ラインの旅:スイス編~珠玉のコレクション、その4@バーゼル市立美術館
バーゼル市立美術館の素晴らしいコレクションの数々をご紹介しています。今回は4回目。
バーゼル市立美術館と言えば、ホルバインのコレクションが最も有名です。次は15世紀、16世紀の展示室に移動します。階段を2階に上がって、すぐのところです。
ここから、ハンス・ホルバインの作品を見ていきます。ホルバインはこのバーゼルを活動の拠点にしていました。
《墓の中の死せるキリスト(The Body of the Dead Christ in the Tomb)》です。1521年、ホルバイン、24歳頃の作品です。一度見たら忘れられない強い印象を受けます。縦30センチ、横2メートルのほぼ等身大の大きさです。正視するのがためらわれるくらい、迫真の迫力があります。

《エラスムスの肖像(Portrait of Desiderius Erasmus)》です。1523年、ホルバイン、26歳頃の作品です。教会の堕落を批判したオランダ生まれのエラスムスはホルバインと同時期にバーゼルに滞在していました。肖像画家ホルバインはエラスムスの肖像を数点、描いています。

《コリントの遊女ライス(Lais of Corinth)》です。1526年、ホルバイン、29歳頃の作品です。コリントはギリシャの都市ですが、古代ローマでは、コリントは著名な娼婦が多いことが知られており、中でもライスは憧れの存在でした。絵に描かれている金貨は、大枚を支払わないとライスを我が物にできないということを示しています。それにしても、美しい女性ですね。実はこのモデルは画家の愛人だと言われています。

《キリストの埋葬(The Entombment)》です。1524年~1525年、ホルバイン、28歳頃の作品です。

《ホルバインの妻と2人の子供(Portrait of the Artist's Wife and her Two Eldest Children)》です。1528年~1529年、ホルバイン、32歳頃の作品です。1526年、ホルバインはエラスムスの紹介で、トマス・モアを頼ってロンドンへ渡ります。1528年いったんバーゼルに戻りますが、1532年には再びロンドンへ渡ります。その後はヘンリー8世のもと、宮廷画家として、活躍することになります。この作品は1528年にバーゼルに戻った際に、1520年頃に結婚した妻エルスベトと長男、長女を描いたものです。1542年に生活費を得るために妻によって、この絵は売却されます。新しい持ち主はこの絵から、人物のみを切り抜いて、菩提樹の板に貼り付けました。現在の作品の姿はその状態です。子供たちの視線を追うと、画面の右側のほうを見ていることから、本来はそこにホルバイン自身も登場する家族の肖像画であったようです。右側のホルバインの肖像はその後、どうなったんでしょう。

《ボニファチウス・アメルバッハの肖像(Portrait of Bomifacius Amerbach)》です。1519年、ホルバイン、22歳頃の作品です。エラスムスと親交の深かった人文学者のボニファチウス・アメルバッハの肖像画です。

《アンナ・マイアーの肖像(Portrait of Anna Meyer)》です。1526年、ホルバイン、29歳頃の作品です。1526年に《バーゼル市長ヤーコプ・マイアーの聖母》が描かれますが、その絵画中に描く人物のモデルとして、バーゼル市長ヤーコプ・マイアー、彼の妻ドロテア・マイアー、その娘アンナ・マイアーの3人の肖像スケッチを描きました。この絵はその1枚です。saraiの趣味では、《バーゼル市長ヤーコプ・マイアーの聖母》に描かれたアンナよりも、この肖像画のアンナのほうが魅力的に感じます。

次はコンラート・ヴィッツ(Konrad Witz)です。15世紀前半にバーゼルで活躍したドイツ人の画家です。
《黄金門でのヨアキムとアンナ(Joachim and Anna by the Golden Gate)》です。1440年、ヴィッツ、40歳の作品です。ヨアキムとアンナは聖母マリアの両親。20年間、彼らには子供ができませんでしたが、ヨアキムが子を授かることを念じて断食をしていたところ、天使から、妻アンナが身ごもったことを告げられます。急ぎ、エルサレムの寺院に向かい、受胎したアンナと黄金門の前で再会します。この絵はその場面を描いたものです。もちろん、このとき生まれたのが聖母マリアです。この絵は『聖母の祭壇画』の一部で、残りの部分はニュルンベルグとストラスブールにあるそうです。

《ダビデの前のアビシャイ(Abi'shai before David)》です。1435年、ヴィッツ、35歳の作品です。この絵は『ハイルスピーゲルの祭壇画(人間救済の鑑の祭壇画)』の翼部の一部です。甲冑や布地の質感が素晴らしく描かれています。

《シャベタイとベナヤ(Sib'becai and Benai'ab)》です。1435年、ヴィッツ、35歳の作品です。この絵は『ハイルスピーゲルの祭壇画(人間救済の鑑の祭壇画)』の翼部の一部です。この絵の題材も上記の絵と同じく、旧約聖書の「サムエル記」に登場するイスラエルの王ダビデに仕える勇士たちを描いたものです。

次はマルティン・ショーンガウアー(Martin Schongauer)です。15世紀後半に活躍したドイツ人の画家です。
《室内の聖母子》です。1480年、ショーンガウアー、30歳頃の作品です。フランドル風の精緻な描き方が素晴らしいです。

次はルーカス・クラナッハです。
《一切れのパンと聖母子》です。1529年、クラナッハ、57歳の作品です。とても美しいです。さすが女性を描かせたら、クラナッハは最高です。

《パリスの審判(The Judgement of Paris)》です。1528年、クラナッハ、56歳の作品です。相変わらず、女性の裸体画は見事です。

次はマティアス・グリューネヴァルトです。『イーゼンハイム祭壇画』の作者として、高名な16世紀に活動したドイツの画家です。
《キリストの磔刑(Crucifixion)》です。1505年、グリューネヴァルト、25歳頃の作品です。凄絶な絵です。とても痛々しく感じます。人類の罪を一身に背負ったというイメージです。

バーゼル市立美術館の名画コレクション、常設展はこれくらいにしましょう。次はこのときに開催されていたピカソ展に触れます。
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