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身震いする凄絶さ・・・最高のアンサンブル:オペラ《ルル》@ネーデルランド・オペラ 2015.6.25

いやはや、凄いオペラでした。正直、ウィーンからの移動とお昼のアムステルダム国立美術館で体力を使い切ったことで、長丁場のオペラは疲れましたが、終幕部分で切り裂きジャックとルルの高揚した掛け合い、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の凄まじい演奏、ゲシュヴィッツ伯爵令嬢のぎりぎりの歌唱にとてつもなく感動してしまいました。あー、凄かった!!

第1幕ののっけから、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の素晴らしい響きに心を奪われます。歌手陣もよく歌っていましたが、オーケストラのあまりの素晴らしさにそちらに耳が奪われます。歌とお芝居付きの交響詩といった風情です。ベルクが人生の最後の到達した素晴らしい音楽を満喫します。ウィーンはマーラーだけでなく、ノントナールでとても美しい音楽を作り上げたベルクもいました。後期ロマン派のマーラー、R・シュトラウスも素晴らしいですが、ベルクの存在は格別です。今の時代になっても、響きが新鮮に感じます。演出はメトロポリタン・オペラと共同制作ということで、美しい舞台を期待しましたが、ドイツ表現主義を思わせる、少し、えげつない美術です。ドイツのベルリンやミュンヘンのような訳の分からない演出ではありませんので、可もなし、不可もなしっというところです。背景がプロジェクションマッピング仕立てのところが新規な感じではありました。動きが激しいのでがちゃがちゃした感じなので、それを避けて、オーケストラと歌手の音楽に集中できます。

第2幕はオーケストラと歌手のバランスも素晴らしく、見事なアンサンブルに聴き惚れます。あまり、オペラの筋も気にならなくなり、音楽そのものに集中できます。R・シュトラウスの素晴らしいオペラを聴くときと同様の感じです。なんて素晴らしい音楽なんでしょう。ウィーンでも滅多に聴けない素晴らしい演奏です。

第3幕はベルクがアルマの娘マノンの若過ぎる死を悼んで、《ルル》の作曲を中断して、遺作のヴァイオリン協奏曲を作曲し、その直後、ベルクも死に至ってしまったため、残念ながら、未完に終わってしまいました。しかしながら、ベルクの簡略版とフルスコアの4分の1ほどは残されていたため、チェルハによって、補筆完成されました。そのためにやはり、これまでにDVDなどで聴くと、何か違和感がありましたが、今日の演奏は完璧にベルクの作品そのもの。第2幕からのオーケストラと歌手陣のアンサンブルが素晴らしく、前述したように終幕部分での盛り上がりは尋常ならざるものでした。なお、終幕部分はベルク自身が《ルル》組曲として、オーケストラの完成スコアが残していたので、まあ、本物のベルク真作なのですね。

音楽的にこんな凄い《ルル》は予習したDVDでは聴けないものでした。DVD化が望まれます。メトロポリタン・オペラでは同じ演出のものがライブ録画・放送されるでしょうが、オーケストラもキャストも異なるので、このレベルの演奏は難しそうです。

歌手の出来栄えですが、ルルを歌ったモイツァ・エルトマンはベルリン国立歌劇場で歌ったときよりも力の抜けた柔らかい歌唱で小悪魔的な魅力が全開。超高音の見事な歌唱も素晴らしく、期待通り。ゲシュヴィッツ伯爵令嬢を歌ったジェニファー・ラルモアは終幕で「ドイツに帰って、大学に入り、女性の権利について学ぼう」という歌がなんとも素晴らしかった。切り裂きジャックを歌ったヨハン・ロイターも終幕の迫力が凄くて、圧倒的な歌唱。シゴルヒを歌ったフランツ・グルンドヘーバーの存在感と声の響きの素晴らしさ、この人はベルクのオペラには欠かせませんね。残りの歌手陣も十分に聴かせてくれました。

なお、予習したDVDは以下です。

   パリ・オペラ座 ブーレーズ指揮、シェロー演出、ストラータス 1979年
   グラインドボーン音楽祭 アンドリュー・デイヴィス指揮ロンドン・フィル、ヴィック演出、シェーファー 1996年
   ザルツブルク音楽祭 アルブレヒト指揮ウィーン・フィル、ネミロヴァ演出、プティボン 2010年
   ベルリン国立歌劇場(シラー劇場) バレンボイム指揮、ブレート演出、エルトマン 2012年

プログラムとキャストは以下です。

  指揮:Lothar Zagrosek
  演出:ウィリアム・ケントリッジWilliam Kentridge
  管弦楽:ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団

  ベルク:オペラ《ルル》

  ルル:モイツァ・エルトマンMojca Erdmann
  ゲシュヴィッツ伯爵令嬢:ジェニファー・ラルモアJennifer Larmore
  衣装係/ギムナジウムの学生:Rebecca Jo Loeb
  ワルター(画家)/黒人:William Burden
  シェーン博士/切り裂きジャック:ヨハン・ロイターJohan Reuter
  アルヴァ:Daniel Brenna
  力業師:Werner Van Mechelen
  シゴルヒ:フランツ・グルンドヘーバーFranz Grundheber
  公爵/使用人:Gerhard Siegel
  劇場支配人/銀行家:Julian Close
  ゴル博士(医事顧問)/教授:Aus Greidanus

もう1回聴く公演が楽しみです。これは今シーズン最後の公演になります。


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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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ありがたいコメント、嬉しいです。マーラーのファンのかたにこそ、読んでいただきたかったので、気持ちを共有できた思いです。自然の中にこそ、マーラーの音楽の本質はあり

04/23 23:45 sarai

マーラーの作品を聴きながら、ブログを読ませていただいています。
読みながら画像を見て、マーラーの過ごした風景に想いを馳せて楽しんでいます。
素敵なブログをありがと

04/23 21:47 

マーラー6番ですか・・・ハンマー打撃は勘弁してほしいものです。あったとしても、3回目の打撃だけは・・・

04/11 18:10 sarai

まさにマーラー6番な状況です笑

04/11 17:51 kico

お互い、残念でしたね。今年でヨーロッパ遠征を終わりにする予定でしたが、悲劇的な状況になりました。天はまだ我に旅を続けよというご託宣を与えたのでしょうか。1年延期

04/11 03:13 sarai

以前にもコメントさせていただいた者です。来ましたね、楽友協会からのメール。私たちはとりあえず1年延期としましたが、どうでしょうね。困っている人が多い中贅沢な悩み

04/11 00:33 kico

お返事ありがとうございます。
本当に!私もレイルジェットや美術館の手配もしているので、祈るような気持ちです。

03/10 19:06 kico
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