に編曲したそうです。トリスターノは作曲もてがけ、また、バッハにもこだわりを持っているそうで、きっとこだわりの編曲なんでしょう。終盤で、コラールが伴奏を圧するように響いてくるところの迫力は感動的でした。最後の音が長く響いていましたが、その響きが消えるとともにムソルグスキーの組曲《展覧会の絵》のプロムナードのメロディが響き始めます。まるでバッハのコラールが《展覧会の絵》の前奏曲のようです。《ペトルーシュカからの3楽章》を聴いて、想像していたとおり、《展覧会の絵》も圧倒的な迫力の演奏です。とても素晴らしいと言いたいところですが、saraiが予習したCDの演奏がそれを言わせません。予習したのは20世紀を代表するピアノの巨人の2人の演奏です。

 ホロヴィッツ カーネギーホール・ライブ(プライベートコレクション) 1948年
 リヒテル ソフィア・リサイタル・ライブ 1958年
 リヒテル モスクワ(メロディア) スタジオ録音 1958年8月8日
 
ホロヴィッツは以前、1951年ライブと1946年の演奏がCD化されていましたが、現在はその後発掘された1948年の演奏が最も評価されています。世紀の大ピアニストが絶頂期に演奏した物凄い演奏。まあ、やり過ぎとも思える演奏でホロヴィッツの超絶技巧を聴かせるために自身での編曲も織り込んでいます。一度聴いても損はありません。
リヒテルの1958年のソフィア・リサイタルのCDは幻のピアニストと言われていたリヒテルが西側に初めて紹介されたCDとして有名です。彼の弾く《展覧会の絵》は激しい気魄で聴く者を圧倒します。気合が入り過ぎて、ミスタッチも多いのですが、そんなものは彼の壮絶な演奏で吹き飛ばします。こんな演奏は誰にもできないでしょう。しかし、音質が悪く、会場の聴衆の咳もうるさいので万人向きではありません。リヒテルの真価を聴くなら、同じ1958年、ソフィア・リサイタルに先だって、モスクワでスタジオ録音された演奏がおすすめです。こちらは落ち着いた演奏でミスもなし。素晴らしい演奏です。まだ聴いていませんが、同じ年、少し前にブダペストで演奏したものも素晴らしいそうです。

今日のトリスターノの演奏もよかったのですが、上記の演奏を知ってしまうと、矮小な演奏に感じられてしまいます。きっと、誰の演奏を聴いても満足できないかもしれません。ただ、以前聴いたファジル・サイの演奏に比べると、今日のトリスターノの演奏は数段上ではありました。まあ、予習もほどほどにということでしょうか。

今日のプログラムを紹介しておきます。

  ピアノ:フランチェスコ・トリスターノ

  J.S.バッハ:トッカータBWV911
  J.S.バッハ:フランス組曲第2番
  ストラヴィンスキー:《ペトルーシュカ》からの3楽章

  《休憩》

  J.S.バッハ:コラール《目覚めよと呼ぶ声あり》(トリスターノ編)
  ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》

   《アンコール》
     ストラヴィンスキー:タンゴ
     トリスターノ(自作):メロディ

もう一度、聴いてみたいピアニストでした。特にバッハをもう少し聴かせてもらいたいです。


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