エル・グレコ礼賛!その1@東京都美術館 2013.1.22
心配したのは、美術館が混雑するのではないかということで、雪が降る気象予報のあった、この日が最善だろうと判断して、出かけましたが、案の定、混雑はありませんでした。もしかしたら、日本では、エル・グレコはそんなに人気が高くないのかもしれません。
入場するには、ネット購入時にプリンターで印刷したA4の紙を渡せば、OKです。代わりに入場チケットをもらえました。

今回のエル・グレコ大回顧展の目玉は何といっても《無原罪のお宿り》ですが、まあ、あせらずに順番に見てまわりましょう。
全体の展示は以下のように区分されています。
1.肖像画家エル・グレコ
2.肖像画としての聖人像
3.見えるものと見えないもの
4.クレタからイタリア、そしてスペインへ
5.トレドでの宗教画:説話と祈り
6.近代芸術家エル・グレコの祭壇画:画家、建築家として
まずは、肖像画の展示です。
見始めると、すぐに絵画のレベルに大きな差があることに気が付きます。配偶者に「玉石混淆だね。」って言うと、たしなめられました。「最低でも普通以上のレベルでしょう!」ということです。確かに傑作とは言えない作品もまあ、普通の作品のレベルではあります。ただ、イタリアのベネチア派の巨匠の作品と比較すると、見劣りしてしまうものも散見されます。大雑把に言えば、1600年以降の作品は傑作が多いようです。以下でご紹介する作品はsaraiが傑作またはよい作品と認めたものです。あくまでもsaraiの審美眼で選択したことにご留意くださいね。
これは《芸術家の肖像》です。1595年頃の作でメトロポリタン美術館所蔵です。さすがに力のこもった自画像で、存在感のある作品です。

これは《修道士オルテンシオ・フェリス・パラヴィシーノの肖像》です。1611年の作でボストン美術館所蔵です。深い精神性を感じさせられる顔の表情が素晴らしい作品です。ほとんど、モノクロームに近い色使いも素晴らしいです。

これは《燃え木で蝋燭を灯す少年》です。1571-72年頃の作でコロメール・コレクション所蔵です。ちょっと見た目には、ラトゥールを連想させる作品ですが、それほどの完成度の作品ではありません。こんな絵も描いたんだなと驚いた作品です。

これは《白貂の毛皮をまとう貴婦人》です。1577-90年頃の作でグラスゴー美術館(ポロック・ハウス)所蔵です。とても美しい作品ですが、どう見てもエル・グレコ作には思えません。一説によると、モデルはエル・グレコの内縁の妻だということですが、そういうプライベートな作品なので、こういう写実的で美しい作品を描いたのでしょうか。saraiの勝手な思い込みでは、この作品はエル・グレコ作ではないことに1票です。

これは《ある若い騎士の肖像》です。1600年頃の作でプラド美術館所蔵です。これはまあまあの作品ですね。

これは《ディエゴ・デ・コバルービアスの肖像》です。1586-1600年頃の作でトレドのエル・グレコ美術館所蔵です。

この作品の隣に、そっくりの絵が掛けられています。これはコエーリョの作品です。

saraiはてっきり、エル・グレコの描いた肖像画をほかの画家が模写したものと思い、やはり、模写はうまくないと思いましたが、実際はその逆で、エル・グレコが他の画家が描いた肖像画を元に新たに肖像画を描いたというのが正確なところで、配偶者にそのことを教えられました。エル・グレコは単に模写したのではなく、彼なりの作風で描き直しています。肖像画家としてのエル・グレコの実力を示したものです。
これは《フリアン・ロメロと守護聖人》です。1600年頃の作でプラド美術館所蔵です。白い衣装がロメロで、その上の黒い騎士が守護聖人です。エル・グレコらしい大胆な構図が目を引きます。特に守護聖人の傾けた首の角度が秀逸に感じます。

鑑賞は続きますが、それは次回で。
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