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入魂のマーラー3番にただただ感涙:ヤンソンス+ウィーン・フィル@ウィーン楽友協会 2015.6.23

今日の演奏を聴くまではマーラーの何たるかのひとかけらも分かっていなかった自分を感じます。マーラーの素晴らしさ、本当の凄さの本質を知ることのできた凄絶な演奏でした。

ヤンソンス指揮ウィーン・フィルのマーラーの交響曲第3番を聴くのも一昨日に続いて、今日で3回目。毎回、ウィーン楽友協会の違う位置で聴いていますが、今日はかぶりつきの中央。指揮者の足元で聴く感じです。指揮者目線ならぬ、指揮者聴覚で聴く感じです。マーラーが楽譜にオーケストラの細部にわたる指示を書き込んでいることは知識としては分かっていましたが、こういう場所でウィーン・フィルの演奏を聴くと、まざまざとその意味合いが体感できます。特に弦楽器セクションを細分化して、複雑な構成で演奏することによる音楽表現の素晴らしさは初めて体感できました。まさにこうであらねばならぬという音楽表現になっています。ここまで精密な楽譜を仕上げることのできたマーラーの音楽への没入は大変なものだったのでしょう。天才作曲家が全身全霊を傾けることによってのみ、可能になった奇跡とも思えます。それにしても、このマーラーの完璧な音楽表現を実際の音にすることのできるウィーン・フィルの最高の技術と音楽への奉仕はかくも素晴らしいものとは・・・絶句するような演奏です。絵画の世界では、素晴らしい画家の細密画はどこまで近づいて見ても、その細密表現は底知れぬものがあります。音楽の世界でも、そういうものがありうるとは・・・奇跡のようなウィーン・フィルの精密さです。指揮者とほぼ同じ位置で聴いても、まったく破綻のない完璧な合奏力に驚嘆するのみです。100人を超える大オーケストラがまるで一つの有機体のように機能しています。それは単に音響に留まるものではありません。間近で聴くと、ひたひたと演奏者たちの気魄が伝わってきます。音楽は人の作るもの。単なる音ではなく、人間の意思の力でもあります。100人を超える人間の強い意思や気魄が聴く者をインスパイアします。

この交響曲第3番は若きマーラーのひとつの到達点であったことを実感しました。この高みから別の高みへは交響曲第9番や《大地の歌》への長い道のりを待つことになります。
交響曲第3番は自然との調和、そして、第9番へはアルマへの永遠の愛と死の恐れ・甘い誘惑がテーマになります。
自然との調和というテーマはベートーヴェンの田園を頂点とする古典音楽とは意味合いを異にします。ザルツカンマーグートのアッター湖畔のシュタインバッハの自然をマーラーという受容体がいったん受け止めて、フィルターを通して、楽譜に射影する。これは自然をマーラーがメタファーする行為になります。単なる自然の描写ではなく、あくまでもマーラーという人間がその内なる感性で描きなおした自然です。誤解を恐れずに、別の言い方をすると、自然と人間の一体化です。この自然との融合というテーマで、マーラーはこの作品で頂点を極めたと思います。それが如実に感じられた演奏でした。

第1楽章は多彩な表現で、あらゆる自然の形態を描き出します。そこにはマーラーの主観がはいるので、一見、自然とはかけ離れて見える音楽表現もありますが、前述したように、これはすべて、マーラーの内なる自然です。我々はマーラーの感覚を通して、シュタインバッハの自然を堪能できます。ウィーン・フィルの演奏がそれを完璧に描き出します。微細な演奏から、強烈な響きまで、実に自在な演奏が繰り広げられます。指揮のヤンソンスは無理なく、それを誘導する導師の役割を果たします。saraiはこのシュタインバッハの自然の素晴らしさにとてつもない感動を味わい、涙がこぼれ落ちます。

第2楽章はシュタインバッハの美しい自然が描かれます。ウィーン・フィルの演奏はますます素晴らしいです。

第3楽章は第2楽章と同様に美しい自然が描かれますが、そこには人間の営みも感じられます。バンダとして演奏されるポストホルンが自然と人間の共生を象徴しています。ポストホルンの音量のバランスが絶妙。楽章最後の盛り上がりの素晴らしさにまた感動。

第4楽章はメゾソプラノのフィンクの絶唱に大変な感動を味わいました。すぐ目の前で歌っているので、フィンク自身の感動が伝わってきます。ボリューム感のある声の響きも素晴らしいですが、マーラーの音楽への傾倒が分かります。彼女とマーラーの音楽の素晴らしさを共感して、ここでも涙が頬を伝います。

第5楽章は合唱(女声、児童)が素晴らしく響きますが、フィンクの歌唱が圧倒的です。フィンクは素晴らしいマーラー歌いです。

第6楽章は第5楽章から切れ目なく演奏されます。弦の微細な表現が間近に聴き取れ、いつの間にか、感涙している自分に気が付きます。コンサートマスターのホーネックの主導する美しい歌にウィーン・フィル全体が呼応します。何と素晴らしい音楽でしょう。これも西欧文化のひとつの到達点なのですね。次第に音楽は頂点をめざし、長大なコーダで自然と一体化を果たします。圧倒的な感動で人格崩壊してしまいます。

フィナーレの後、しばし静寂が流れ、そして盛大な拍手と喝采。saraiはしばらく拍手もできませんでした。ヤンソンス、ウィーン・フィル、フィンクはなんというマーラーの演奏を成し遂げたのでしょう。まさに空前絶後のマーラーでした。

今日のプログラムとキャストは3回とも同様ですが、以下です。

  指揮:マリス・ヤンソンス
  メゾソプラノ:ベルナルダ・フィンク
  合唱:ウィーン楽友協会合唱団(女声合唱)
     ウィーン少年合唱団
  管弦楽:ウィーン・フィル

  マーラー:交響曲第3番ニ短調

つたない感想でしたが、この素晴らしいマーラーの一端でもお伝えできたでしょうか。このマーラーを目指して、この旅を準備してきたことが想像と期待以上に報われました。今秋のハイティンク指揮ロンドン交響楽団の来日公演でマーラーの交響曲第4番を聴きますが、自然をテーマにしたマーラーの音楽表現で新たな感興が味わえるのでしょうか。


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ジャンル : 音楽

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非公開コメント

No title

勝手知ったるウィーンで楽しんでおられますね。
ああ、私もその空前絶後のマーラーの3番、聞きたかったです!!!
ウィーン・フィルはたまに、スカのだらけた演奏もあるけど、文句なしにすごいオーケストラですよね!!!
マーラーの内面の苦悩、喜び、自然などはわかりませんが、saraiさんのブログを読んで、頭の中で想像しております。
聞きたかった~。
では、引き続き気を付けて楽しんでくださいね。
ブログ、楽しみにしております。

No title

えりちゃさん、saraiです。

大変、コメントが遅れました。ごめんなさい。アムステルダムへの移動でばたばたしてしていました。今日はコンサートもなく、平穏な一日。
さて、ウィーン・フィルですが、大変な気魄が感じられました。まさにマーラーの3番はこのオーケストラ以外では聴けない感じです。来日演奏でもマーラーをやってほしいですね。
ウィーン・フィルも凄いですが、昨日聴いたRCOも凄い演奏でした。《ルル》って、こんなに凄まじいフィナーレだったっけといたく感じ入りました。
旅も3分の1終わりました。音楽以外も楽しみます。では。
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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
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