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いろんな思いが交錯:オペラ《カルディヤック》@ウィーン国立歌劇場 2015.6.22

今日からは昨日までのダブルのコンサートとオペラは終了し、素直にオペラ1回だけです。

今日のオペラは手放しで絶賛するわけにはいきません。とは言え、演出も音楽も実に意欲的ではあったんです。ですが、いい意味でもう少し、力を抜いて上演してほしかったというのがsaraiの本音です。きっと、この公演は賛否両論あるのではないかと思います。実はこの公演を聴くために予習したDVDがあります。

 パリ・オペラ座公演
 指揮:ケント・ナガノ
 演出:エンゲル
 カルディヤック:ヘルド
 娘:デノケ
 将校:ヴェントリス
 貴婦人:ミヌティッロ

これが素晴らしい出来なんです。何といっても、ヒンデミットの音楽の美しさに心を奪われます。そうです。このオペラは20世紀のドイツ現代音楽を牽引した作曲家ヒンデミットの作品なんです。ヒンデミットと言えば、ユダヤ人でもないのにナチスに退廃芸術の烙印を押されて、スイスへの亡命を余儀なくされた作曲家です。ヒットラーに嫌われるほど、当時の前衛音楽を固守した人です。パリ・オペラ座の公演はそういう過去を捨て去り、古典作品のひとつとして、音楽の純粋な美しさを引き出した素晴らしいものです。演出もパリが舞台ということで実にお洒落。新古典風の音楽を前面に出したファンタスティックな内容にヒンデミットの音楽の素晴らしさを教えられました。

で、今日の公演ですが、18世紀のオペラ風の表現をベースに表現主義的とも思える演出です。舞台はパリですが、どう見ても第一次世界大戦後のベルリンをイメージさせられます。実際、このオペラはパリを舞台としているもののヒットラーが台頭してきたベルリンの状況を描いたと言われているので、おかしな演出ではありませんが、表現主義的と言い、ベルリンを想起させることと言い、あまりに教条主義的な演出に辟易してしまいました。パリ・オペラ座の自由な演出に1票というのがsaraiの意見です。これでは、ヒンデミットの素晴らしさが現代に蘇りようがありません。まあ、このヒンデミットの作品も幅の広い表現が可能なんだなと思えば、今日のような公演もありなのかも・・・。

音楽も演出に引きずられたのか、表現主義的な演奏。ヒンデミットの音楽はそんなものだと言われれば、それは仕方がありませんが、もはや、古典としての演奏であっていいのではないかというのがsaraiの意見です。

それでも、娘役のデノケは期待通りの素晴らしい歌唱。第2幕のカルディヤックと一緒に歌う場面の美しさには心を打たれました。それまでの新古典風の音楽が一変して、無調的な音楽に転じ、まるでベルクの音楽を聴いているような風情です。もっとも、ヒンデミットはシェーンベルクの12音技法に批判的でしたので、これは調性の拡大なんでしょうが、素人のsaraiが聴けば、立派なノントナールの音楽にしか聴こえません。ともあれ、デノケの歌唱と実質ウィーン・フィルのオーケストラが奏でる音楽の美しさにはうっとりとしてしまいます。また、第3幕の終幕でのデノケと将校役のリッパートが繰り返しの無限旋律のように歌う音楽の美しさは彼岸の輝きがありました。実質ウィーン・フィルの室内オーケストラ編成の弦の美しさもその輝きに一役かっていました。そうそう、今日のコンサートマスターだったのはシュトイデ。彼の独奏も見事でした。

バロック以前の音楽を基盤に新しい音楽を作り出したヒンデミットの前衛性はヒットラーにとっては許しがたいものだったのでしょうが、その時代の《退廃芸術》の多くの芸術作品と同様に現代ではもう古典の芸術です。今となっては、これが何故、理解しがたい《退廃芸術》だったのか、ヒットラーに問い質したいものです。ヒンデミットの作品群が再評価されることを願い、saraiも積極的にヒンデミットを聴いていきたいと思います。

プログラムとキャストは以下です。

  指揮:Michael Boder
  演出:Sven-Eric Bechtolf
  合唱:ウィーン国立歌劇場合唱団
  管弦楽:ウィーン国立歌劇場管弦楽団

  パウル・ヒンデミット:オペラ《カルディヤック》

  カルディヤック:Tomasz Konieczny
  娘:アンゲラ・デノケ
  将校:Herbert Lippert
  貴婦人:Olga Bezsmertna
  騎士:Matthias Klink
  金商人:Wolfgang Bankl

明日は3回目のヤンソンス指揮ウィーン・フィルのマーラーを聴きます。ウィーンの楽しみは尽きません。


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テーマ : クラシック
ジャンル : 音楽

       デノケ,

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Author:sarai
オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico

kicoさん、初めまして。saraiです。

心配ですね。私はそのまま、沈静化するのを待っています。シュターツオーパーのチケットも購入しました。何としても行こうとは思って

03/09 22:12 sarai

はじめまして。私も同じ時期にウィーン滞在の計画をしており、楽友協会でのベルリンフィルのチケットを購入しました。が、新型コロナの件で、そもそも旅行に出られるのかど

03/09 16:59 kico

お役に立てて、なによりです。我が家では今でもメインのCDプレーヤーとして活躍しています。ただ、最近はCDはいったんリッピングしてHDDに格納し、USBオーディオでオーディ

01/18 15:18 sarai

父からアンプとセットで譲り受けたもののトレイが動かず困っていましたが、
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01/18 13:50 hisa

のりしんさん

saraiです。コメントお寄せいただき、ありがとうございました。
同じ追っかけ仲間、今後ともよろしくお願いいたします。
彼女の声は素晴らしいですね。

12/01 12:07 sarai

私も中村さんの追っかけやっております。昨日の演奏も圧倒的でしたね。中村さんの歌を聴いていると、なぜか涙腺が緩んで来ます。

12/01 09:39 のりしん
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