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現代のオペラの旗手アデス:オペラ《テンペスト》@ウィーン国立歌劇場 2015.6.21

今日もダブルのコンサートとオペラ。これは2回目のオペラ。1回目のコンサートは別稿でアップ済です。

表題の《現代のオペラの旗手アデス》は、正確には、トーマス・アデスは現代のオペラの旗手たりうるかと言い換えたほうがいいかもしれません。saraiの個人的な感想はyesです。これまでの西欧文化、オペラの伝統を継承して、かつ、それを新しい音楽基盤の上に打ち立てていると感じました。新しさだけでは駄目、だからと言って、伝統に縛られ過ぎていても駄目というのがオペラの辿ってきた道です。R・シュトラウスのオペラが典型的です。トーマス・アデスはR・シュトラウスの再来になってほしいものです。オペラ文化の継承性に基づく新しさの構築が理想です。

このオペラ《テンペスト》はシェークスピアの最後の戯曲作品に基づいています。ほぼ、原作に忠実ですが、最後のシーンが大きく異なります。これはオペラだから、お芝居のような終わり方は難しいからでしょう。

今回の演出はメトロポリタン・オペラとの共同制作で、演出のロベール・ルパージュはシルク・ド・ソレーユを手掛ける人。日本国内ではWOWOWでメトロポリタン・オペラ公演の模様が放送されたので、ご覧になった人も少なくないでしょう。今回のウィーン国立歌劇場の公演もほぼ同じ内容ですが、舞台の違いで若干の相違はあります。指揮者は作曲家アデス自身というのは、どちらも同じです。キャストはアリエル役のオードリー・ルーナだけが共通しています。聴いたかたはお分かりでしょうが、オードリー・ルーナの超高音(金切声とも?)と柔らかい手足の演技は誰にも真似ができないと思われます。もっとも、主役のプロスペロー役もメトロポリタン・オペラで歌ったサイモン・キーンリサイド以外には歌うのは不可能だと思いましたが、エレードがまるでキーンリサイドが乗り移ったような歌唱と演技をしたのには驚愕しました。

演出はルパージュがメトロポリタン・オペラでニーベルングの指輪4部作を演出したからなのでしょうが、それをパロディった演出になっています。プロスペローが魔力を持った長い槍を持つところはまるで指輪のウォータンみたいです。また、島に住む怪獣キャリバンは地下世界を蠢き、これも指輪のパロディ。冒頭でアリエルがアクロバットのような演技をするのはシルク・ド・ソレーユもどきです。

アデスが書いた音楽はノントナールを基本としていますが、クリアーで分かりやすい音楽です。ここぞというところはこだわりなしに調性のあるメロディアスなものになります。まあ、12音技法の開拓者だったシェーンベルクだって、晩年はそういう音楽を書いていましたから、これも伝統的な現代音楽なのでしょう。

聴きどころは第2幕の終幕のミランダ(プロスペローの娘)とフェルディナンド(ナポリ王子)が恋に落ち、結ばれるシーンの愛のメロディーと第3幕の終盤でのプロスペローが自分を陥れた人たちに許しを与えるシーンの感動的な音楽です。特に許しのシーンはフィガロの結婚の最終シーンの許しの音楽を思い起こさせます。R・シュトラウスがモーツァルト回帰したように、アデスもモーツァルトを音楽の原点にしているのでしょうか。

ファンタスティックな魅力に満ちた素晴らしい音楽と演出のオペラでした。まだまだ、書き足りませんが、ウィーンの夜も更けてきたので、このあたりで幕としましょう。

プログラムとキャストは以下です。

  指揮:トーマス・アデス
  演出:ロベール・ルパージュ
  合唱:ウィーン国立歌劇場合唱団
  管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団

  トーマス・アデス:オペラ《テンペスト》

  プロスペロー:アドリアン・エレード
  アリエル:オードリー・ルーナ
  ミランダ:Stephanie Houtzeel
  トリンキュロー:デイヴィッド・ダニエルズ
  カリバン:Thomas Ebenstein
  フェルディナンド:Pavel Kolgatin
  ナポリ王:Herbert Lippert
  アントーニオ:Jason Bridges
  ステファノ:Dan Paul Dumitrescu
  セバスチャン:David Pershall
  ゴンザーロ:Sorin Coliban

今日は21世紀オペラ作品でしたが、明日は20世紀のオペラ作品、ヒンデミットの《カリディヤック》を聴きます。


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首都圏の様々なジャンルのクラシックコンサート、オペラの感動をレポートします。在京オケ・海外オケ、室内楽、ピアノ、古楽、声楽、オペラ。バロックから現代まで、幅広く、深く、クラシック音楽の真髄を堪能します。
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