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旅はオランダから~シュテーデル美術館のベックマンは悲しみとともに

2013年4月4日木曜日@東京~フランクフルト~アムステルダム/6回目

ヒットラー率いるナチスは数々の犯罪行為を重ねましたが、《頽廃芸術》の名のもとに20世紀美術、ユダヤ人画家の作品の略奪・遺棄、さらには画家本人や美術館スタッフへの弾圧を徹底的に行ったことも絶対に許せない行為です。個別の事例を挙げるときりがなくなってしまうほどです。

シュテーデル美術館の奥まった1室に足を踏み入れた途端、驚愕してしまいました。《頽廃芸術》家として、徹底的に弾圧されたマックス・ベックマンの作品で、この展示室はうめつくされています。

ベックマンはこのフランクフルトのシュテーデル美術学校で1915年から1933年まで教鞭をとっていました。20世紀美術を積極的に収集していたシュテーデル美術館総館長のゲオルク・シュヴァルツェンスキーはベックマンの重要な作品群もコレクションに加えていました。しかし、ナチスによって、シュヴァルツェンスキーはベックマンの作品を大量に購入した件で糾弾されることになります。そして、ベックマンの作品は《頽廃芸術》として、略奪されることになり、代表作『十字架降架』はミュンヘンに始まる《頽廃芸術》展に展示されました。
ベックマン自身も美術学校を解雇され、身の危険を感じて、アムステルダムに第2次世界大戦が終わるまでの10年間、身を隠すことになります。戦後、ベックマンはフランクフルトに足を踏み入れることはなく、アメリカに渡り、不遇な生涯を終えました。

このベックマンの作品同様、《頽廃芸術》のそしりを受けたのはシュテーデル美術館に収蔵されていたゴッホの『医師ガシェの肖像』です。この作品も数奇な運命のもと、我が国の斉藤了英氏が当時、史上最高額で落札することになります。戦後、シュテーデル美術館は必死にこの名画を取り戻す努力を続けていますが、いまだにこの努力は実を結んでいません。

ベックマンの作品はその一部の再収集に成功したようですね。この展示室にあるベックマンを見ると、とても複雑な思いにかられます。芸術作品は過去・現在・未来に渡って、決して、政治的な力、それも粗野な力と無縁にあることは難しいようです。ある意味、悲しい気持ちを持って、ベックマンの素晴らしい作品群を鑑賞させてもらいましょう。

『フランクフルト中央駅』です。フランクフルトを去った後の1942年の作品のようです。アムステルダムで描いたものでしょうか。元々の収蔵品ではないようです。表現主義らしい即物的な作品です。とてもいいですね。


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『サーカス一座の乗り物』です。これまた即物的な印象の作品です。サーカスの悲哀といったロマンを拒否しているようさえ見えます。これも1940年代の作品です。


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『埠頭の壁』です。1936年の作品です。アムステルダム時代のものでしょうか。


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『双子の肖像』です。1923年の作品です。ようやく、フランクフルト時代の作品のようです。ベックマンにしては、温かみを感じる作品です。


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『女性の肖像?』です。1924年の作品です。これも、フランクフルト時代の作品のようです。前の作品同様、温かみを感じる作品です。


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『サキソフォンの静物』です。青騎士の影響を感じますが、色彩感は明確です。


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展示室の中央に彫像が置いてあります。これもベックマンの作品。珍しいですね。『アダムとイブ』です。


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『フランクフルトのシナゴーク』です。1919年の作品です。これも、フランクフルト時代の作品のようです。再収集が始まった頃の最初の収集品です。シュヴァルツェンスキーから館長を引き継いだエルンスト・ホルツィンガーは保守的な理事たちを説得して、1972年にようやく購入できました。現在のシュテーデル美術館のベックマンのコレクションでは代表的な作品と言えるでしょう。


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『シャンペンのグラスを持つ自画像』です。1919年の作品です。フランクフルト時代の傑作です。


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『氷の張った川』です。1923年の作品です。これもフランクフルト時代の傑作です。これは構成と言い、色彩感と言い、大変素晴らしい作品で感銘を受けます。一体、これのどこが頽廃的なんでしょう!!


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『バックステージ(舞台裏?)』です。1950年の作品です。ということはアメリカ時代の最晩年の作ですね。ちょっと、理解し難い作品です。


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『カール(夫妻?)の肖像』です。1918年の作品です。フランクフルト時代の作品です。珍しく、茶目っ気のある作品です。


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フランクフルト時代の作品もそれ以降の作品もあります。シュヴァルツェンスキーが収集した作品はほとんど、再収集できていないようです。
悲しいことです。本来はもっともっと充実したコレクションだった筈です。現在のベックマンのコレクションも素晴らしいものですけどね。
素晴らしいベックマンを見て、嬉しかった反面、彼と彼の作品が受けた不当な扱いを考えると、実に悲しい鑑賞になってしまいました。

さて、また、気持ちを変えて、美術館の鑑賞を続けます。


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オペラ・美術が大好きでヨーロッパの旅にはまっています。音楽の聖地ウィーンが中心で、イタリア、フランス、ドイツも巡っています。国内外のオペラ・コンサートの体験もレポートします。

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えりちゃさん、お久しぶりです。saraiです。

なかなか、海外渡航の見通し、立ちませんね。来年あたりはどうでしょうね。長期戦覚悟で我慢するしかありませんね。

こちら

04/10 02:37 sarai

saraiさま、
お久しぶりです!
お元気にコンサートや旅行を楽しんでおられますね!
ブログ、楽しく拝見しています。おフランス、良いね😊
私は春だというのに、仕事と用事以

04/09 05:29 えりちや

気になってたずねても 
誰にも知らんと言われなんやろ
と思いつづけて居ました❗
写真みつけてこれだと思いました❕スッとしました
教えて下さって嬉しいです
ありがとうご

02/13 22:26 みーちゃん

みーちゃんさん、saraiです。

あの謎の建物は雄琴沖総合自動観測所という施設で琵琶湖の水質を測定しているそうです。

https://www.water.go.jp/kansai/biwako/html/repo

02/13 21:40 sarai

ずーと前にうきみどうに行きました
やはり、琵琶湖の真ん中の建物が何なのか気になったままです
分かりましたか
教えてください

02/13 20:54 みーちゃん

五十棲郁子さん、コメントありがとうございます。

水道水のこと、tap waterって言うんですね。知らなかった。単にwaterで通していました。ましてや、フランス語はほとんど

02/11 00:12 sarai

フランスも地方へ行くと英語が通じないでしょう。tap water ぐらいフランス語で言えないとね。

02/10 12:54 五十棲郁子
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